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2009.07.14

マーク・ロスコ著「芸術家のリアリティ」(みすず書房 09年2月)

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今、マーク・ロスコに最接近している。きっかけは川村記念美でみた‘シーグラム壁画’(拙ブログ3/8)。画家のモノグラフは本物の絵を7割見ないと読まないことにしているのだが、5割のロスコは例外扱いにし、展覧会のあと3冊まとめて読んだ。

★ロスコ著‘芸術家のリアリティー美術論集ー’(みすず書房 09年2月、上の写真)
★川村記念美の展覧会図録‘マーク・ロスコ’(淡交社 09年2月)
★TASCHEN本‘マーク・ロスコ’(03年)

今日は‘芸術家のリアリティ’について少し。4月、朝日新聞に載った書評(作家高村薫による)でこの本を知ったが、読みはじめるまでは抽象表現主義の話をロスコ(1903~1970、下の写真)自身がしてくれるのかなと思っていた。でも、これは全然当てがはずれ、美術史家顔負けの美術論だった。しかも、一部哲学的な論調の美術論。

でも、すごく難解な論考ということはないから、ご安心を。絵画が古代エジプト、ルネサンスにどのように描かれ、その伝統が印象主義、モダン・アートまでどう受け継がれ、また革新してきたかを例をいくつもあげ鋭く分析しているから、絵画の見方がしっかり鍛えられる。刺激的でためになるのだから、収穫の多い本である。

これが書かれたのは1940~41年でロスコが37歳のころ。絵を描くのを一時中断して、造形芸術についての考えをまとめたかったようだ。その原稿が04年ロスコの息子、クリストファー・ロスコの編集によってエール大学出版局から一冊の本として出版された。そして、日本語訳が今年2月にでたので、普通の美術ファンもその内容に接することができるようになった(値段は5200円)。序文でクリストファーが出版の経緯やロスコ独特の言葉使いなどについて書いているので、ここをさっと目を通し、本論に進む。

ロスコは1903年、ロシア西部の地方都市ドヴィンスク(現ラトヴィア共和国ダウガフビルス)のユダヤ人家庭に生まれた。そして、10歳のとき、アメリカにやってきてオレゴン州ポートランドに住む。その後、エール大学に進学するが2年で中退し、NYで画家を目指すようになる。この本を読むと、ロスコがすごいインテリだということがわかる。写真をみても頭がよさそうな顔をしている。絵画について相当深い知識と見識をもっているだけでなく、プラトンなどの古典哲学、古代美術にも精通している。やはりユダヤ人の頭脳はサプライズ!

この本の肝の箇所は‘造形性’、‘空間’、‘美’。2つのキーワードを対比させて論じられる。‘触知的’(事物に触ることによって得られる感覚から引き起こされること)vs イリュージョン的(視覚でとらえた物の外観から生まれるもの)。ロスコがよってたつところは‘触知的’な造形であり、空間。

この触知性が見られるのが古代エジプトの平板な絵画であり、ビザンチンの壁画であり、ジョットの絵画。モダン・アートがビザンチンを再評価したり、未開文明の美術に惹かれるのもこの触知性。ここからまた抽象絵画への道が広がる。ここをじっくり読むと10年後、ロスコが抽象表現主義の傑作を生み出したのも合点がいく。そして、ますますロスコ作品にのめり込む。

なお、7/19(日)の日曜美術館は高村薫が語るマーク・ロスコ。とても楽しみ!

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