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2009.07.13

ガスケ著「セザンヌ」(岩波文庫 09年4月)

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この4月に出版された岩波文庫のガスケ著‘セザンヌ’を読んだ。本の存在は新聞の新刊案内ではじめて知った。セザンヌ本というとJ・リウォルド編‘セザンヌの手紙’(美術公論社 1982年)しかなかったので、すぐ書店へ。訳者のあとがきをみると、ガスケが書いたこの本はパリで1921年初版され、1980年求龍堂から全訳されていた。これがこのたび岩波文庫に入ったというわけである。

著者のジョワシャン・ガスケ(1873~1921)はセザンヌ(1839~1906)の小学校時代の友人アンリ・ガスケの息子で、詩人として名をなしたひと。ガスケがセザンヌと知り合ったのは1896年、ガスケ23歳、セザンヌ57歳のとき。セザンヌは父親とともに息子の肖像画をそのころ描いている。それが下の絵。プラハ国立美で見たときはなかなかいい肖像画だなという印象が残っているが、当時この男性が23歳のガスケとは知る由もない。どうみても威厳のある50代の顔つき。

本の構成は一部がガスケがみた天才セザンヌ論、二部がセザンヌとガスケの対話による絵画論。対話といってもガスケは美術の専門家ではないので、もっぱら聞き役。話は3つあり、モティーフについて、ルーヴル美術館を2人が一緒にまわったときの画家や傑作談義、そしてアトリエでの美術論。

新鮮だったのがルーヴルにおけるセザンヌの絵に対する評価や好きな画家のくだり。常々美術史家ではなく、画家本人が書いた美術論を読みたいと思っていたから、この箇所はそれこそむさぼるように読んだ。セザンヌは過去の巨匠たちについてどのようにみていたか、いくつかピックアップしてみたい。

その一 お気に入りの画家はヴェネティア派のティントレットとルーベンス

ティントレットの‘天国’(エスキス)の前で‘ヴェネティアにある大きい天国はまだみてない。ティントレット、ルーベンス、これぞ絵描きだ。ティントレットの作品は本でみられるものは全部みている。莫大だ。すべてがそこに入っている、静物から神まで。広大な方舟だ。存在のあらゆる形態がだ。しかも信じられないような悲壮感と情熱と創意で。私がヴェネティアにもし行くことにしたとすれば、彼のためだったろうね’

その二 ドラクロアを熱く語る

‘ドラクロアは巨匠の系譜に属しているよ。彼はロマン主義かもしれない。シェークスピアやダンテを糧にしすぎたし、「ファウスト」の頁をめくりすぎた。でも、ドラクロアが、フランスで一番美しいパレットであることには変わりない。よく聞いて下さい。わが国の空の下では、同時に、色の魅力と悲壮、色のヴァイブレーションを彼以上に持つ人は誰ひとりとしていませんでした。われわれは皆彼の内で絵を描いている。君たち皆ユーゴーの内でものを書いているようにね’

その三 クールベも高く評価 

‘ものを建ててゆく人だ。なかなかてごわい左官屋だよ。色調を溶かす職人だ。ローマ人のように骨を惜しまず表面を造った。彼も、ほんとうの絵描きだ。今世紀で、彼の右に出る者はいないよ。クールベは自然の大画家でもあるよ。彼の偉大な貢献とは、19世紀の絵画のなかに自然の、ぬれた木の葉の匂いや森の奥の苔むした岩壁などを抒情的に登場させたことだ’

いい本が手に入った。関心のある方は続きをお読み下さい。

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