謎のデザイナー 小林かいちの世界にメロメロ!
現在、ニューオータニ美(ホテルの中の6階)で注目の展覧会‘謎のデザイナー 小林かいちの世界’(7/11~8/23)が開かれている。拙ブログでこれまで3回とりあげた(07/8/28、08/1/4、08/12/11)ので、かいちに関心のある方が増えたかもしれない。
今回展示されるのは07年10月、伊香保に開館した小林かいちを常設する保科美術館が所蔵するコレクションで、その数300点。ここの展示室は広くはないが、絵画とはちがって小さな絵葉書や絵封筒のデザインなので、このくらいの数でも展示室におさまる。
日光の小杉放庵記念館で小林かいちと衝撃的な出会いをして以来、そのアール・ヌーボー風のデザインの虜になっている。かいちが制作した絵葉書シリーズは50点、そして絵封筒は500点以上あると推測されている。過去2回の鑑賞で目がだいぶ慣れてきたが、300点のなかにははじめて見るのもかなりあった。
描かれたモティーフは花、蝶、蜘蛛の巣、ゴンドラ、灯、蝋燭、星、トランプ、クロスワードなど。感心させられるのが卓越した色のセンスにもとづく色彩対比、そして極端に細長くした人物描写とまわりに装飾的な曲線を配置する構成が女性を切なくも美しく表現しているところ。心に響いたものをいくつか。
上は‘白蝶’。蝶は擬人化され、美しい裸婦がシルエットになっている。右下に花弁の一部を画面からはみ出させ、蝶の下に余白を大きくとる構図が真に上手い!蝶では‘蝶の嘆き’と題されたうす紫が印象深いファンタジックな絵葉書があるのだが、今回は展示されてなかった。かいちは夜の情景や星をいくつも描いており、夜の微小、嘆きのカード、街灯に女、宵の星、なみだ星、流星に人物、地上の星、ゴンドラの宵などがある。
真ん中は‘流星に人物’4枚セットの一枚。流れ星というロマンティックな光景をうってつけの縦長の画面に斬新なデザインで表現している。いくつもあったゴンドラの絵で最も心を打ったのが下の‘ゴンドラの宵’。どこかで似たような絵をみたことがある。それは広重の絵の影響を受けてホイッスラーが描いた‘ノクターン:青と金色ーオールド・バタシー・ブリッジ’。海面に映るゴンドラの影、そしてゴンドラの中からまた橋の下にみえる建物の窓からでるピンクの明かりがえもいわれず美しい。
かいちは京都で仕事をしたデザイナーだから、京の町や舞妓さんが沢山登場する。夢二美でも京都ものの絵柄に魅了されたが、ここにも初見の絵封筒や御祝儀袋があり、釘付けになってみた。また、実際に使用された住所や宛名入りのものが展示してあった。これをみると、かいちのデザインが多くの人に好まれていたことを実感する。
一緒にみた隣の方も満足した顔をしていたから、小林かいちのファンがまた一人増えた。
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コメント
同じく私もメロメロです。このセンスの素晴らしさは一体何なのでしょうか....!詩の世界ですね。
買い占めた絵葉書を前にうっとりしています(笑)
投稿: noel | 2009.07.30 19:02
to noelさん
小林かいちに嵌ってます。お気に入りはファン
タジックな蝶の絵、夜のゴンドラ、京都を描い
たものです。
noelさんは京都のご出身ですから、かいちの
意匠は身近に感じられるのではないでしょうか。
堂本印象、加山又造、小林かいち、京都の伝統
文化のなかで育ったひとの前衛的な感性は本当に
すごいです。
投稿: いづつや | 2009.07.31 11:07
私ははじめて知った画家でした。
それにしても、長生きをなさった割には、
戦後、どうして活躍しなかったのか、
本当に謎ですね。
投稿: 一村雨 | 2009.08.19 05:24
to 一村雨さん
夢二のデザインセンスにも参りますが、かいちの
アール・デコ風の模様、画面構成はそのまた上を
いくような感じです。3冊のかいち本を頻繁に
みてます。
すごいひとが京都にいたものです。そのあとの写楽
のような消え方がまた興味をそそりますね。
投稿: いづつや | 2009.08.19 10:01