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2009.06.15

日本の描表装はだまし絵としておもしろい?

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だまし絵展(6/13~8/16)は会期中、相当な数の人がBunkamuraに足を運ぶのではなかろうか。目玉のアンチンボルドの‘ルドルフ2世’を見れたのは一生の思い出になる。また、イメージの魔術師、マグリットの絵が7点あったから、西洋画に関しては大満足。大きな拍手を送りたい。

ところが、日本のだまし絵はかなり不満が残る。だまし絵では定番の西洋画が揃ったのだから、日本の絵師や現代作家の作品はもう少しヴァリエーションをもたせて欲しかった。例えば、掛け軸に描かれた猿が画面からでてきて長い手にもった文を遊女に渡そうとしている鈴木春信の絵(拙ブログ08/10/2)とか会田誠のシュールさに驚愕する‘あぜ道’(1/14)とか森村泰昌が王女マルガリータに扮した絵など。

国芳の‘としよりのよふな若い人’(上の画像)の寄せ絵(嵌め絵ともいう)は誰でも喜ぶ絵だからこれはMUST。また、‘弁けい’&‘たいこもち’(2/26)や広重の‘即興かげぼしづくし’(真ん中)の影絵も遊び心があふれていて、おもわず頬がゆるむ。鏡中図もこういう楽しみ方もあったのかと興味深い。

だが、ここにちっともおもしろくないのがある。それは掛け軸の変種、‘描表装’。期間中に全部で15点でてくる。名古屋市美や兵庫県美で展示されるものも図録に載っているが、これらを含めると23点ある。このなかで、この楽しい‘だまし絵展’を構成する絵として、すとんと腹に落ちるのは河鍋暁斎の‘幽霊図’(オランダ国立民族学博物館)と柴田是真の‘滝登鯉図’(京都・野村美、展示は7/21~8/3))の2点だけ。ほかの絵ははっきりいって要らない!

西洋画にカソが描いた額から子供が抜け出そうとしている絵、‘非難を逃れて’があるから、幽霊が絵のなかから出てきたり、鯉が宙に浮いている掛け軸にはすっと入っていける。幽霊図は暗い部屋では怖くてとても見れない。

今回でている掛け軸は確かに普通のものとは違う。本紙のまわりの柱や中廻し、そして天地に木の枝や花模様などが描かれたり、伊勢海老の頭が出てたりするが、それは装飾性をもっと出してみようとしただけで、幽霊ではなく正月の飾り付けや雛人形などをみている限り特別驚きはしない。普通の掛け軸をみている感覚とそう変わりない。‘ほおー、随分装飾が凝っているね!’で終わり。

8/4~16に展示される鈴木其一の‘業平東下り’(下)はお気に入りの絵だが、なにもだまし絵展で再会しようとは思わない。見ている人が10人いれば10人、すばらしい掛け軸に酔いしれる。だまし絵としてこれを楽しむ人はいない。現在、展示されている酒井抱一(伝)の‘蓬莱山・春秋草花図’のどこをだまし絵の感覚で見ろというの?誰も上の風帯がよれたままに描かれているのをみて、おもしろがったりしない。三幅の本紙に描かれた花や鳥を鑑賞しているだけ。そして、‘この掛け軸はなぜここにあるの?’とポカンとなる。

この描表装の出品を強く勧めたのは山下祐二氏(明治学院大教授)だという。この人は装飾性の楽しみ方とだまし絵のおもしろさを勘違いしている。インパクトのあるアンチンボルドの傑作に比べたら、存在感の弱い掛け軸を展示して‘ここに江戸の絵師のアヴァンギャルドの精神が現われている!これを見て欲しい’と主張したい? こんな誰も共感しないことを能天気にいっていたら、美術史家としての実力を見透かされますよ!それでなくても若冲の絵に首をつっこんで評判が悪いのに。

一人で長く考えていると、まわりから見るとたいしたことでもないのに、自分はいいことを思いついたと錯覚することがあるから、くれぐれもご注意を。

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コメント

ううっ、辛辣なご意見ですね。
私も、一瞬、描表装って、そんなに不思議かなぁと
思いはしたのですが、まぁ、これも許容範囲ということ
にしとこぉと納得しておりました。
やはりあれは装飾ですよね。

投稿: 一村雨 | 2009.06.16 01:00

to 一村雨さん
名古屋市美やBunkamuraには日本画の学芸員が
いないから、山下氏に協力を依頼したのでしょうが、
ミスキャストだったですね。装飾をだまし絵にすりかえ
られてます。頼むほうも間がぬけてますが。

だまし絵の楽しみ方もわからないのに、現代アート
にも首をつっこんで、仕事をしているというのです
から笑っちゃいます。

この人が掲げる仮説は雪舟の‘秋冬山水図’でも
光琳の‘紅白梅図屏風’でも若冲の枡目描きでも、
皆はずれてますから、それほど実力はないのです。
そんな人が大物ぶって仕事ができているのは日本の
美術史家に人材がいないからです。

琳派狂としては、場違いなところに抱一や其一を
ひっぱりだして、大絵師をおもしろくもない切り口で
勝手にいじくるなと言いたいですね。

国芳や暁斎のことはほかの浮世絵の優秀な専門家に
頼めば、完璧に立派なだまし絵展になったのにと思い
ます。国芳のことで今日、また辛口で書きます。

投稿: いづつや | 2009.06.16 11:04

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