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2009.06.14

だまし絵展 奇想の王国

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Bunkamuraの‘だまし絵展’(6/13~8/16)は予想以上の人気だった。初日の開幕直後だから、そんなに混んでないだろうと思っていたら、中に入ると大勢の人がいた。いつもと勝手が違うのが親子連れが多いこと。孫の女の子と一緒にみているお爺さんの姿もあった。皆、絵にだまされるのが楽しいのだろう。

この企画に河出書房新社から出版された‘だまし絵 もうひとつの美術史’(99年)の著者、谷川渥氏(国学院大教授)がかかわっているという。この本は10年前から本棚にあり、取り上げられている絵を何度となくみているから、この中から展示されているものについてははじめて対面する感じがしない。

だまし絵はいろんなタイプがある。ヨーロッパで宮殿観光をしていると、ガイドさんから‘天井をよおーくご覧下さい。実際には天井はあんなに高くないんです。絵が描いてあるのです!’と説明されて、‘なんだ、だまし絵か!それにしても天井そっくりだな’と感心することがよくある。また、壁龕(へきがん、ニッチ)に描かれた聖人などにだまされることもある。こういう建築物でだまし絵を経験するのが一番おもしろい。

絵画で楽しいのはアンチンボルドの奇画、ある視点からでないと像がちゃんと見えないもの、ダリやマグリットらが得意とするダブルイメージのトリック(拙ブログ06/10/1)、エッシャーの不思議な絵。最も見たかったのが上のアンチンボルド作、‘ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)’。スウェーデンのお城にあるこの絵が日本で見られるのだから有難い。これまで見ていたウィーン美術史美の‘四季・夏’(05/2/20)にこの絵が加わったので、これでアンチンボルドは済み。

‘四季’が横向きの人物像なのに対し、これは正面向きだから、頭、顔、首、肩、胸を形どる花や果物がドンと目にとびこんでくる。目が一番に向かうのが洋ナシの鼻、ふっくらした赤いリンゴの頬、次に目立つのは右肩の白が輝いているマドンナリリー。また、いくつも横にでている麦が髪の毛をイメージさせる。

5/17の日曜美術館で紹介されたシェーンの‘判じ絵’(真ん中)の‘フェルディナント1世’は左側からみて王の顔をとらえられたが、もうひとつの‘ヨナと大きな魚としゃがむ男’は見方が思い出せなくて、こんがらがった。で、隣の女性に‘どうやったら見えます?’と聞いた。‘たぶん、こちらの左側からみると、あれが目で、その先が口だと思うのですが―’、そうでした!でもこの図像はかなり圧縮されているので、クリアには見えない。

今度は彼女から逆に‘排泄物はどこにあるのですかね?’、‘ここです、お尻の割れ目がこれでしょう’。こんな共同作業をしたから、ロンドンナショナルギャラリーにあるホルバインの‘大使たち’(08/2/5)をまた見る機会があれば、アナモルフォーズにより描かれたドクロを上手にみれるだろう。

本物の葡萄やロブスターが目の前にあるように錯覚するリアルな静物画はこれまで何度もみているので、その特殊なかたちである‘トロンプ・ルイユ’(目だまし)にはそれほど足はとまらない。ヘイスブレヒツの絵のいくつかは05年マウリッツハイス美を訪問したときにちょうど開催されていた‘だまし絵展’でもお目にかかった。お気に入りはリアルな質感描写に目が点になる‘食器棚’。

エッシャーは06年末、ここであった回顧展にでていた‘昼と夜’と‘滝’(06/12/30)をまた夢中になってみた。エッシャーにはかなり参っているので、いろいろなヴァージョンを見たくなる。下の現代アート作家、ヒューズの作品‘水の都’が大変おもしろい!こんな画面が目の前に飛びだしてくる絵ははじめて見た。さて、どんなイリュージョン?

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コメント

日曜美術館で見て、楽しみに出かけました。
初日夕方は大混雑でした。
これから、もっと混むのでしょうね。
アルチンボルトという人、どんな画家だったのか
興味深いです。
水の都はゆらゆらと楽しめました。

投稿: 一村雨 | 2009.06.15 05:00

to 一村雨さん
アンチンボルドの‘ルドルフ2世’が予想以上に
すばらしかったので、満足度は高いです。

水の都もよかったですね。日本の現代アート作家
の作品でも、だまし絵感覚で楽しめるものがもっと
あるような気がするのですが。こういう展覧会に
森村泰昌作品はMUSTのはずですが、西洋画を
集めるのに時間をとられすぎたのでしょうか?

投稿: いづつや | 2009.06.15 20:27

はじめまして。「奇想の王国」で検索して伺いました。
今日「奇想の王国」にいってきまして、ヒューズの作品には驚かされました。タネが分かるまで何度もウロウロしちゃいましたから。f^^;
あの感動が忘れられず、出口のお店のところで、あの絵を衝動買いしてしまいました。家に届くのはまだ先ですが、到着を待ちわびています。
ただ、けっこう場所を取る絵だということを失念していて、どこに飾ろうかと頭を悩ませているところです。

投稿: じゅんっち | 2009.06.23 20:44

to じゅんっちさん
はじめまして。書き込み有難うございます。

水の都はまったく不思議な体験でした。いまでも
よくわからないのですが、絵の前に立ったとき、
横になった三角錐が突然画面から飛び出してきた
ように思えました。

それで、また何分かすると、この出っ張りはひっこ
んでフラットな画面になるのかなと思い、じっと
様子をみてました。ところが、いつまでたっても、
三角錐はそのままでした。はじめに感じたことは
一体何だったのか?錯覚なのでしょうね!

投稿: いづつや | 2009.06.24 00:24

私も行ってきました。テレビで紹介されたりしてたんですね。道理で混んでるはずだ。。。
私も水の都はだいぶ不思議で、何これ??を連呼してきました。(観すぎて酔いましたw) 人間の視覚ってこんなにあやふやなのかと痛感した作品でした。

投稿: 21世紀のxxx者 | 2009.06.30 01:30

to 21世紀のxxx者さん
相当混んでいるようですね。日本画の一部を
除いてだまし絵展にふさわしい作品が揃って
ますから、話題になるのも当然でしょうね。

水の都には参りました。目の錯覚というのを
最初からねらって作品を作るのですから、
アートのマジシャンといっていいですね。

投稿: いづつや | 2009.07.01 09:38

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