棟方志功ー倭画と書の世界ー
日本民藝館で行われている特別展‘棟方志功ー倭画と書の世界ー’(3/31~6/14)を楽しんだ。棟方志功の絵をみるのは横浜そごうであった展覧会(06/5)以来。
今回は板画(版画のこと)は無くて、書が17点と倭画(肉筆画)が48点。そごうに出品されたのは民藝館の所蔵だったので、そこで見た肉筆画やこれまでの訪問でお目にかかったものがあるから、初見は全体の半分くらい。
書は二字や三字が多く、いずれも大きな文字。墨のはね返った跡があり、字にかすれが出ているが、その力強くのびのびとした筆力にぐぐっと引き込まれる。柳宗悦がとくに愛した書が上の‘不生’。不生というのは仏教語で、‘思案なし’とか‘迷いなし’とか‘疑いのない’といった心の状態を意味する。ほかには‘華厳’、‘開山’、‘慈光’、‘無事’、‘人境’、‘中観’、‘道’、‘東西’、‘南北’などがある。
倭画のなかで一際目立つのが大きな2点。上左の‘乾坤飛駆天妃図’と真ん中の‘救界不空羅索大施無畏尊像’。これはそごうにもでていた。スピード感のある人物像は志功の得意とするところ。二人の裸婦の天妃が逆方向にすごい速さで飛んでいる。
‘救界不空羅索’は真に見ごたえのある肉筆画。これまで見た絵で完成度からするとこの絵と青森県美にある‘弁財天’(拙ブログ06/9/26)が一番いい。そういう意味ではこれは貴重な展示である。関心のある方はお見逃しなく。
ほかの絵や中品ないしは小品。軸のものは柳が表装を手掛けている。表装のデザインと絵柄がぴったり合っているのが下の‘鷹図’。鳥はほかに‘鷲’、‘鶴’、‘水鳥’,‘カワセミ’、‘鵜’、‘山鳥’、‘ふくろう’。魚は大好きな‘鯉’と‘鯛’の絵。また、‘河童’や‘牛’もいる。風景画では黄色や青が目に心地いい‘暁陽十和田湖図’が心に響く。
今回、作品の展示の仕方に感心した。河井寛次郎や濱田庄司の壺や瓶をさりげなく志功の軸の前に置いたり、館自慢の濱田の大鉢2点ー‘緑釉黒流描大鉢’(04/12/3)とこれよりもっと大きい口径58㎝のものーを展示している。棟方志功のいい肉筆があり、そのうえ河井や濱田の名品がオマケでついているのだから御機嫌である。
さらに金城次郎の魚文の大皿(06/1/25)とも久し振りに対面。満ち足りた気分で館を後にした。
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