浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展がまたやってきた!
昨年8月、太田記念美で見た‘浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展’(拙ブログ08/9/9)がまた東京に戻ってきた。今度は日本橋高島屋での展示(4/29~5/11)。
作品150点のうち、前とダブっているのもあるが大半ははじめてみるもの。前回図録を購入したから、どんな絵がみれるかは一応頭の中に入っている。だから、求めるサプライズは一度味をしめた色の鮮やかさとか絵の大きさ。
春信が十数点ある。見たくてうずうずしていたのが穴のあいた甕から勢いよく流れる水の描写に釘付けになる‘司馬光の甕割り’、川に浸かった布袋と子供の足がとてもリアルな‘布袋の道行’、そして娘に甘える布袋が可愛い‘布袋と娘’。
上は前回もでていた‘寄菊’。墨で潰した背地に浮き上がる菊を若衆が腰をかがめてとろうとしており、後ろでは手燭をもった娘がそれをみている。若衆はとても男には見えないが、ここは想像力をふくらませてお楽しみ中の2人をながめていた。
春信が好んだこの墨つぶしの絵はほかに‘夜の梅’(メトロポリタン美)や‘風流四季哥仙 二月 水辺梅’(慶応義塾)、‘虫撰び’(大英博物館)などがあるが、どれもたまらなく魅了される。まだ見ていない‘虫撰び’と遭遇することを夢見ている。‘風流四季哥仙’はこの秋、三井記念美で開催される‘高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展’
(9/19~11/23)にたぶん出品されるだろう。
国芳もこの展覧会の見どころのひとつ。ユーモラスな‘金魚づくし’は別の場面がでていた。見てのお楽しみ!また、‘としよりのよふな若い人だ’など国芳お得意の‘寄せ絵’が目を楽しませてくれる。真ん中は相当とんでいる絵、‘相馬の古内裏’。圧倒的な存在感をもつ馬鹿デカイ骸骨が画面いっぱいに描かれている。
骸骨は左にいる妖術を使う滝夜叉姫の手下で、反乱の首謀者、滝夜叉姫を成敗するために都から送り込まれた勇士大宅太郎光国をじっとみている。この絵を使ってすぐにでもエンターテイメント満載の怪奇アニメがつくれそう。国芳のスーパー想像力にはまったく恐れ入る。
下は勝川春章の‘真田与市・俣野五郎組討’。春章は肉筆美人画の名手だが、こういう武者絵とか役者絵も大変上手い。必死の形相で戦う二人の武者の背景を黒にし、遠景の三ヶ月や山の手前に細い白線を横に引く構成がなんだか現代のポスター感覚。これは収穫の一枚。お気に入りの歌麿は‘青楼十二時’シリーズをしっかり見たので大満足!
浮世絵鑑賞は摺りの状態のいい海外の美術館からの里帰り作品が年に数回見れればそれで十分。次の楽しみは江戸東博の‘写楽 幻の肉筆画 ギリシャに眠る日本美術’(7/4~9/6)。開幕が待ち遠しい。
| 固定リンク
コメント
やはり、これだけ質の高い浮世絵を見てしまうと
国内の作品が貧相に見えてしまいますね。
国内保存の浮世絵は、明治もので我慢すべきなの
でしょうか。
スポルディングコレクションを一目見たいものです。
投稿: 一村雨 | 2009.05.04 08:35
日本は若葉の季節でしょうか。さて、小生の駐在先のロンドンでは国芳展が催行されており、ご掲載の相馬内裏も展示されていました。意外に観客も沢山おり、吃驚すると同時に嬉しくもありました。ちなみに図録は£40でした。
投稿: 青江 | 2009.05.04 14:26
to 一村雨さん
ロイヤルコレクションの浮世絵は本当に浮き浮き
させてくれますね。日本にもいい色が残っている
絵はあるのですが(東博、太田、平木)、海外の
美術館のほうにいい摺りのものが多くあります
から、浮世絵の楽しさをこういう色の鮮やかな
里帰り作品で味わうことになりますね。
ボストン美蔵はこれからも見れそうですから、
じっくり待ちましょう。
投稿: いづつや | 2009.05.04 23:45
to 青江さん
ロンドンで国芳展ですか!相馬の古内裏や寄せ絵
をみるとイギリス人も‘HOKUSAIの構図も凄いが、
ほかにもこんな前衛的な絵師がいたの?’とびっく
りでしょうか。
国芳は風景画に陰影法を使ったりしてますから、
むこうの人にはすっと入っていけるかもしれませ
んね。
投稿: いづつや | 2009.05.04 23:58