美術に魅せられて! 出品目録は美術鑑賞の必須アイテム
今日は展覧会を鑑賞するときに励行しているルーティンワークのことを述べてみたい。館内に入る時、手に必ず持っているのはチラシ、単眼鏡、出品目録(2枚)、鉛筆。
宣伝用に作られるチラシはその展覧会の目玉の作品が載っているので、欠かせない。これをちょくちょく見ながら、見逃しがないように部屋から部屋を移動していく。チラシにある作品を首尾よく全部見終われればいいが、どうしても見当たらないことがある。美術館のなかを行ったり来たりするのは結構疲れるから、そういうときは早めに美術館の人に聞くことにしている。
単眼鏡は日本画の企画展では必需品。西洋画を見るときはあまり使わないが、細部を見たい時にはこれが役に立つ。
入口のところにおいてある出品目録は必ず2枚とる。絵画でもやきものでも彫刻でも目の前にある美術品をみたときは、このリストに速記録のように黒鉛筆で印象を書き込んでいく。そして、家に帰って赤のボールペンで後から読めるよう清書する。で、清書用にもう一枚余分にとっているのである。
上の‘20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代’(Bunkamaura)の出品リストはその一例。絵画を見たとき書き込んでいるのは感銘を受けた要素について。つまり‘形’、‘構図’、‘構成’、‘マチエール’、‘カンバスの大きさ’のうちどれだったかをメモしている。例えば、シャガールの‘バイオリン弾き’では‘構図’と‘赤の輝き’に魅せられ、‘祝祭日’では‘白い壁’と‘ラビの頭に人が乗っている’ことに惹きつけられたといった具合。
また、山水画の場合、小さく描かれている人物を‘橋の上にニ人’とか‘中景の坂道に一人’とメモったり、‘飛翔する雁が4羽’と書き込んだりする。
西洋画、日本画どちらでも実際に見た色の明るさや鮮やかさが図録で再現されることが少ないから、色については‘チラシの色より鮮やか’というように正確に書くことにしている。このように足がとまった絵については、それが何であるか、感じたままどんどん書いていく。字が乱れすぎて後で何を書いたかわからなくなることもある。
この作業をルーティンにしているので、作品の題名と所蔵する美術館は見るが解説はほとんど読まない。だから、鑑賞疲れはあまりない。展覧会に行くと疲れるという人が多いが、これは解説文をじっくり読み、絵にまつわるお話を頭のなかにインプットすることで脳のエネルギーを多く消費しているから。頭をからっぽにして、絵だけを見ていると疲れない。お試しあれ!
絵全体の印象や描かれている対象、その形、また色について書いていると、後から展覧会をふりかえったとき、一つ々の絵が印象深く蘇ってくる。この方法は名画から受けた感動を体のなかに長くとじこめておくには効果的。だから、展覧会の数が多いとシンドクなる清書にも、こまめに手を動かしている。
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