上村松園・松篁・淳之 三代展 その一
日本橋高島屋で昨日からはじまった‘上村松園・松篁・淳之 三代展’(3/16まで)を見てきた。デパートは世の中が不況だろうが好景気だろうが、女性客の心をがっちりとらえることをいつも考えている。
だから、展覧会でも、女性に好かれる美人画と花鳥画をずらっと揃えた企画は定番。昨年は横浜そごうで‘上村松篁展’があったし、日本橋三越でも‘上村淳之展’が開かれた。‘三代展’は十数年前、名古屋にいたとき松坂屋で遭遇したから二度目。
陶芸の世界では技を継承するという意味もあって、窯元の家に生まれたら将来は陶芸家になるというのが暗黙の了解だから、三代続くのはそう珍しいことではないが、日本画の場合、仮に子供が画家になったとしても親の画風を引き継ぐということはないから、上村家三代のように三人が三人とも日本画壇の中核を担う画家として長く活躍するというのは本当に珍しい。
松園、松篁は文化勲章をもらっているが、淳之もいずれ受賞すると思われる。美人画家、松園のDNAがちゃんと継承されているというのがおもしろい。で、三人を一回ずつ取り上げることにした。まずは、松園から。
作品は全部で40点ある。過去、松園の回顧展は5回くらいみているので代表作の多くは鑑賞済み。だから、描かれた女性にはつい‘また、お会いしましたね’と言ってしまいそうになる。いつものことながら、平安の女性たちには真に魅せられる。今回は2点。‘紫式部図’(石山寺)と上の‘伊勢大輔’がでている。昨年、横浜美であった‘源氏物語の1000年展’でも同じ石山寺蔵の別ヴァージョンをみた。
‘伊勢物語’は三の丸尚蔵館にある‘雪月花’とともにぞっこん参っている絵。ひな祭りのころ、こうした美しい十二単を着た女流歌人と対面できるのは有難い。小さい頃、家族みんなで百人一首を楽しんでいたから、伊勢大輔の歌‘いにしえの奈良の都の八重桜今日九重ににほひぬるかな’は今でもよく覚えている。
チラシに使われている真ん中の‘鼓の音’は松園の代表作のひとつ。松園の美人画では、浮世絵のモティーフを借りた傘をさす女がよく描かれるが、この鼓をたたく場面は松園のオリジナル。傑作‘序の舞’同様、絵から音が聞こえてくるよう。
今回の収穫は下の‘牡丹雪’と‘楠公夫人’(ともに足立美)。広島に住んでいたとき、安来市にある足立美は数回訪問したが、どういうわけかこの2点にお目にかかれなかった。広島を離れたから、この名作を見る機会はないだろうと諦めていた。だから、天にも昇るような気持ち。息を呑んで見た。
やっぱり松園の美人画は心を打つ。名作揃いなのでお見逃しなく。
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コメント
こんばんは。
これは予想以上に良い展覧会でしたね!
松園の美人画いくら見ても飽きません。
投稿: Tak | 2009.03.06 17:51
to Takさん
お目当ては松篁、淳之だったのですが、松園の
名作が沢山でていたので、またじっくりみてし
まいました。
いい加減に引いた線が一本もないところが松園
のすごいところです。集中力が半端じゃないの
でしょうね。ここまでくると神業的です。
投稿: いづつや | 2009.03.06 23:17