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2009.03.31

いつか行きたい美術館! ナポリ カポディモンテ国立美術館

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海外にある有名な美術館をできるだけ多く訪問したいと願っている。でも、国内と違って出かける機会が無制限にあるわけではなく、またツアー旅行ではとても行けないところもあるから、どれだけ実現するかはわからない。

美術館の訪問は今のところツアー旅行のなかに組み込まれている自由行動を利用するのを基本に考えている。最近は昨年体験したようにブランド美術館めぐりを売りにしたツアーも増えてきているので、この方法でも結構な数の美術館に行くことができる。

若い時は個人で動く旅行を経験したが、最近は添乗員さんにおんぶにだっこのツアー旅行にすっかり慣れちゃったので、荷物運びとか時間調整を自分でやらなければいけない個人旅行はとても無理。だから、旅行会社から送られてくる案内パンフレットでは自由行動が多いものを見つけて計画を立てている。

その美術館訪問は何度も行く美術館とまだ行ってないところに分けている。リピーター感覚で足を運びたいのはルーヴル、オルセー、ポンピドゥー、ロンドンナショナルギャラリー、大英博物館、メトロポリタン、MoMA、グッゲンハイム、ワシントンナショナルギャラリー。

新規の美術館はまだいっぱいある。で、‘いつか行きたい美術館!’シリーズ(不定期)を立ち上げ、対面を夢見ている作品をピックアップすることにした。1回目はナポリにあるカポディモンテ国立美術館。

ナポリはこれまで2度訪問した。1982年のときはナポリ国立博物館に行き、ポンペイ出土のモザイク画‘アレキサンダーとダリウスの戦い’に大変感激したのをよく覚えている。現地の地図によると、カポディモンテ美は国立博の上のほうにある。手元の美術本に載っている有名な絵は次の3点。

★ベリーニの‘キリストの変容’(上の画像)
★ティツィアーノの‘教皇パウルス3世’(真ん中)
★ブリューゲルの‘盲人の寓話’(下)

ベリーニ(1430~1516)の絵は昨年フリックコレクションのところで‘聖フランチェスカ’(拙ブログ08/5/20)を紹介した。‘キリストの変容’は代表作のひとつ。これとヴェネツィアの聖堂にある2点を見るとベリーニは済みマークがつく。

ここにはティツィアーノ(1485~1576)の名画が2点ある。プラド美にある‘ダナエ’(07/3/23)の別ヴァージョンとこの‘教皇パウルス3世とその孫アレッサンドロとオッタヴィオ’。

ブリューゲル(1525~1569)の絵は昨年、ルーヴルで模写をみた。ちょっと引いてしまう絵だが、本物を見てみたい。これほどいい絵があるのだから、ここの絵画コレクションの質は相当高いはず。

問題はどうやって行くかである。06年に再訪したとき、ガイドさんは‘ナポリは治安が悪いので、あまりで出歩かないでく下さい’と言っていた。これが気になる。今もそれは変わってないだろう。この街にはカラヴァッジョの見たい絵が2点あるから、3度目の行き方をいろいろ検討してみたい。

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2009.03.30

まぼろしの薩摩切子展に大感激!

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首を長くして待っていたサントリー美の‘まぼろしの薩摩切子’(3/28~5/17)を楽しんだ。長らく夢見ていた薩摩切子の名品が全部で115点みることができたのだから、天にも昇る気持ち。サントリー美に感謝々である。東京のあと神戸市立博物館
(6/13~8/30)にも巡回する。

色別の内訳をみると
紅色 34
藍色 39
紫色  7
緑色  2
黄色  2
無色 31

4階展示室を入ってすぐのところにあるのが上の‘藍色被栓付瓶 一対’。のっけからすごいのがでてくる。所蔵しているのはアメリカのコーニング社。同社には4点の薩摩切子があるが、今回これと‘藍色被三ツ組盃・盃台’の2点が里帰りした。藍色のすばらしい栓付瓶がもう一点ある。階段を降りたところに飾ってある徳川記念財団蔵のもの。

ユニークな蝙蝠文が目を引くサントリー美自慢のお宝、‘藍色船形鉢’(拙ブログ04/12/20)と再会した。これは彫刻家朝倉文夫が蒐集していたもの。深みのある青と側面の斜め格子に魚々子のカットに目が釘付けになる。また、形がよくカットが綺麗な脚付杯にも足がとまる。

今回出ているものでは紅色は藍色より少ないが、現存する薩摩切子で一番多いのは紅色。薩摩切子の特徴である美しい‘色のぼかし’に言葉を失うのがチラシに使われているサントリー美蔵の‘紅色皿’。何度みても頭がくらくらする。模様の組み合わせに目を見張らされるのは‘栓付瓶’(個人)、‘筆筒’、‘鉢’(ともにサントリー美)。

真ん中は紅色でとくに魅せられた‘鉢’(個人)。これは島津斉彬が親交の深かかった越前福井藩主松平春嶽に贈ったもの。息を呑んでみていた。

この鉢同様、収穫のひとつだったのが下の‘緑青色被蓋物’(びいどろ史料庫)。手元の資料(1988年)に緑色の色被せガラスは1点となっていたのがこの蓋物。なんだかヨーロッパの国王が所蔵しているお宝みたい。まばゆい光の輝きに200%KOされた。嬉しいことに07年にあった‘美の壺展’に出品された2点目の緑色の‘栓付瓶’(07/12/5)も今回出ている。

7点ある紫色では‘水に生きる展’(07年、サントリー美)で見た‘ちろり’(07/6/27)や‘脚付杯’(びいどろ史料庫)に魅せられた。

世界に誇る薩摩切子の名品の数々を目に焼き付けた。これほど幸せなことはない。

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2009.03.29

東博平常展の名品!

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現在、特別展がお休みの東博で所蔵の名品を楽しんだ。平成館1階の右側にある展示室はよく考えてみると、平成館がオープンして以来一度も中に入ったことがない。埴輪など日本古代の遺跡があることはわかっているのだが、本館のほうで2、3体みているからいつもパス。

どういう風のふきまわしか、この度はぶらり入ってみるかという気になった。まず、国宝の‘袈裟襷文銅鐸’と対面。隣りにこれより1.5倍くらい大きなものもある。どんどん進んでいくと、男や女の埴輪がどどっと出てきた。‘ありゃらー、こんなに沢山あるの!’犬の埴輪もあった。

そして、中央の一際目立つ立派な埴輪に惹きつけられた。上の国宝‘挂甲の武人’
(6/14まで展示)。久しぶりに対面したが、前回がいつだったか覚えてない。胴部の挂甲や頭の冑、頬当などは随分手がこんでおり、なかなかカッコいい。じっとみてたら、小さい頃みた映画「大魔人」を思い出した。たしかこんな優しい顔をした武人が怖いギョロ目の魔人に変身するシーンだった。あの埴輪はひょっとするとこの武人だったかもしれない。

事前に得た情報で楽しみにしていたのが、特別陳列‘酒呑童子’(本館2階、3/24~4/19)。狩野孝信が描いた絵巻や元信の原本を模写したもの、絵扇面、菱川師宣の版画がある。見どころはもと六曲一双の屏風に貼りこまれていた‘酒呑童子絵扇面’(室町~安土桃山時代・16世紀)。全部で36回枚あり、真ん中はその一枚で都から連れてきた女房をはべらせる酒呑童子が描かれている。

この物語の発端から酒呑童子を退治して都に凱旋してくるところまでが描かれたものははじめて見た。解説文にガイドされてひとコマ々を見ていくのはとても楽しい。一番ドキッとするのは源頼光が切り落とされた腕を食べるシーン。サントリー美が所蔵する元信の絵はこれまで数回みた。目に焼き付いているのが首をはねられた童子の体が飛び散る血しぶきで赤く染まるところ。

5点ある師宣の版画は白黒だが、MOAに彩色のものがある。やはり色つきのほうが迫力があり、身を乗り出して見てしまう。鬼賊のいる場所には、丹波大江山と近江伊吹山と二つの説がある。元信の絵巻や絵扇面は伊吹山で、師宣は大江山に設定している。

1階左の近代絵画コーナーでは今、ミニ黒田清輝展を開催中。題して‘黒田清輝のフランス留学’(3/3~4/12)。お気に入りはなんといっても下の‘読書’。隣りはこれまたお馴染みの‘婦人像’(東芸大美)。

‘読書’は何度みても心に響く。これは同時代に生きたフランス人が描いた絵として見てもなんら違和感がない。それほど西洋画らしい絵。西洋人でもないのにこんないい絵が描けるのだから、日本人はつくづく絵が上手い民族だなと思う。

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2009.03.28

東本願寺の至宝展

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現在、日本橋高島屋では‘東本願寺の至宝展’(3/18~30)が行われている。チラシを手にしたことき、気になったのは狩野元信と円山応挙、そして棟方志功の絵。ほかはあまり心が動かないから、今回は3点買いと割り切って会場に入った。

上は元信作、‘唐人物・花鳥図’。この人物は中国宋代の詩人・蘇東坡。保存状態がとてもよく、最近、元信の絵として確認されたらしい。元信の人物画では、東博の平常展で定期的にお目にかかる‘禅宗祖師図’が一番馴染み深いが、こういう三幅に描かれたものははじめてみた。

先の妙心寺展で‘四季花鳥画’や‘瀟湘八景図’などの名品を楽しんだが、巡回する京博にもでかけ、東博に展示されなかった作品と対面しようと思っている。そうすると、元信もおおよそ済みマークがつく。

真ん中と下は狩野永岳の‘寿老人・寒山捨得図’(三幅)の‘寒山’と‘寿老人’。永岳(1790~1867)は山楽・山雪で知られる京狩野派の9代目。

この絵師の作品を見たのはまだ数点しかない。最初の経験は3年前、京都で春と秋の観光行事になっている‘非公開文化財特別公開’で訪問した妙心寺・隣華院の襖絵‘四季花鳥図’と‘紅葉図’。永岳の作とわかったのは14年前とのことだが、鮮やかな金地極彩色が目に焼き付いている。

絵全体の印象、色使いは妙心寺展に出品された‘西園雅集図襖’(隣華院)と同じ。今回お目にかかったのはよく知っている画題。横向きの寒山にとても惹きつけられた。こういう絵を見せられると永岳には要注意マークをつけたくなる。

お目当てだった円山応挙は‘稚松図’、‘竹雀図’、‘老梅図’、‘雪中松鹿図’。なかでも余白をたっぷりとった‘老梅図’に魅了された。最後のコーナーにあった棟方志功の肉筆襖絵‘天に伸ぶ杉木/河畔の呼吸’は期待していたのだが、色のインパクトは想像していたものの半分だった。

はじめから3点買いだから、棟方志功と永岳が入れ替わったと思えば気は楽。大満足とはいかないが、3つも収穫があればOK。

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2009.03.27

もう一度見たいアムステルダム国立美のレンブラント!

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先週土曜の‘美の巨人たち’(TV東京)でレンブラントの‘夜警’を取り上げていたので、4年前に訪問したアムステルダム国立美術館のことを思い浮かべている。

そのときは館が修復中で、期待していたクリヴェッリの‘マグダラのマリア’にお目にかかれず楽しみも中くらいだったが、工事はもう終了したのだろうか?次回のオランダ旅行のプライオリティはほかと比べて今のところ高くない。でも、大好きなレンブラント
(1606~1669)の作品は何度みてもいいから、またアムスヘ行こうという気は勿論ある。で、もう一度見たいレンブラントの絵をリマインドしてみた。

★夜警(上の画像)
★綿物業者組合の理事たち(真ん中)
★ユダヤの花嫁(下)

オランダ旅行帰りに感想を聞くと‘夜警’(1642)がすごくよかったという人が多い。26年前、この絵の前に立ったとき大感激したことは今でもよく覚えているし、05年に再会したときもやはり熱くなった(拙ブログ05/4/10)。これまで西洋画を沢山見てきたが、美術の本に出てくる‘名画中の名画’がそのままうなずけるのはこの‘夜警’とベラスケスの‘ラス・メニーナス’(1656、プラド美、07/3/19)。

そう思わせるのは二つの絵が大きいこともある。‘夜警’は縦3.63m、横4.37mの大作。カラヴァッジョやレンブラントの絵に夢中なのはある事件や出来事の瞬間や人物が光と影の巧みなコントラストにより描かれているから。画面全体が緊張感につつまれ、人物の内面や精神性がみられる絵というのは深く胸を打つ。市民隊が勇ましく出動する瞬間を描いた‘夜警’はオランダの宝というより人類にとっての大事な遺産。本当に見事な絵である。

男の肖像画に対する好みは女性の肖像の半分くらいだが、レンブラントだけは例外。何点もある自画像をはじめ魅了される作品がいくつもあり、1662年に制作された真ん中の集団肖像画は大変気に入っている。‘ユダヤの花嫁’(1667)は安定感のある三角形構図と絵の具が厚く塗られた男の袖に目が釘付けになる。

05年のときは‘使途パウロとしての自画像’が展示してなかった。最初の訪問では‘夜警’だけに関心がいっていたから、この絵の記憶がうすい。で、もう一度仕切り直しのつもりで楽しみにしていたが、叶わなかった。ゴッホ狂としては一度は見ておかなければいけないクレラー=ミューラー美も残っているので、やはりもう一回オランダへ行くことになりそう。

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2009.03.26

ブレラ美術館のカラヴァッジョ展

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つい最近、ミラノにあるブレラ美術館(上の画像)でカラヴァッジョ特別展が開かれていることを知った。HPをみると1/18に開幕しており、3/29に終了する。作品はもっと多くあるのかと思ったが、次の4点のみだった。

★エマオの晩餐:ロンドン、ナショナルギャラリー(拙ブログ08/2/6
★エマオの晩餐 : ブレラ美(真ん中の画像)
★果物かごを持つ少年 : ローマ、ボルゲーゼ美(下)
★合奏 : NY,メトロポリタン美(08/5/7

06年に訪問したブレラ美が開館したのは1809年。今年がちょうど200周年にあたるので、これを記念して、1年間に7つの展覧会が企画されている。その第一弾がカラヴァッジョ展。秋には‘クリヴェッリ展’(10/15~10/2/5)が行われる。これは見たい展覧会だが、残念ながら今年はイタリア旅行は無し。

カラヴァッジョ(1571~1610)の‘エマオの晩餐’はマンテーニャの‘死せるキリスト’(06/5/2)やラファエロの‘マリアの結婚’などとともに美術館自慢の名画。ナショナルギャラリーにある同名の絵(1601~02年)から4、5年あとに描かれている。

より暗い画面と左からさしこむ光と影の強いコントラストからはキリストの深い精神性とまわりにいる男たちの緊張した表情がよく伝わってくる。いつかまた、この絵の前に立ちたい。

‘果物かごを持つ少年’は01年12月から02年の2月にかけて岡崎市美術博物館で開かれた‘カラヴァッジョ展’で展示された。また、‘合奏’は昨年、METで再会したから記憶に新しい。

カラヴァッジョが描く果物のリアルな質感にはまったく驚かされる。この絵同様、視線が釘付けになるのが‘病めるバッカス’(ボルゲーゼ美)やミラノのアンブロジアーナ絵画館にある‘果物かご’(06/5/3)。

どうしてこんなに上手にブドウが描けるのか?!本当に目の前にブドウがあるみたい。真にカラヴァッジョの画力はとびぬけている。アンブロジーナ美にいる時間はそれほどとれなかったが、何はさておいても‘果物かご’だけはしっかりみた。一生の思い出である。

来年の春、ローマで2回目のカラヴァッジョの追っかけを計画している。目指す作品は
★悔悛のマグダラのマリア : ドーリア・パンフィーリ美
★エジプト逃避途上の休息 : ドーリア・パンフィーリ美
★女占い師 : カピトリーノ美
★洗礼者ヨハネ : カピトリーノ美
★ゴリアテの首を持つダヴィデ : ボルゲーゼ美
★ユディトとホロフェルネス : バルベリーニ宮国立古代美
★ユピテル、ネプトゥルヌス、プルート : カジノ・ボンコンパーニ・ルドヴィージ

そのあと見たいのはナポリやシチリア島やマルタ島にある絵だが、これは時間がかかりそう。

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2009.03.25

WBCでわかった野球とベースボールの違い

458日本代表が対戦したアジアの国、キューバ、アメリカの野球をみていると、各国は自分たちの野球のスタイルで戦っていることがわかる。その違いを少し考えてみた。

野球の戦力は投手力、打撃力、守備力の3つが基本。WBCの連覇を達成した日本代表がほかのチームとくらべてとびぬけた力をみせたのは投手力。

チーム防御率は日本が1.71なのに対して韓国3.00、アメリカ5.99、ベネズエラ4.13。日本のプロ野球で活躍するトップクラスの投手は大リーグでも充分通用することは野茂、松坂、黒田の成績をみれば明らかだが、今回の日本の投手陣がこれほどいい成績を残したのはちょっと驚き。だが、このデータだけでアメリカや中南米の投手の実力はこんなものかと早合点するのは禁物。

登録メンバーに名を連ねているのは実績をあげた実力者で、アベレージのピッチャーが選ばれているわけではない。いいピッチングができてないのは彼らが本気モードで投げてないから。WBCが大リーグの利益ベースを拡大するためのプロモーションイベントであることがわかっているから、怪我をしない範囲で試合に臨んでいるだけのこと。

当初はベネズエラ代表として参加することになっていたが、怪我のため出場をとりやめたメッツのエース、サンタナは‘2週間で準備をするのは無理。WBCの開催は3月ではなく、大リーグのワールドシリーズが終わったあとの11月にしたほうがいい。プレーオフにでる8チームはしんどいかもしれないが、22チームはシーズンのあと休んでいる’と語っている。これは正論!まったく同感である。

投手陣の出来が勝利の鍵を握っているのだから、3月開催では大リーガー投手が中軸になるアメリカやドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラは何回やっても優勝は果たせないだろう。4年に一度開催するWBCを本気で真の世界一を決める大会にする気があるのなら、その年の大リーグの開幕時期を例年の4月初旬から2週間くらい早め、11月にWBCを行う。ほかの国の野球シーズンもアメリカに合わせて日程を調整する。

これが実現するとアメリカやドミニカの本当の力がみられ、まさに日本、韓国とのガチンコ対決となる。大リーグ機構がそこまで本気でこの大会を考えているか?可能性は20%しかないだろうが。

日本はホームランを打てるバッターを揃えることは無理なので、犠牲バント、フライ、盗塁、ヒットエンドラン(以下H・R)をからめた‘つなぐ野球’で得点を重ねるしかない。この戦方は韓国はできるかもしれないが、アメリカやキューバ、ドミニカなどは難しい。

現在は日本のプロ野球でも前半にヒットで塁にでたとき、すぐにバントでランナーを進める作戦はとってない。また、大リーグでもワールドシリーズのようなビッグゲームでは、先取点をとるため失敗が多いもののバントはやることはやる。だから、‘日本では当り前の犠牲バントをアメリカはまったくしない’という定説はカッコつき。

では犠牲フライはどうだろう。ヤンキースとかレッドソックスのような強いチームではいいバッターは犠牲フライで打点をあげたり、ランナーを進めるチームバッティングをしたり、ボールをよく選んで四球で塁にでる。現役を2,3年前に引退したヤンキースのセンター、バーニーー・ウイリアムズなどはボール球に手をださず、きわどい球がくるとファウルでのがれ、よく四球を選んでいた。

トーリ監督のもとワールドシリーズを4年連続制したころのヤンキースの攻撃は本当に粘り強く、次のバッターにつなぐ野球をやっていた。これにホームランが効果的に飛び出すのだから、まさに最強の打線。また、強いチームには足の速い選手がいて塁を果敢に奪うから、機動力を使う攻撃が日本の専売特許ということではない。

でも、盗塁を重視するのは日米とも同じだが、H・Rはアメリカでは日本のように多用されない。なぜか?それはバッターが自由に打てないのを嫌がるから。そして、点をとる意識が違っているため。

例えば、ノーアウトで一塁にランナーがいるとする。H・Rが成功して1、3塁になる。日本の監督はこれで犠牲フライでも1点入ると考える。でも、彼らはそう考えない。普通にヒットを打って1、2塁となるのとどう違うの?次に犠牲フライがうまく打てるとは限らないし、ヒットを打てば2塁ランナーはホームに返ってくる。1点をとる確率はあまり差がない。

H・Rをしないもう一つの理由はこの戦法にリスクがあるから。今回のWBAのアメリカ戦で稲葉と小笠原のコンビが見事なH・Rを決めた。コントロールのいいオズワルドの球筋、配球をスコアラーがデータでつかんでおり、小笠原の打撃力を信じてこのサインを原監督は出した。

日本でこの戦法をよく使うのは、戦う相手が5チームしかなく年間を通して何度も対戦するからどのピッチャーがどういう配球をするかがよくわかっているから。とんでもない球を投げられてバッターが空振りし、一塁ランナーがセカンドで殺されるというリスクをあまり感じないのである。

ところが、アメリカではだいぶ事情が異なる。大リーグはアリーグ、ナリーグ各15チーム、全部で30チームある。交流戦で対戦する他リーグの5,6チームを入れると20チームくらいと戦う。各チームには先発投手が5人、すると、バッターはおおよそ100人の投手が投げる球を打つことになる。しかも、ひとりの投手と対戦するのは年に1~4回しかない。

こういう状況なので、投手の制球力や球種や配球がよくわからないし、かりにそういうデータを集めてもサンプル数が少なく、データベースとしての精度は落ちる。だから、選手の打ちたい気持ちを縛り、かつリスクの多いこの戦法は使われないのである。

大リーグのベースボールと日本の野球の違いにはちゃんとした理由があるから、どちらの方がいいとかは簡単には言えない。H・Rは決まればもうすごくスピーディで美しい。1、3塁という形はヒットでつなぐと連続して点が入る。日本人はこれに野球の美学を感じているのかもしれない。

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2009.03.24

祝 WBC 日本2連覇!今大会の特○選手は誰れ?

457日本代表は決勝で韓国を5-3で破り、WBC2連覇を達成した。拍手々!

8回表、岩村の犠牲フライで1点を追加し、3-1になったときはほぼ勝利を確信した。

ところが、韓国も簡単には引き下がらない。その裏には好投の岩隈から犠牲フライで1点を返した。

そして、9回裏、コントロールの定まらないダルビッシュから2アウトのあと三遊間のヒットで2塁ランナーを返し、同点に追いつく。

もう、すごい粘り。一気に流れが韓国に行くような感じで、サヨナラ負けを食らうのではないかと80%思った。が、ダルビッシュがなんとか踏ん張りピンチを切り抜けた。

延長では後攻めのほうが有利だから、イヤーな空気が流れる。でも、勝利の女神が日本に微笑んでくれた。内川、岩村がヒットで出て2アウト2、3塁。ここで願ってもないイチローの登場。抑えのエースにイチローは前の打席であわやライトスタンド入りかという2塁打を放っているから、期待が高まる。

ファウルでねばったあと、センター前にクリーンヒット。流石、イチロー!本当にすごい、これで2点勝ち越し。これが決勝点になって、日本は韓国を破った。9回裏韓国に連覇を阻止されるのでないかと不安でいっぱいだったから、その直後にイチローのヒットで勝負に決着がついたのが信じられなかった。その興奮が今も続いている。

今回、優勝は無理ではないかという予想がまったく外れた理由は二つある。まず、日本の投手力の良さを過少評価していたこと。松坂、岩隈、ダルビッシュの先発3本柱をはじめ13人の投手陣の力は参加国のなかではとびぬけて高かった。

もうひとつは、盗塁やヒットエンドランや犠打などをからめて点をとっていくつなぎの野球がこれほど機能するとは思わなかった。原監督が言うようにチームは試合をするごとに進化し、まったく世界に誇れる強いチームになった。真にすばらしい。

では、日本代表28人のなかで誰れのプレーがとくに印象深かったか思いつくままあげてみたい。
(投手)
松坂ー3勝をあげるところはやはり日本のエース、大リーガーの実力を見せつけた。

岩隈ーコントロールがとにかく抜群にいい。大リーグのスカウトの手帳には二重○がついたのではなかろうか。

杉内ー貴重な左腕、本当によく抑えた。すばらしい。

田中マー君ー甲子園の大舞台を経験しているので、ものおじしないところがいい。キューバやアメリカの主力バッターに堂々と向っていた。次回のWBCではダルビッシュとともに日本の中軸投手になることはまちがいない。

小松ー一回しか投げる機会がなかったが、いいピッチングをした。マー君同様、度胸がすわっている。

(野手)
村田―韓国戦で肉離れを起こし無念の途中離脱となったが、ホームラン2本をふくむ見事なバッティングは多くの野球ファンに感動を与えた。拍手々。この大会の活躍で一皮むけたから、これからは日本を代表する大砲になっていくだろう。怪我をはやく治し、セリーグでまた暴れてもらいたい。

内川ー昨年のセリーグ首位打者は今回の活躍で一気に全国区の選手になった。打つ方だけでなく、今日のレフトの守備は感動もの!

中島―守備がとにかく堅実、そして打席にはいっても簡単にアウトにならないで、いい場面で打ってくれる。プレーに華があり、これからは球界をリードする選手になっていくだろう。

青木ーイチローにかわる打のチームリーダー、皆が期待している場面で打ってくれるので本当に頼もしい。今日の試合で大きなライトフライを好捕されたが、あれがヒットになっていたら、楽に勝てたのだが。

小笠原ーやはりガッツはいいところで打ってくれる。だんだん調子を上げてきたのは流石。アメリカ戦で稲葉につづくヒットを連発したのが印象深い。

稲葉ーバットコントロールが本当にすばらしく、小笠原と同じくヒットがほしいところで打ってくれるのが嬉しい。カッコいいバッターである。

岩村ーアメリカに行ってから水を得た魚のように打ちだした。アメリカ、韓国戦は右に左にといいヒットを放った。選球眼がいいので出塁率が高く、次のバッターによくつないでくれる。堂々たる大リーガー。

城島ー投手をよくリードしたのが最大の功績。バッテイングも高い技術をもっているから、ここで一点というときに確実に犠牲フライをあげてくれる。マリナーズでまた活躍してほしい。

イチローー今日のイチローが本来の姿。センター前ヒットは一生の思い出になる。イチローがますます好きになった。

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2009.03.23

WBC  日韓決勝戦は楽しめるか?

456オマケ気分で楽しんだWBC準決勝戦は日本が9-4でアメリカを破った。

この勝ちで日本の投手力が全チームのなかで一番であることがあらためて証明された。

先発の松坂は前回のキューバ戦が
100の出来とすると今日は70くらい。よく知っている大リーガーが相手ということで力みがあったのかコントロールがいまひとつ。

でも、そこは日本のエース、失点は初回先頭打者のホームランと4番ライトのセンターオーバーのヒットによる2点にとどめた。松坂は球数制限100球のため5回で交代したのは不本意かもしれないが、機動力とパワーを兼ね備えたアメリカ打線をよく抑えた。

そのあと杉内、田中マー君、馬原とつなぎ最後は藤川でなくダルビッシュが締めくくった。最大のピンチは8回。2人続けて三塁の横を強烈なゴロで破られ、2点差に詰め寄られ、1アウト3塁。ここでまた点が入ると試合はどうなっていたかわからなかったが、馬原がふんばり代打のロンゴリアを三振、一番のロバーツをピッチャーゴロに仕留めた。見てて本当に力が入った。

今日の打撃陣はすばらしかった。とくに4回の5点がすごくいい流れ。先頭打者の稲葉がヒットででると、調子が上向きの小笠原がレフトにクリーンヒット。さらに福留がセカンドに強い当たりをとばし、エラーをさそう。これはエラーになったが、強襲ヒットでもよかった。これで1点。このあとも岩村、はじめて先発した川崎(左の写真)、中島が切れ目なくヒットを連ね4点が入った。

明日の決勝戦はまた韓国との対戦になった。できることならベネズエラとやりたかった。勝っても負けても後味の悪い韓国との試合はもういい!というのが率直なところ。韓国は投手力がいいし、打撃の集中力もあり、機動力もあるから日本が勝てる確率は50%。力は接近しているので、おそらく多くの野球ファンはそんな風に思っているのではないか。

となると、勝って連覇すれば嬉しいが、負けるとまた韓国の選手にマウンドに旗を立てられ、日本の選手および日本の国民は侮辱される。すると、たとえいい試合をして韓国が勝ったとしても、こんなひどい行為を平気でする韓国を祝福する気持にはなれない。試合を戦った選手たちはTVの前や球場で応援している人たち以上に腹が立ち、いい気分でWBCを終了することができない。アメリカやベネズエラなら、こんなマナーに反することはしないから、韓国との試合なんかやらなければよかったということになる。

WBCセリグコミッショナーは韓国チームに‘旗を立てるのは止めろ、そういう相手チームを侮辱するような行為はベースボールを通じて友好を深めるというWBCの目的に反している!’と言うべきである。また、WBCはオリンピックではないのだから選手が国旗をもって歩く必要もない。

本来なら韓国野球組織の幹部が‘そういうことはするな’と言うべきなのだが、見識のある野球人やジャーナリスト、文化人が韓国にはいないのだろう?!あれだけ毎年観客の集まりもしないアジア選手権をやって、交流しているのに、WBCではいつも々韓国の選手は品のない行為を繰り返す。そして嫌われる。もう、アジア選手権なんかやめてしまったほうがいい。

昨年、北京オリンピックで韓国は金メダルを獲得した。一方、星野の下手くそ采配と気迫と打撃力、機動力に劣った日本はメダルも取れず惨敗。誰もが韓国野球の強さに衝撃を受けた。大リーグで投げても通用すると思われる才能をもった若い二人の左腕には度肝を抜かれた。‘ええー、韓国にこんないい投手がいるの。まだ、21とか22歳だよ!’まさにサプライズ。

韓国の野球が高いレベルにあることは皆承知しているのだから、韓国の選手は相手のプライドを傷つけるようなことはしないほうがいい。そんなことをまだ続けるようでは、強さは認めてもらえても決してリスペクトされない。何のために試合の前、選手同士が帽子を交換するのかよく考えてもらいたい。

でも、こんなことは彼らには馬の耳に念仏だろう。勝てばまた同じことを200%やるだろうから、日本代表に是非とも勝ってもらいたい。選手、監督、コーチ、サポートスタッフが一体になっているから勝てそうな気がする。

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2009.03.22

与謝蕪村の‘夜色楼台図’が国宝に!

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文化審議会によって指定される国宝、重文の美術品をいつもチェックしているわけではないが、今年の作品リストは感慨深かった。で、その中から注目の作品を4点ピックアップした。
(国宝)
★与謝蕪村の‘夜色楼台図’:兵庫県、個人(上の画像、拙ブログ08/5/6
(重文)
★伊藤若冲の‘菜蟲譜’:栃木県佐野市立吉澤記念美(真ん中、部分)
★長次郎の‘ニ彩獅子’:楽美術館(下)
★光悦の‘赤楽茶碗 銘乙御前’:東京都、個人(08/10/8

蕪村の国宝の絵はこれで2点になった。もう一つは
★‘十宜図’:川端康成記念会(05/6/19

同じ文人画の池大雅の作品で国宝に指定されているのは3点ある。
★‘十便図’:川端康成記念会
★‘楼閣山水図図屏風’:東博(07/1/8
★‘山水人物図襖絵・山亭雅会図’:和歌山、遍照光院

1999年、栃木県葛生町の吉澤家で発見された若冲の‘菜蟲譜’(さいちゅうふ)が重文になったのは喜ばしい。3年前、京博ではじめて見たときは鮮やかな色で描かれた野菜や果物、虫、ユーモラスな蛙が目を楽しませてくれた(06/4/7)。若冲のほかの重文作品は次の3点。

★‘鹿苑寺大書院障壁画’:鹿苑寺(金閣寺)(07/5/16
★‘仙人掌群鶏図’(さぼてんぐんけいず):西福寺
★‘蓮池図’:西福寺

若冲には国宝の絵がないの?と思っておられる方がいるかもしれないが、ご心配なく。最高傑作‘動植綵絵’(06/3/2807/5/15)は天皇家のもの(御物)だったから国宝の指定を受けないだけで、狩野永徳の‘唐獅子図屏風’同様、まぎれもなく国宝。

長次郎作品で重文は今回指定された‘ニ彩獅子’のほかに3点ある。
★‘黒楽茶碗 銘大黒’:個人(06/10/31
★‘黒楽茶碗 銘俊寛’:三井記念美(08/7/9
★‘赤楽茶碗 銘無一物’:頴川美

人気の光悦は現在ある国宝(1点)・重文(4点)に名碗‘乙御前’が加わった。
★‘白楽茶碗 銘不二山’:国宝 サンリツ服部美
★‘黒楽茶碗 銘雨雲’:三井記念美
★‘黒楽茶碗 銘時雨’:名古屋市博(08/10/8
★‘赤楽茶碗 銘加賀’:相国寺(08/7/9
★‘赤楽茶碗 銘雨峰’:畠山記念美(06/1/11

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2009.03.21

好きな門 ベスト10!

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数日前の朝日新聞にアスパラクラブ会員に対して行ったアンケート‘好きな門は?’の調査結果が載っていた。回答総数1万266人が選んだベスト10は次のようになっている(複数回答)。

1位 日光東照宮陽明門   3780人
2位 浅草寺雷門       3029人
3位 首里城守礼門      2102人
4位 東大寺南大門      2084人
5位 東京大学赤門      1988人
6位 南禅寺三門       1776人
7位 知恩院三門       1125人
8位 東京デイズニーランド正門  810人
9位 桜田門           791人
10位 迎賓館赤坂離宮正門   780人 

日本一の門は納得の‘日光東照宮陽明門’(国宝、上の画像)。大変な数の彫刻で飾られた豪華な金色の門の前に立つと、西洋のバロック建築とか中国王朝の宮殿を見ているような気分になる。

これは天下をとった徳川家が権力の凄さを諸大名や民に見せつけるために巨費を投じてつくったもの。こういうときの意匠や彫刻は中国に昔からあるものと決まっている。お馴染みの唐獅子、龍、獏などをこれでもかというくらいデコラティブにとりつけるのは武家の好み。京にいる天皇や公家のテイストではない。

 欧米からやってくる観光客にとって、この陽明門はヨーロッパにあるバロック様式の聖堂を彷彿とさせるから日本人以上に感動するかもしれない。

浅草寺の雷門は人気が高く2位。これは意外だった。4位の東大寺南大門(下)は中に運慶、怪慶がつくった‘金剛力士像’(国宝)があるから、個人的には雷門よりはこちらのほうが印象深い。久しく東大寺の大仏さんや阿形像、吽形像を見てないから、会いたくなってきた。京都の南禅寺や知恩院の三門もお気に入り。

10位までのなかで沖縄の首里城はまだ見てない。北海道には何度も行きたいなと思うのに、南の方はどうも縁がない。沖縄サミットがあったとき、首里城がクローズアップされ、いつか訪問しようと思ってはいたが、それっきり。一度は見ておきたいところだから、なんとかしなくては、、

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2009.03.20

WBC 日本代表に感謝!決勝トーナメントはオマケ

450日本代表が韓国を破り、対戦成績を2勝2敗にしてくれたので、今回のWBCはここまでで十分。

22日からLAで行われる準決勝、決勝はもうオマケでいい。

たとえ優勝出来無くても、今日の時点で日本代表がみせてくれたすばらしいプレーに大きな拍手を送りたい。

野球を愛する者にとって‘侍ジャパン’は世界に誇れるチームである。松坂、岩隈、杉内の見事な投球で世界ランキング1位のキューバに2回も完封勝ちした上、北京オリンピックではフラストレーションがたまるばっかりだった対韓国戦でもきっちりリベンジし、1位通過を果たしてくれた。野球の醍醐味や楽しさをこれだけ味わせてくれたのは前回大会以上といっても過言ではない。

日本人は野球が大好きだから、日本代表にもいろんなことを期待する。‘是非とも2連覇してくれ!’‘イチローがチャンスにヒットを打ち、松坂もいいピッチングをし、チームの勝利に貢献してくれるだろう’、‘日本の若きエース、ダルビッシュが大リーグの強打者を抑えるところを見てみたい’などなど。

いまのところ、その願いが全部叶えられているわけではないが、満足の総量のほうが期待に応えてくれないもどかしさを大きく上回っている。また、想像もしていなかったキューバ戦での完璧な勝利が日本代表を応援している多くの国民やアメリカに住んでいる人たちの満足度を大きく引き上げていることは間違いない。日本の投手の実力が世界標準のさらに上をいっていることが証明された。これがわかっただけでもWBCを見た甲斐がある。

守りの良さは投手力だけではない。日本の捕手、内外野の守備力は本当にレベルが高い。今日の韓国戦でも、ライトのイチローやセンターの青木は難しい打球を好捕した。

打撃陣は大砲となる選手が少ないから、投手力に比べると物足りないことは否めない。でも、キューーバ戦でわかったように国際大会では、いくら強打のバッターでも松坂、岩隈のような高い投球術をもっている投手と対戦すると簡単には打てない。

今日の打のヒーローは2回に同点ホームランをレフトに放った内川と8回、セーフティバントで一塁にでた青木に続きライトにクリーンヒットを打った稲葉、そして球に食らいついてセカンドのすぐ上をぬける勝ち越し打を放った小笠原(左の写真)。

内川のホームランによる1点は想定外だが、ほかの得点はつなぐ野球でとったもの。四球や機動力をからめ、シングルヒットを重ね1点ずつとっていく日本の攻撃は相手チームには嫌であろう。大リーグでは4年前ホワイトソックスがスモールベースボールでワールドチャンピオンになった。でも、この戦法がうまく機能するためには選手同士のコミュニケーションが良く、選手には状況に応じたプレーが求められるから、なかなか難しい。

これを完成させる可能性をもっているのはチームの勝利を第一に考える日本の野球と韓国。もし、‘侍ジャパン’がLAでもまたいい試合をすると、日本野球のチームづくり、練習方法、投手の育成の仕方に関心が集まるだろう。日本に負けたキューバでは、カストロ前議長が早速‘日本の練習方法を学べ’と活を入れている。

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2009.03.19

WBC 日本 準決勝進出!

449WBC2次ラウンドで日本は再度キューバを破り、準決勝進出を決めた。

昨日、韓国に完敗したから、序盤は重苦しい空気が流れていた。

イチローのバットは2回の打席でも火をふかず、イチローがこんな調子では負けるのではないかと気が気ではなかった。

岩隈は前回の松坂同様、強打のキューバ打線を完璧に抑え込んだ。この好投が日本に勝利をもたらした。本当にすばらしい!6イニング投げて、先頭打者をことごとく打ちとるので、安心して見てられる。ヒットは何本か打たれたが、いずれも2アウトをとった後。ピンチは1回しかなく、それも次のバッターをフォークで三振にとり0点に抑えた。

4回表の2点はラッキーだった。1アウトで打撃好調の青木がヒットで出た後、昨日は2本いい当たりをしていた稲葉がライトオーバーの2塁打を放つ。これで待望の先取点が入ると思っていたら、三塁の高代コーチは青木を止めてしまった。ううーん、ホームへつっこんでもセーフだったように見えたが。嫌な予感がしてきた。

果たして、続く村田は浅いセンターフライで2アウト。粘った小笠原もセンターフライ。ああー、やっぱり点が入らないかと思った瞬間、センターがいったんグラブに入ったボールを落とした。もう、嬉しくて、手を何度もパチパチたたいた。野球の応援でこれほど興奮したのは3年前、韓国との戦いで代打の福留が2ランホームランを打ったとき以来。

5回にもまた青木のセンター前ヒットで1点追加。そして、7回には13打席ぶりにイチローがヒットを打った。前の打席、四球で出た岩村をバントで送ったが、小フライを三塁手にダイビングキャッチされ、危うく岩村もアウトになるところだった。体がのけぞるような球をバントをすることはないのに、イチローはだいぶ追い込まれている感じでプレーにまったく余裕がない。これを見て、イチローがこんなに元気がないと今日は最悪の事態になるのではと直感的に思った。

でも、勝利の女神は岩隈の見事な投球に感動して日本に味方してくれ、イチローにもヒットを打たせてくれた。ランナー1、3塁となり、発熱のため休んでいた2番中島はきっちり犠牲フライをレフトにあげ、岩村をホームに返した。これで4点目。中島は本当にいい仕事をする。プレッシャーのかかる場面で、日頃の練習により会得したフライを打つ技術を当たり前にようにみせるのだからたいしたもの。満足げな笑顔がとてもいい。

イチローの復活をみせつける一打が9回に出た。目の覚めるようなライナーがセンターの頭を越えていく。そして、このイチローの三塁打をまたしても青木のヒットで得点にする。青木はこれで5打数4安打2打点。まったく頼りになる三番バッターである。

さあー、明日は4度目の韓国戦。今度は日本が勝って1位通過で23日のアメリカとの準決勝にのぞみたい。やってくれるだろう。がんばれ、日本代表!

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2009.03.18

美術に魅せられて! 出品目録は美術鑑賞の必須アイテム

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今日は展覧会を鑑賞するときに励行しているルーティンワークのことを述べてみたい。館内に入る時、手に必ず持っているのはチラシ、単眼鏡、出品目録(2枚)、鉛筆。

宣伝用に作られるチラシはその展覧会の目玉の作品が載っているので、欠かせない。これをちょくちょく見ながら、見逃しがないように部屋から部屋を移動していく。チラシにある作品を首尾よく全部見終われればいいが、どうしても見当たらないことがある。美術館のなかを行ったり来たりするのは結構疲れるから、そういうときは早めに美術館の人に聞くことにしている。

単眼鏡は日本画の企画展では必需品。西洋画を見るときはあまり使わないが、細部を見たい時にはこれが役に立つ。

入口のところにおいてある出品目録は必ず2枚とる。絵画でもやきものでも彫刻でも目の前にある美術品をみたときは、このリストに速記録のように黒鉛筆で印象を書き込んでいく。そして、家に帰って赤のボールペンで後から読めるよう清書する。で、清書用にもう一枚余分にとっているのである。

上の‘20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代’(Bunkamaura)の出品リストはその一例。絵画を見たとき書き込んでいるのは感銘を受けた要素について。つまり‘形’、‘構図’、‘構成’、‘マチエール’、‘カンバスの大きさ’のうちどれだったかをメモしている。例えば、シャガールの‘バイオリン弾き’では‘構図’と‘赤の輝き’に魅せられ、‘祝祭日’では‘白い壁’と‘ラビの頭に人が乗っている’ことに惹きつけられたといった具合。

また、山水画の場合、小さく描かれている人物を‘橋の上にニ人’とか‘中景の坂道に一人’とメモったり、‘飛翔する雁が4羽’と書き込んだりする。

西洋画、日本画どちらでも実際に見た色の明るさや鮮やかさが図録で再現されることが少ないから、色については‘チラシの色より鮮やか’というように正確に書くことにしている。このように足がとまった絵については、それが何であるか、感じたままどんどん書いていく。字が乱れすぎて後で何を書いたかわからなくなることもある。

この作業をルーティンにしているので、作品の題名と所蔵する美術館は見るが解説はほとんど読まない。だから、鑑賞疲れはあまりない。展覧会に行くと疲れるという人が多いが、これは解説文をじっくり読み、絵にまつわるお話を頭のなかにインプットすることで脳のエネルギーを多く消費しているから。頭をからっぽにして、絵だけを見ていると疲れない。お試しあれ!

絵全体の印象や描かれている対象、その形、また色について書いていると、後から展覧会をふりかえったとき、一つ々の絵が印象深く蘇ってくる。この方法は名画から受けた感動を体のなかに長くとじこめておくには効果的。だから、展覧会の数が多いとシンドクなる清書にも、こまめに手を動かしている。

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2009.03.17

美術に魅せられて! 子供たちの美術館体験学習

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現在、定期的に通っている美術館は上野の東博。ここで、時々中学生や高校生の団体にでくわすことがある。地方の学校が東京へ修学旅行でやってきて、ここが訪問場所に入っているのか、東京や関東にある学校の美術学習の一環なのか、直接質問したことはないが、どちらかであろう。

彼らの行動をみてると先生と一緒に回っている様子はなく、自分たちで単独あるいは友達数人と作品を鑑賞している。そのなかには解説の文言をノートに書き写している子もいる。不思議なことに学芸員が生徒たちに絵の説明をしたり、先生がグループをひきつれて絵の前でしゃべっているところにお目にかかったことがない。館内で一般の人を対象に学芸員が作品の解説をしているのは頻繁にみかけるのに、これはどうしたことか。

引率の先生は美術館にレクチャーの依頼をしないのだろうか?修学旅行なら自由に館内を回らせるのが普通だと思うが、美術の勉強で東博に来るときは希望者がいれば学芸員に話をしてもらうオプションがあってもいいはずだが。ごく稀に先生が名画について熱弁をふるっていることがあるが、普段は見かけない。だぶん集合場所あたりで待っているのであろう。

東博のすぐ近くにある西洋美へは特別展以外はあまり足を運ばないので断定的なことは言えないが、ここの常設展示の部屋でも子供たちは誰にもアシストされることなく、自由に鑑賞しているのだろう。

海外の美術館では先生がよく学芸員のような感じで説明している。3年前の春、ミラノのブレラ美術館を訪問したときはちょうどイタリアの学校の修学旅行のシーズンにぶつかっていたので、館内には高校生が沢山いた。子供たちを引率する男の先生が有名な絵の前では時間をとりレクチャーしている。なかなか堂に入った説明で名所観光のガイドのようだった。日本の美術館のなかとは対照的な光景。

昨年訪問したロンドンのナショナルギャラリー(上の画像)では、これよりもっと感心する先生を見た。先生が丁寧に説明していた絵はクリヴェリの‘聖エミディウスを伴う受胎告知’。これは‘ツバメの聖母’(拙ブログ08/2/3)の隣に飾ってる大きな絵。話を聞いているのは小学校低学年の男の子と女の子。上品な制服を着ているのでパブリックではなく裕福な家の子供たちが通う私立の小学校にちがいない。

先生が熱く語っているのでしばらく見ていたら、一人の男の子が質問をした。すると、先生は‘good question!’とその子を褒め、わかりやすく答えていた。このやりとりには200%参りました!この子の家の壁にはいい肖像画が掛けてあり、日頃から絵画に親しんでいるのだろうなと勝手に想像した。そういう子供たちに先生が学芸員のような顔をしてしっかり名画の解説をしているのである。

イギリスの先生が西洋画のど真ん中にある宗教画を説明しているのだから、東博でも、中学生を前に先生が仏画や山水画の話をしてもおかしくはない。そんな先生がもっといてくれれば、生徒は美術に興味を持つだけでなく、日本の歴史や仏教についても関心が広がっていくのではないだろうか。

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2009.03.16

WBC 日本 キューバに快勝!

446_2WBC第2ラウンドの初戦で日本代表はキューバに快勝した。

6-0の完璧な勝ちっぷりに気分がとてもいい。試合内容があまりによすぎるので、これはひょっとするとずっと勝ち続けるかも?と50%くらい思うようになった。

これだけ高いレベルの投手陣をもってすれば、強力打線を誇るキューバ、プエルトリコに対し最少失点に抑え、勝利をぐっとひきよせられるかもしれない。

それにしても今日の松坂はすばらしい投球だった。力みがなく、変化球が思うように決まる。四球が無いのが調子がいい証拠で、6回を投げて三振を8つ奪い、0点に抑えた。いかにも打ちそうな強打者の3番セペタ、5番グリエルをうまく打ちとるのだから、流石頼りになるエースである。そのあとの3イニングも岩隈、馬原、藤川がぴしゃっと完封リレー。

スポーツ新聞によると、日本と韓国の投手陣が一番いいとの評価だが、キューバの投手をみると、これが真実味をおびてくる。C,D組では、オランダの若い投手が頑張っているらしいが、米国はピービーがプエルトリコ打線に無残にも打ちこまれるなど、投はピリッとしない。

投げる方にくらべ、打つ方は心配だったが、今日の試合は日本の持ち味であるつなぐ野球が200%機能し、理想的な点のとり方だった。3回の3点で勝てるような気がした。城島が先陣を切り、当たりの止まっていた岩村が綺麗なレフトへの流し打ちで続く。イチローの三塁送りバントは失敗し、城島は3塁に進めなかったが、中島にかわって先発出場した片岡がヒットを放ち、満塁。

3番の青木のときパスボールでまず1点、そして青木のしぶといライト前ヒットでさらに1点。村田も今度はきっちりレストへ犠牲フライをあげ3点目が入った。そつなく3点をとった感じ。こういう点の取り方をすると流れがこちらにやってくる。続く4回、5回にも1点ずつとり、9回も先頭の代打川崎がセンター前ヒットででると、青木がバントで2塁に進め、主砲村田のショートの横をゴロでぬけるクリーンヒットで川崎がホームに帰った。

打撃陣の○は2打点の村田と2本のヒットを放った岩村。岩村が復調してくれて嬉しい。が、期待の福留は× バットから快音が聞かれない。どうみても投手の球筋を見過ぎ。中国戦からずっとこのスタイルを続けているが、もっと積極的に振らなければ。あのカッコいい構えから、すばらしいホームランをいつかライトスタンドに打ち込んでくれると信じているので、ちょっともどかしい。

本来なら5番を打たなくてはいけないバッターが‘調子がよくないので、7番でいいです’なんて安易に考えていたら、大リーガー、福留の人気は一気に下がる。5人の大リーガーのなかで今、一番存在感がないのが福留。WBCでガンガン打っておかないと、大会が終わってシカゴカブスへ戻ったとき、代打でしか使ってもらえないだろう。福留には次の韓国戦では13億円の年棒をもらっている大リーガーのプライドをみせてもいらいたい。

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2009.03.15

美術に魅せられて! 美術館の中でしゃべるのは悪いこと?

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今日は美術館で作品をみるときの態度というかマナーについて、日頃思っていることを述べてみたい。入館料を払って見ているのだから、まわりの人に迷惑をかけなければ自分のスタイルで見るのが一番。

よく、友達同士とか夫婦が目の前の絵についてヒソヒソ話をしているのをみかけることがある。こんなとき、いつも‘遠慮することないのに、もっと普通にしゃべればいいのに!’と思う。部屋の中が静かな雰囲気だから、声をひそめるのがマナーだと心得ているのかもしれない。

展覧会を楽しんでいるとき、まわりの人たちのおしゃべりが気に障ることはない。美術館の人がよく‘もう少し静かにしてください’と注意しているが、心のなかでは‘隣りにいる者が何も気にしてないのに、なぜいい気分で絵の感想を述べ合っているところに水を差すの? 絵とは関係ないことをキャッキャッしゃべっているわけではないだろう!’と美術館側に不快感をいだいている。

日本の美術館では、美術品の鑑賞は声を出さないで見るのがマナーといったおかしな常識がはばをきかせている。絵に感動して、その抑えられない気持ちを声にしてどこが悪いの?その人をみて、‘純すぎない?そんなに大げさにしゃべらなくても、こっちはもっと静かにこの絵の前にいたいんだ’と嫌な気分になる人は確かにいるだろう。でも、そういう人が大半だとは思わない。

以前、練馬区美で絵を見ていたとき、幼稚園児が入ってきた。彼らの反応がおもしろい、その絵を見て‘すげぇー、すげぇー’を連発し、隣の部屋でもまた‘すげぇー、すげぇー’。引率のお姉さんがその度に‘シー、静かに!’とこちらに申し訳なさそうに頭を下げている。だから、‘僕ちゃんはこの絵がすごいんだ、よかったね’と笑って声をかけてあげた。

日本の子供たちは大人から‘静かに!’と注意されているのに、昨年訪問したロンドンのテート・モダンにいた小学生は一般客にお構いなしに床にどかっと座ってミロやマグリットなどの絵を思い思いに描き写していた。先生や美術館員は子供たちが友達どうしでワイワイしゃべりながら手を動かしているのをみて何も言わない。

大人たちも‘子供たちが絵の勉強をしにやって来たんだ’と気にする様子もなく、近・現代絵画やオブジを熱心に見て回っている。こういう光景が欧米の美術館では当たり前なのである。陽気なイタリア人もいればアフリカから来た人もショートパンツにスニーカーのアメリカの老人もいるし、また時には小さい子たちが絵の勉強で部屋の大部分を占領することもある。公的な美術館がシーンと静まりかえった空間だなんて誰も思ってない。

テート・モダンよりもっと大勢の人がいるルーヴルでは、世界中からやってきた観光客や美術好きの人で館内はごった返している(上の画像)。ここではカメラのシャッターをきる音はするし、‘モナ・リザ’の部屋では‘見たよ!やっと見たよ!これがあのモナ・リザなんだ’、‘やっぱりすごいわね、微笑んでいたワ’などなど感動の会話が飛び交っている。

絵には思わず声を上げたくなるほど真に迫る絵もあるし、言葉を失うほど静謐な絵もある。皆がびっくりするほどの大声をあげて感動している人がいてもいいではないか。それで自分の絵に対する感じ方が増幅されることもあるのだから。

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2009.03.14

ルーヴル美術館展  プッサン ロラン ハルス

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ルーヴル美術館には膨大な数の美術品があるから、見たい名品を心ゆくまで楽しむためには相当の時間を要する。まさにルーヴルとのお付き合いは長期戦。昨年の訪問で重点鑑賞画家にしていたのはラ・トゥールやニコラ・プッサンやクロード・ロラン(拙ブログ08/3/31)。

日本でプッサンやロランの名作を見る機会はこれまで無かった。だから、作品の前では食い入るようにして見た。今回、その二人の絵が2点やってきたが、どちらも館の図録に掲載されているのだから嬉しくなる。まったくすばらしい!

★プッサンの‘川から救われるモーセ’(上の画像)
★ロランの‘クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス’(真ん中)
★ハルスの‘リュートを持つ道化師’(下)

プッサンは同じテーマで3つ描いており、これは1638年の最初の作で、10年後に描かれたものもルーヴルにある。もう一点はそれから3年後の絵でロンドンのナショナルギャラリーが所蔵している。上の作品はあとの2点にくらべて画面のなかで川が占める割合が多く、幼児モーセが流されてきたのだなということが容易にイメージできる。

中景に3人が乗った舟や川岸に立つ男たちが描かれ、水面には舟の影や後ろにみえるピラミッドの三角形が映っている。プッサンの歴史風景画の特徴は空間の広がり。はるか遠くまで人物や木々、山々が克明に描かれている。

ルーブルやメトロポリタンの回顧展でプッサンの名画に沢山出会えたのは一生の思い出。絵そのものを200%楽しんだだけでなく、絵を通じて古代ローマに起こった事件や聖書やギリシャ神話にでてくる話により近づけたことも大きな収穫。

大きな画面には山々や古代の建物を背景に鮮やかな赤や青、黄色、紫の衣装をまとった古代彫刻のよう人物が大勢描かれているので、目の前で何が起こっているのかいろいろ想像をふくらませることができる。これがプッサンの絵の魅力。

ロランの絵は昨年紹介したもの。一緒にみた‘港ー靄の効果’や‘クレオパトラのタルソス上陸’同様、いつまでも絵の前にいたくなる。船が入ってきた港の海面にゆらゆらと動く白い波を見ていると、海のすぐ側にいるような錯覚にとらわれる。描かれている場面がギリシャ神話だろうが、クレオパトラの上陸だろうが、それは何でもいい。中央の船の後ろからのびてくる美しい金色の光が心をとらえて離さない。

ハルスの笑う道化師と‘ジプシー女’はインパクトのある絵なので一度見たら忘れられない。道化師の笑ってる顔とリュートを弾く手は丁寧に描かれているのに対し、衣装の赤の飾りはタッチが粗くなっている。近代の肖像画をみるようなこのすばらしい絵が日本で見られるのだから、幸運なめぐり合わせである。

3回にわたり9点を紹介したが、このほかに足がとまったのはヴァン・ダイクの‘プファルツ選帝侯の息子たち’(08/3/29)、ライスダールの‘嵐’、カラッチの‘聖ステパノの石打ち’、ヨルダーンスの‘4人の福音書記者’。

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2009.03.13

ルーヴル美術館展  ウテワール ルーベンス ベラスケス

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昨年のルーヴル美めぐりでは、事前につくった必見リストに載っている作品を一点々チェックしながら広い館内を精一杯まわった。だから、リスト以外の絵についてはよほどインパクトがある絵でないかぎり、見たとしてもあまり記憶に残ってない。そのなかに日本に帰ってからその存在を知り、惜しいことをしたなと強く思う絵がある。2回目はその絵とプラス2点。

★ウテワールの‘アンドロメダを救うペルセウス’(上の画像)
★ルーベンスの‘ユノに欺かれるイクシオン’(真ん中)
★ベラスケスの‘王女マルガリータの肖像’(下)

ウテワール(1556~1638)の絵を知ったのは、‘ヴィーナス100選’を特集した昨年4月の‘芸術新潮’。ここに驚愕の絵、‘アンドロメダを救うペルセウス’が載っていた。ウテワールはユトレヒト生まれのマニエリストだから、これはオランダ絵画のコーナーに展示れていたはずだが、残念ながらまったく覚えてない。

レンブラントやフェルメールの絵ばかりに神経が集中し、ほかはどんどんパスしていったから、記憶にとどまらなかったのだろう。次回は赤丸つきでリカバリーしようと思っていたら、嬉しいことに作品のほうからわざわざ日本まで追っかけてきてくれた。

まず、びっくりしたのが絵の大きさ。縦1.8m、横1.5mの大作。そして、構成がおもしろい。裸婦図と風景画と静物画の3つを一つの画面におさめたような感じ。視線が釘付けになるのが画面左で右手を上にあげ体を少し捻るポーズをしたアンドロメダ。白い肌に浮かびあがる乳房のまわりの青い血管が心をざわざわさせる。本の図版では青い血管までは確認できないから、200%KOされた。

大きく描かれたアンドロメダの足下には貝殻が沢山おかれており、そのなかにまじってニ体の骸骨がみえる。色で印象深いのは貝殻の内側や海の怪物の皮膚、ペルセウスのまたがる天馬の朱色。アングルなども同じ題材の絵を描いているが、このウテワールの絵に最も惹きつけられる。

ルーヴルには‘マリー・ド・メディシスの生涯’などルーベンス(1577~1640)の有名な絵が沢山ある。それらは過去よく見たので昨年はそれほど熱くならずに見て回ったが、真ん中の絵は飾ってなかった。おそらく普段は展示してないのだろう。はじめてお目にかかる絵だが、ルーベンスらしい量感のある人物描写、裸婦の肌の色に見惚れていた。

左にいる男がイクシオン。ケンタウロスのお父っちゃんで女好きの乱暴者。義父を殺したがユピテルによって罪を清められたというのに、この男はユピテルの妻ユノにまでちょっかいをだす。そこで、ユピテルは雲をユノの姿に変えて、イクシオンのもとへ送り込む。その偽のユノの隣に立っているのが本物のユノで聖獣の孔雀を従えている。二人の顔、姿態はまったく一緒。偽のユノのお腹から生まれてくるのがケンタウロス。

下はベラスケス(1599~1660)のお馴染みの王女マルガリータちゃん。本当に可愛らしい女の子の絵である。これはマルガリータが3歳のころで、ウィーンの美術史美にある‘バラ色のドレスの王女マルガリータ’(拙ブログ08/8/5)によく似ている。白の生地と黒模様のコントラストがすごく印象的。マネはこの色合いに魅せられたにちがいない。

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2009.03.12

ルーヴル美術館展  フェルメール ラ・トゥール ル・ナン兄弟

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上野の国立西洋美で2/28からはじまった‘ルーヴル美術館展ー17世紀ヨーロッパ絵画ー’は6/14まで続くロングラン興行。会期の長さにも驚くが、展示される作品(71点)はそれ以上のサプライズ。よくぞこれだけの名画を揃えてくれたものだと感心する。西洋美に拍手々。一回では書き足りないので、三回アップすることにした。

この展覧会を企画した学芸員には申し訳ないが、3つの切り口、‘黄金の世紀とその影’、‘大航海と科学革命’、‘聖人の世紀における古代文明の遺産’にはあまり関心が無い。だから、取り上げる作品と順番は昨年ルーヴル美術館をまわったときと同じように感動の大きさをもとにしている。まずはお目当ての3点から。

★フェルメールの‘レースを編む女’(上の画像)
★ラ・トゥールの‘大工ヨセフ’(真ん中)
★ル・ナン兄弟の‘農民の家族’(下)

‘レースを編む女’は美術本に載っているイメージで本物と対面すると面食らう。おそらく皆‘ええー、こんなに小さい絵なの!?’という感想をもつのではなかろうか。縦24㎝、横21㎝しかない。でも、小さき絵なのに絵のなかにぐぐっと惹きこまれる。女がレース編みにものすごく集中している感じがよくでているからかもしれない。

右から入ってくる光で女の顔や後ろの壁がやわらかく表現されているのに対し、手前の机におかれたクッションからでている白と赤の糸は異様に粘っこい色をしている。‘信仰の寓意’(メトロポリタン美、拙ブログ08/5/8)では、石の下敷きになり頭や口から血を流している蛇が描かれているが、この鮮烈な赤の糸は蛇の血を連想させる。

‘大工ヨセフ’(08/3/30)と再会できたのが嬉しくてたまらない。蝋燭の炎がキリストの顔とヨセフの額を明るく照らすところを再度夢中になってみた。‘ダイヤのエースを持ついかさま師’(05/3/14)も日本にやってきたから、これでルーヴルが所蔵するラ・トゥール作品7点のなかで人気の高い3点のうち2点が公開されたことになる。すばらしい!残るは‘灯火の前のマグダラのマリア’。気前のいいルーヴルのことだから、いつか展示してくれるだろう。

下のル・ナン兄弟作、‘農民の家族’もぐっとくる絵。昨年の感想記では紹介できなかったが、左に座っている婦人の心を打つまなざしが目に焼き付いている。左奥に目をやると、暗闇のなか暖炉の光がまわりにいる二人の男の子と一人の少女を照らしている。このあたりはラ・トゥールの描き方と似ている。

画面全体の暗い色調は決して楽ではない農民の日常生活をリアルに伝えているが、床に犬や猫がいたり、男の子が立って笛を吹いているのをみるとどこかほっとする。農民風俗画の傑作ではなかろうか。

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2009.03.11

美術に魅せられて! 展覧会の入館料と図録価格

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今日は一度取り上げようと思っていた展覧会の入館料や図録の価格について。特別展や平常展をみるため出かける美術館は東京だけでなく神奈川、埼玉、茨城、千葉、静岡まで足をのばしているので、どこの美術館が安くて、どこが高いかはおおよそわかっている。よく出かける美術館が開催する企画展の料金は以下の通り。

1600円:MOA
1500円:東博、国立西洋美、東京都美、森美、国立新美、川村記念美
1400円:Bunkamura、横浜美
1300円:サントリー美、東芸大美、世田谷美
1000円:出光美、江戸東博、損保ジャパン美、日本民藝館、戸栗美、大丸東京
1000円:東京都庭園美、横浜そごう
830円:茨城県近美
800円:日本橋高島屋、三越、大倉集古館、三井記念美、山種美、静嘉堂文庫
700円:五島美
600円:茨城県陶芸美、茨城県五浦美
500円:練馬区美
300円:松濤美
無料  :三の丸尚蔵館

熱海にあるMOAの入館料は特別展のほかに平常展や館のまわりの庭園などの観覧も込みの値段だから、はじめて行ったときは高い感じはしないが、2回目からは割高感が強くなる。で、館側はそのあたりを考慮して、熱海駅とかに200円引きになるチラシをおいている。

先日訪問した川村記念美にはあまりいい印象を持ってない。とにかく1500円は高すぎる!ここも平常展と特別展がセットになった値段。MOAの場合は平常展示でも宗達・光琳など琳派の名品や仁清の国宝の茶壷などがあるから、‘こんな名品をみたのだから1600円でもいいか’という気持ちになる。

だが、川村にある西洋画はロスコ、ステラ、ニューマンを除けば一回みたらもう十分というクラスの作品ばかり。だから、今回のロスコ展のような特別のときでないかぎり行かないことにしている。

都内では上野と六本木にある美術館が1500円と一番高い。これだけ経済環境が悪化してくると、1500円も払う展覧会にどれも顔を出すことはできないだろう。西洋美の‘ルーヴル美展’を見たら、国立新美のルーヴル美蔵はやめておこうかということになる。森美や国立新美は内容の割には高い企画展が3回のうち2回あるというイメージが強いから、これから厳しいのではないかと思う。

1400円をとるBunkamuraも高い美術館というイメージはぬぐえない。ここはぐるっとパスも使えない。それでも、これからもここを訪れる計画にしているのは展示作品に期待が持てるから。サントリー美の1300円は理想的な料金。企画力があり、いい作品を見せてくれるので好感度はとても高い。

1000円より下の料金を設定している美術館で、高いなという気を起こさせるところはあまりない。しいてあげれば、日本民藝館と戸栗美。1000円はとりすぎ、800円が適正だろう。気前がいいのが出光美と三井記念美。ここはぐるっとパス券で企画展が無料になる。

デパート系は800円~1000円。出光美のように連続ヒットというわけにはいかないが、日本橋高島屋の‘上村家三代展’のように800円で名品を沢山みせてくれるし、大丸東京でもすばらしい黄金マスクが展示された。選んで出かけるとお得感が味わえるところがいい。

先般紹介した‘安田靫彦展’(茨城県近美)の料金は830円。そして、茨城県陶芸館や五浦美は600円しかとらない。横浜からの高速料金はそれなりにかかるが、この3つの美術館は展示内容がいいだけに入館するときはいつも有難い気持になる。また、嬉しいことに安田靫彦展の図録(上の画像)は1500円で手に入った。東京の展覧会では図録は2000円以上するのが当たり前だから、この安さに感心した。

数多ある美術館のなかで最もお得な美術館は渋谷にある松濤美。区からの補助があるのだろうが300円と格安。練馬区美も500円で高山辰雄展や石田徹也展をみせてくれるのだから、ますます好きになる。

最後に無料の美術館のことを。それは三の丸尚蔵館。一度に展示される作品は少ないが、質の高さは折り紙つき。長らく待っている日本画の傑作との対面を夢見て、展示スケジュールを定期的にチェックしている。

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2009.03.10

WBC 日本代表 ○選手 vs ×選手は誰れ?

434WBC一次ラウンドは韓国1位、日本2位で終了した。

日本は韓国との最初の戦いで7回コールドと大勝したから、昨日の対戦も勝つだろうと思っていた。大リーガーが5人いる日本代表が韓国に負けるはずがないと。

でも、韓国の投手陣が頑張り、1点差を最後まで守りきった。イチローは負けたことに‘腹が立つ!’と言っていたが、見てるこちらも同じ気持ち。

昨年8/26の拙ブログに‘WBCの連覇はない’と書いたが、昨日の試合を見てその思いが強くなった。で、ちょっと辛口になるが各選手のプレーぶりを忌憚なく述べてみたい。

まず、○の選手から。投手陣はよく仕上がっている。松坂、ダルビッシュ、岩隈の先発3本柱は甲乙つけがたいほど調子がいい。松坂は韓国戦で4番にホームランを打たれたが2回以降は流石、レッドソックスのエースというピッチングで0点におさえた。中国戦と昨日の試合に1回投げたダルビッシュはストレートが150kmでるし、変化球のコントロールもすばらしかった。昨日の岩隈は4回先頭打者を歩かせたのはいただけなかったが、ほかの回は○。

投手陣の気がかりは相手の主軸バッターに慎重になりすぎて余計な四球が多いこと。もっと得意球を信じて攻めたほうがいい。どうも警戒しすぎ。二次ラウンドで対戦するキューバ打線に逃げまくっていたら、バンバン打たれることは目にみえている。受け身にならず、度胸よく気迫をこめて投げることが一番の防御策。とくにダルビッシュには思いっきり投げてもらいたい。

その点、韓国のピッチャーは見上げたもの。昨日の二番手以降のピッチャーはストレートを‘打ってみろ’と言わんばかりに真っ向から投げていた。ベテランの稲葉、小笠原は気おくれして、ボールは前にとびやしない。小笠原なんか三球三振、最後はバットをへし折られて一塁ゴロ。何やってんの!?という感じ。

バッターのほうはだいぶ不安が残る。○がつくのはイチローは横において、中島、青木、村田、城島くらい。中島は本当にいい選手になった。3年前は川崎がブレイクしたが、今は中島が一番輝やいている。打つことだけでなく、ショートの守備も堅実。村田は2本のホームランで男をあげた。真に‘男、村田’。構えに風格がでてきた。とにかく、自信をもって力まずバットを振ること。これさえ心がければ4番は立派につとまる。

大リーガー、城島がすごく張り切っている。久し振りに強打、城島が戻ってきた。これが本来の姿。投手のリードに神経を使うから、8番で打たされているのだろうが、調子がいいのだから5、6番で打たせるべき。イチローはまったく心配ない。アメリカに行ったら、水を得た魚のように打ちまくるのではないか。

打の×は大リーガー、福留と岩村。福留は本来なら5番を打たないといけない選手。合宿での調子などから7番になっているのだろうが、5番はやはり小笠原や稲葉より福留だろう。ベテランより今が働き盛りの福留をクリーンナップにしてプライドをくすぶるほうがいいと思う。それだけの技量をもっている選手なのだから。青木、村田、福留のほうが絶対機能する。

われらが岩村はまったく打てない。バットをこねくりまわし、きれいなレフト方向への流し打ちができない。昨日の最後の打席は阿部に代打を送ったほうがよかった。それほど岩村は重症。どうしたの? ワールドシリーズが終わったあと、祝宴やメディアへの出演が多すぎて、バッティングの勘が戻ってない?早く頭を切りかえないと、昨年の城島みたいに無残なことになるよ! 大リーグは一年々が勝負、慢心は禁物。わかっている?岩村。

ピッチングスタッフはいいのだから、連覇の鍵を握るのは打撃力。打撃のいい阿部の出場機会が多くなること、そして福留、岩村の復調を強く望みたい。

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2009.03.09

大丸東京のミロ展

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バルセロナにあるミロ美術館(拙ブログ05/7/9)が所蔵する絵画、彫刻が現在、大丸東京で展示されている(3/5~3/22)。

この美術館の作品は過去2回くらい見たような気がする。最初が1988年、日本橋三越。2回目はよく覚えてない。今回のミロ展がミロ美の作品と知って、果たしてどうかな?という気分が50%あった。

作品70点のなかにとびっきりいいのがあるわけではないから、満足度はアベレージ。普通の作品でも、ミロ大好き人間にはミロワールドのバリエーションが広がるのは嬉しいこと。だから、楽しいひと時だったことは間違いない。

が、現地に展示してある作品を知っている美術愛好家として意見を述べるなら、‘ミロ美はいつもいつも有名な作品は持ってきてくれないな!’というのが率直な感想。手元にある図録に載っているような絵を一点でも展示してほしかったのだが。ここを訪問された方なら、たぶん同じことを思われるはず。

今回はミロが晩年に制作したものが中心。作品をこれまでとは違ったやり方で並べているので、ミロが何を描こうとしたかが理解しやすくなっている。会場を入ったところにミロが描いた物の記号(シンボル)がある。これが絵を読み解く鍵。

例えば、‘睾丸’、‘女’、‘星’、‘三本の髪の毛’、‘逃避の梯子’、‘円’、‘太陽’、‘月’、‘目’、‘鳥’など。これらが‘性’、‘天体’、‘地球’、‘無限のかなたへ’という4つのテーマでグルーピングされ、そのくくりにそって各々の記号がでてくる具体的な作品が展示されている。

上の絵‘女、鳥、星’(1978)は‘天体’に分類されている記号‘女の性、燃える花’の一枚。この頃のミロの絵は黒の色面や太い線は画面を多く占めるようになるが、この絵や記号‘星’を表した‘人々、鳥たち、星’では青の背景に細い黒の線で星や鳥が描かれている。

お気に入りは‘地球’の記号‘目’のところに飾ってある‘頭部’と真ん中の‘夜中の野蛮人’。再会した‘頭部’の狂暴的な目にまた射すくめられた。この絵だけは人間の内面を強烈に感じる。‘夜中の野蛮人’はまったくおもしろい絵。足がちゃんと二本あり、大きな目が5つある。どのあたりが野蛮なのだろうか?

最後のコーナーにある18点は記号の分類とは直接対応しないものだが、原色の赤、青、黄色や太い黒線が目を楽しませてくれる。なかでも下の‘力強い思想家’や‘雪の野蛮人’や‘タコ捕り’に大変魅せられた。

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2009.03.08

マーク・ロスコのシーグラム壁画

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千葉の佐倉まで足をのばし、川村記念美で行われている‘マーク・ロスコ 瞑想する絵画’(2/21~6/7)を見てきた。前回ここに来たのは所蔵のステラ作品が展示されたときだから、久し振り。展示の部屋が一部改装されたあと、いくつか企画展があったが、なかなか気が向かなかった。

だが、今回のマーク・ロスコ展は見逃すわけにはいかない。ここのマーク・ロスコルームにある‘シーグラム壁画’7点がテート・モダンにある3点、ワシントンナショナル・ギャラリー蔵の5点と一緒に展示されるのだからすごい。まさに抽象絵画の世界では画期的な展示。これが日本で実現したというのがすばらしい。

平常展示をどんどんとばして、最後の大きな部屋を目指した。部屋の4面にありました、ありました! 入って左に5点、正面に5点、その隣に2点、そして最後に3点、全部で15点。作品の大きさはこの順番でデカくなる。

1958年から59年に制作された‘シーグラム壁画’は30点。計画ではNYにあるビルの一角にはいるレストランの壁に掛けられることになっていた。だが、ロスコはその部屋の雰囲気が気に入らず、キャンセルしてしまった。壁画はすでに完成しているのに、ドタキャンってあり? ロスコは絵画だけでなく、絵画の置かれる場とか空間までこだわる芸術家だから、契約を破棄することに躊躇しない。

さて30点はどうなったか?9点はその後テートに寄贈され、7点は川村へ、ほかはワシントンナショナルギャラリーなどへおさまる。昨年訪問したテート・モダンでロスコ・ルームを体験するのを楽しみにしていたのだが、どういうわけかどこにも見当たらなかった。開館した当時、館を紹介したNHKの番組にはちゃんとでてきたのに、今は常設の部屋はないのだろうか?

この壁画シリーズに限らず、ロスコの絵は大きな画面が少ない色面で構成され、長方形や四角形の輪郭はぼやけているのが特徴。今回ある15点の色合いはほとんど同じ。茶褐色の地に赤を塗り、窓枠のような形をひとつか二つつくっている。

上は正面にある大きな作品のひとつ(ワシントンナショナルギャラリー)で、四角い赤は全点のなかで最も明るく、橙色のようにみえる。絵の具がにじんだようで輪郭がぼやけていたり、赤も均質ではなくところどころで微妙に違うところは、日本画で使われる墨のたらし込みと似ている。

真ん中はテートにある横長の絵(4.57m)。この絵の窓枠の作り方は上とは逆。茶色の地が四角になるように残して、そのまわりを赤で塗りこみ、その色面が地にみえるようにしている。テートから出品されたのは9点のうち3点だった。残りの6点はいつか現地のロスコルーム(存在すれば?)で見てみたい。

ぐるっとまわって最後の3点。いずれも馬鹿デカい。下は川村記念美のもの。縦2.67m、横4.56mの大きな画面に圧倒される。四角の太い枠はテートのものと同じ描き方。図版では茶褐色のようにみえるが、実際は黒と深い青緑が混ざったような色。これと同じ色のものがほかに2点ある。

抽象表現主義を主導したスティル、バーネット・ニューマン、マーク・ロスコのなかでは、ロスコの作品に最も魅了される。形の境界をぼかし、少ない色面を重ね合わす画面構成からは、ロスコが表現しようとした作品のテーマとか深い精神性が伝わってくる。

と同時に、画面いっぱいに広がる茶褐色をみていると、‘なだれ’の即興的なフォルムに惹きつけられる肩衝茶入の名品が頭をよぎり、大きな壁画と小さな茶入がどこかで響き合っているような気がした。

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2009.03.07

上村松園・松篁・淳之 三代展 その三

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昨年3月、日本橋三越で開催された‘上村淳之展’については、運悪くパソコン修理のためアップできなかった。でも、今回の出品作(17点)は松伯美蔵中心の松篁作品とは違い、ほかの美術館や個人がもっているものが多く、三越にでていたのがいくつもあったので、感想記を書くいいきっかけになった。

父の松篁は花も鳥も描いているが、淳之の主なモティーフはもっぱら鳥で、花だけを描いたものはない。現在自宅で263種1600羽の鳥を飼育しているという。画家がその鳥たちに餌をあたえているところをTVで見たことがあるが、どこかの動物園のような光景だった。

いつも鳥が歩く姿や空を飛ぶ様子をながめ、まさに鳥と一体になって絵を描いているのである。だから、淳之の描く鳥はすごく自然な感じで、川や山で見た鳥のイメージがすぐ思い出され絵のなかにすっと入っていける。しかも、背景は余白を多くとり余計なものは極力排しているので、描かれた鳥が美の象徴となって心のなかに深く刻まれる。

日本画は西洋画と違い、対象を象徴的あるいは装飾性豊かに描き、花鳥風月の美を表現することを特徴としているが、上村淳之の花鳥画はそれをシンプルに感じさせてくれる。鳥を眺め、慈しむ時間をもっとつくりたいが、日頃は自然の中に身を置く機会はほとんどない。だから、こういう絵をみると、心がゆったりし素直な気持ちになれる。絵というのはつくづく有難いなと思う。

どの絵も魅了されるので、選択に迷う。上は3羽の水鳥に見入ってしまう‘晨’(ヤマタネ)。うすい灰色で表現された朝霧のなか、描かれているのは土色の羽根をした鳥だけ。まわりには草も花もない。目の前に鳥がいるよう。鳥はたしかにこんな感じで体を動かす。

真ん中は三越でも感激した‘水辺’。鴨の群は水面すれすれを飛んでいるので、その影が水面に映っている。鴨を挟むように上と下には金泥の霞がみえる。松篁は鳥が立っているところや泳いでいるのを描いているが、淳之は飛翔する鳥を多く描いている。これがとても上手い!今回もう一点、すばらしいのがある。大作‘雁金’。見てのお楽しみ!

下の‘花の水辺Ⅱ’は07年の作。母鳥と子鳥の姿に心が和む。言葉はいらない。右の‘Ⅰ’にはまわりを警戒する雄鳥が描かれている。上村淳之の絵にますます惹かれていく。

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2009.03.06

上村松園・松篁・淳之 三代展 その二

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松園の美人画に対し、息子の松篁が描いたのは花鳥画。作品は14点ある(ニ点を除き奈良にある松伯美の所蔵)。

この展覧会に出かけてみようと思ったのは松篁と淳之の作品をもっと見たかったから。一度松篁の回顧展に名古屋で遭遇したり、昨年はそごうで松伯美蔵の絵をみているのだが、まだ少し残っている松伯美蔵の絵をこの際一気に済みにしてしまおうというわけである。そごうで見たのが結構あり、狙い通りにはいかなかったが初見でいいのがあったから満足度は高い。

これまで拙ブログで紹介した松篁は山種美にある‘竹雪’(06/1/8)と‘樹下幽禽’(日本芸術院、05/7/26)の2点。今回出品作のなかで、上の‘熱帯花鳥’は好きな絵。‘竹雪’、‘星五位’(東近美)、‘桃実’(ウッドワン美)、‘孔雀’(京近美)とともにお気に入りの上位に入れている。

目の覚めるようなまっ赤な花は熱帯に咲くトーチジンジャー。そこに白とうすい黄色の羽根が印象的な極楽鳥が体を丸くしてとまっている。背景の緑はややかすみがかった感じなので、赤い花と鳥の羽根がいっそう目を引く。

これに対して、心をぐっと静めてくれるのが真ん中の‘蓮’。とても美しい蓮である。隣にある‘池’(京都市美)や‘杜若’(神奈川県近美)も同じく静かな佇まいにつつまれている。

松篁の絵にでてくる生き物は大半が鳥であるが、山羊や兎、魚や金魚を描いたものが数点ある。大作の‘月夜’ではキビ畑のなかで兎の親子が遊んでいる。黄金の穂と月の光に照らされた愛らしい白い兎をしばらくながめていた。

花でも鳥でも、対象を見続け、写生を繰り返さないと自分の思い通りの絵にならない。松篁は息子の淳之が自宅で飼育している沢山の鳥を眺め、作品を制作した。大作の‘丹頂’は見ごたえのある鶴の絵。雪の積もった笹のそばで片足で立つ丹頂鶴の姿が目に焼きつく。

晩年になると、松篁の花鳥画は極めて簡潔な画面になっていく。下はそれが典型的にみられる‘芦’。水面を泳ぐ二羽の鴨の向こうは水墨画のような世界。墨の濃淡で描かれたような芦の幽玄的な光景が心を揺すぶる。

花鳥画がこれくらいスッキリした構成になると、西洋の抽象画のようなイメージが出てくる。椿の花が縦に並べられその横に一羽の鳥が宙に浮かんでいるみたいに描かれている‘水温む’の前では、ふと現代アートを見ている感じがした。

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2009.03.05

上村松園・松篁・淳之 三代展 その一

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日本橋高島屋で昨日からはじまった‘上村松園・松篁・淳之 三代展’(3/16まで)を見てきた。デパートは世の中が不況だろうが好景気だろうが、女性客の心をがっちりとらえることをいつも考えている。

だから、展覧会でも、女性に好かれる美人画と花鳥画をずらっと揃えた企画は定番。昨年は横浜そごうで‘上村松篁展’があったし、日本橋三越でも‘上村淳之展’が開かれた。‘三代展’は十数年前、名古屋にいたとき松坂屋で遭遇したから二度目。

陶芸の世界では技を継承するという意味もあって、窯元の家に生まれたら将来は陶芸家になるというのが暗黙の了解だから、三代続くのはそう珍しいことではないが、日本画の場合、仮に子供が画家になったとしても親の画風を引き継ぐということはないから、上村家三代のように三人が三人とも日本画壇の中核を担う画家として長く活躍するというのは本当に珍しい。

松園、松篁は文化勲章をもらっているが、淳之もいずれ受賞すると思われる。美人画家、松園のDNAがちゃんと継承されているというのがおもしろい。で、三人を一回ずつ取り上げることにした。まずは、松園から。

作品は全部で40点ある。過去、松園の回顧展は5回くらいみているので代表作の多くは鑑賞済み。だから、描かれた女性にはつい‘また、お会いしましたね’と言ってしまいそうになる。いつものことながら、平安の女性たちには真に魅せられる。今回は2点。‘紫式部図’(石山寺)と上の‘伊勢大輔’がでている。昨年、横浜美であった‘源氏物語の1000年展’でも同じ石山寺蔵の別ヴァージョンをみた。

‘伊勢物語’は三の丸尚蔵館にある‘雪月花’とともにぞっこん参っている絵。ひな祭りのころ、こうした美しい十二単を着た女流歌人と対面できるのは有難い。小さい頃、家族みんなで百人一首を楽しんでいたから、伊勢大輔の歌‘いにしえの奈良の都の八重桜今日九重ににほひぬるかな’は今でもよく覚えている。

チラシに使われている真ん中の‘鼓の音’は松園の代表作のひとつ。松園の美人画では、浮世絵のモティーフを借りた傘をさす女がよく描かれるが、この鼓をたたく場面は松園のオリジナル。傑作‘序の舞’同様、絵から音が聞こえてくるよう。

今回の収穫は下の‘牡丹雪’と‘楠公夫人’(ともに足立美)。広島に住んでいたとき、安来市にある足立美は数回訪問したが、どういうわけかこの2点にお目にかかれなかった。広島を離れたから、この名作を見る機会はないだろうと諦めていた。だから、天にも昇るような気持ち。息を呑んで見た。

やっぱり松園の美人画は心を打つ。名作揃いなのでお見逃しなく。

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2009.03.04

田中丸コレクション 九州古陶磁の精華 

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期待の‘九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて’(茨城県陶芸美、1/24~3/15)を見るため、笠間までクルマを走らせた。有名なやきものコレクションの公開だから、もっと早くみたかったが、近くにある茨城県近美の安田靫彦展(2/7~3/22)と一緒にみようと出動を調整していた。

福岡玉屋百貨店の経営者、田中丸善八(1894~1973)のコレクションはこれまであったやきもの展で散発的にはお目にかかったことはあるが、今回のように150点もまとめてみるのははじめて。質の高さは予想していたが、期待にたがわぬすばらしい古陶磁が沢山あった。

九州は昔からやきものアイランドだから、各地に伝統の窯がある。唐津、高取、上野(あがの)、八代、薩摩、現川(うつつがわ)、伊万里、鍋島、柿右衛門など々。数の多いのが唐津(38点)、柿右衛門(28点)、伊万里(26点)、鍋島(22点)。

唐津焼をこれだけ多くみたのは04年、出光美であった‘古唐津展’以来。唐津のなかでもっとも惹きつけられるのが絵唐津。名品がいくつもある。上の‘菖蒲文茶碗’(重文)と‘木賊文茶碗’(とくさもん)は出光にも出ていた。‘菖蒲文’は3年前、重文に指定されている。鉄釉で描かれた菖蒲のシンプルな形が印象的で、すっと立ち上がった半筒形にも魅了される。

しっかり見たのは算盤玉のような形をした真ん中の‘点斑文水指’。これも出光で見た。もう一点ある同タイプの‘草文水指’同様、渋い灰色がとても美しい。鼠志野のグレーも心を揺すぶるが唐津のグレーもなかなかいい。

鍋島は上品な色合いとハッとする意匠が目を楽しませてくれる。収穫がいくつもあった。最もぐっときたのが下の‘色絵蕎麦花畑文皿’。葉を緑と黄色、茎を赤い線で表わした蕎麦畑が綺麗な意匠となってリズミカルに描かれている。参りました!

‘毘沙門亀甲文’とか‘水車文’とか‘三瓢文’といった定番の文様に加え、シールのような薄黄色の瓢箪マークがぐるっと配されている皿や大きくカーブする水仙の絵柄などを夢中になってみた。鍋島をみたあとはいつもいい気分になる。

柿右衛門では、もとリヒテンシュタイン公家が所有していたという‘色絵梅樹人物文六角壺’と余白をいっぱいとり、そこに舟遊びに興じる童子を描いた‘色絵唐子舟遊図皿’に足がとまった。

あまり縁がなかったやきものでサプライズだったのは長崎の現川焼。‘刷毛地色絵抱銀杏文輪花皿’の斬新な意匠に目が点になった。また、現代アートで見るような色彩の組み合わせに頭がクラクラする長与焼の‘三彩皿’を知ったことも大きな収穫。

なお、この展覧会はこのあと次の会場を巡回する。
兵庫陶芸美:3/21~5/24
サンリツ服部美:6/9~8/30
富山市佐藤記念美:9/12~10/25

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2009.03.03

小杉放菴と大観 -響きあう技とこころ

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日比谷の出光美では現在‘小杉放菴と大観 -響きあう技とこころ’(2/21~3/22)を開催中。最近ビッグネーム画家同士のコラボのことが頭の中を占領している。‘マティスとピカソ’、‘横山操と加山又造’。

そして、期せずして出光美が‘横山大観と小杉放菴’の響き合いにスポットを当てている。でも、二人の関係については、すでに知っているから展覧会の構成自体にはそれほど関心はなく、注目は専ら小杉放菴の絵。ここの放菴コレクションを見る機会をずっと待っていたが、漸くその機会が巡ってきた。

今回展示されている大観(1868~1958)の絵10点は放菴の引き立て役。ほとんど見ているので、鑑賞のエネルギーは全部放菴(1881~1964)の作品67点に使った。一度取り上げた‘天のうずめの命’(拙ブログ06/11/22)の前では自然に笑みがこぼれる。

これと同様元気がでる‘金時遊行’が一緒にあれば申し分なかったが、こちらは昨年8月にあった‘近代日本の巨匠たち’に展示されたから、今回はお休み。その代わりに上の‘金時’と‘金太郎’が出ている。また、金太郎みたいな顔をした‘寒山捨得’や‘黄初平’にも心が和む。

洋画家、小杉放菴を日本画に転向させた池大雅の南画にぞっこん参っているから、放菴の絵でも大雅の人物画のような丸っこくて愛嬌のある顔をした人物が登場する絵にはすごく愛着がわく。‘金太郎’しかり、‘虎渓三笑’しかり。

今回の収穫は風景画と花鳥画。その名作が描かれているのは麻紙。これは中国の隋唐時代に日本に伝来したものだが、この古紙を福井の紙漉き職人が大正14年
(1925)に復活させた。墨の濃淡、にじみやかすれが奥深い情趣を醸し出す麻紙に放菴は竹や柳や梅を大きく描いている。

なかでも心を揺すぶるのが真ん中の‘瀟湘夜雨’と下の‘梅花小禽’。放菴に‘梅花小禽’のようなすばらしい花鳥画があるとは思ってもみなかった。左から白梅の老木が枝を横にのばし、その枝に挟まれるように山鳥が一羽片足でとまっている。即My好きな花鳥画に登録した。

図録に小杉放菴と出光佐三(1885~1981)の交流のことが書かれていたので興味深く読んだ。常日頃、出光佐三は松下幸之助と同じくらいすごい経営者と思っており、尊敬している。事業に対する経営感覚が並はずれて鋭いだけでなく、出光佐三の美術品を見る眼は超一流! これにも驚く。

佐三は放菴より4歳年下。二人が知り合ったのは放菴45歳、佐三49歳の頃。放菴の旅行記‘景勝の九州’の挿絵が佐三の心を虜にしたようだ。放菴は‘芸術とは創作・美・努力がなければならない’と語り、出光佐三は‘私の一生というものは、目で美術を見て、心で人の美しさをみるというようなことで、いつも美というものにリードされて来たような気がしています’と述べている。

放菴は先輩の画家大観だけでなく、大パトロン出光佐三とも響き合っていた。

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2009.03.02

茨城県近美の安田靫彦展

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水戸市にある茨城県近美で開催中の‘安田靫彦展’(2/7~3/22)を見た。安田靫彦(1884~1978)の大きな回顧展は16年前、愛知県美で体験したから、今回の出品作(86点)のなかには再会するものが多い。

東京で安田の名作を見る機会というと、東近美と東博の平常展と山種美の所蔵展。代表作のひとつ‘黄瀬川陣’は東近美に通っていると年に一回はみれるが、今回はなぜかお出ましになってない。でも、ほかはずらっと展示されている。山種美蔵では織田信長を描いた‘出陣の舞’(出品)と‘平泉の義経’が有名。

東博には‘夢殿’、‘御産の禱’、‘御夢’、‘ニ少女’といった大きな絵があるのだが、ここからの出展は盟友の‘今村紫紅像’一点のみ。

安田靫彦が描く絵の大半は日本や中国における文学や歴史上の人物や事件を題材にした、いわゆる歴史画と花の絵、そして人物画。風景画は富士山の絵ぐらいしか見たことがない。

歴史画のなかで一番多いのは一人の人物を描いたもの。最も気に入っているのが久しぶりの対面となる上の‘飛鳥の春の額田王’(1964、滋賀県近美)。これは勝手に日本版‘モナリザ’と思っている。手首のところまでのびた衣装の橙色がものすごく目に沁み、肩にかけている青緑の布をつかむ右手のしぐさがとても優雅。茨城県近美蔵の‘卑弥呼’(1968)とも会いたかったが、展示は3/9~22とのこと。当てがはずれた。残念だが、大好きな‘木花之佐久夜毘売’があったから満足々。

男性の肖像画で群を抜いていいのが真ん中の‘伏見の茶亭’(1956、東近美)。図版では絵の大きさが直に伝わってこないが、絵の前に立つと本当に圧倒される。派手好みの秀吉を一層惹きたてているのが衣装の花柄模様。華やかでかつ粋な感じのする衣装である。安田は秀吉を数点描いており、今回はもう一点、紅梅を背景にした‘豊太閤’がでている。

少年の美しさみたいなものが胸の中を通りぬけていくのが屏風絵‘風神雷神’
(1929、遠山記念館)と‘森蘭丸’(1969、ウッドワン美)。前回同様、画面構成に感心しながら眺めていた。

西洋歴史画では、ルーベンス、レンブラント、プッサン、ダヴィッドなどの作品に聖書やギリシャ神話における話とか古代ローマに起きた事件を劇的に描いた傑作が沢山ある。その劇的な瞬間をリアルな筆致で迫真的に描いたルーベンスの‘サブニの女たちの掠奪’とかレンブラントの‘目を潰されるサムソン’を見ると体がガアーッと熱くなる。

靫彦の歴史画にも、緊張した面持ちで見てしまう傑作がある。‘鴻門会’(1955、東近美)と‘孫子勒姫兵’(展示なし、1938、拙ブログ07/8/1)。‘鴻門会’は劉邦と項羽の話。画面右にいるのが項羽で、左から三番目の顔が見えないのが劉邦。宴席で三人の男が剣舞で座を盛り上げている。この宴は劉邦と項羽が和解するためにセットされたものだから、楽しいはず。でも、様子が違う。緊迫した雰囲気が漂っている。

剣を大きく上にあげ正面をむいている男の目つきが異常に鋭い。こういう目になるのも無理はない。この男は前にいる男が劉邦を舞とみせかけて暗殺するのを阻止しようとしているのである。左の空いた扉から飛び込んで来たのは主君を守るため駆けつけた劉邦の家臣。歴史的に有名な場面を安田は人物を巧みに配置し、臨場感のある画面に仕上げた。流石である。

こんないい展覧会が東京に巡回しないのはなんとももったいない。

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2009.03.01

名画バトン ピカソからマティスヘ

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ピカソが二日続いたので、今日はマティスの好きな絵を取り上げたい。‘Bunkamuraの展覧会に行ってこい!’とプッシュしてくれたのが最近読んだ‘マチスとピカソ’(イヴ=アラン・ボア著、日本経済新聞社、00年6月)。この本を読むとマティス(1869~1954)とピカソ(1881~1973)はお互いにすごく相手の創作活動に関心を寄せており、刺激し合っていたということがよくわかる。

マティスはキュビスム的な絵を描いてみたり、ミノタウロスのようなピカソの暴力性がむき出しになった作品に刺激されギリシャ神話の挿絵なども手がけている。一方、ピカソはピカソでマティスの‘ダンス’のような生き生きとした人体のフォルムを真似た絵を描いている。

色彩の革命、‘フォービスム’を主導したマティスに対し、ピカソは形の革命、‘キュビスム’で多くの画家たちに影響を与えた。一見すると、二人は全く違う表現方法で作品を制作していたようにみえるが、実際には互いに響き合っていた。

‘響き合いすぎではない?’と注文を付けたくなるほどよく似ているのが昨日紹介したピカソの‘黄色い髪の女’とマティスの‘夢’。マティスは最初の段階ではこれとは違う構成で描いていたのに、どういうわけか完成した絵はピカソの絵に瓜二つ。二人はともにリスペクトしあい、自分の作品に取り入れられる要素は貪欲に吸収しようという気持ちを持ち続けていたのだろう。

さて、マティスの絵である。04年西洋美ですばらしい回顧展があったから、画集に載っている有名な絵と沢山対面することができた。また、次の年にはプーシキン美から楽しい‘金魚’(拙ブログ05/10/25)がやってきたし、07年にはフィラデルフィア美の‘青いドレスの女’(07/10/13)が展示された。だから、代表作の相当数が鑑賞済み。現在残っている作品でなんとしても見たいのは次の3つ。

★ばら色の裸婦 (1935) : ボルティモア美(上の画像)
★紫の服の女ときんぼうげ (1937) : ヒューストン美(真ん中)
★王の悲しみ (1952) : ポンピドゥーセンター(下)

よく大きな回顧展を2回みたらその画家の作品は大体目に中におさまるといわれるが、アメリカの美術館にある上の二つは次のマティス展では是非対面したい。

‘ばら色の裸婦’は下半身や手が異常に大きいから、女性の体としてはだいぶ変なのだが、そんなことはこの堂々としたヴィーナスの前では気にならない。真ん中の絵は同じ年に描かれたフィラデルフィ美の‘黄色い服のオダリスク、アネモネ’(08/6/22)と色合いが同じ調子。昨年この絵にも魅せられたが、ヒューストン美のほうが人物の輪郭線がくっきりしており、絵の完成度としてはかなり上。

ポンピドゥーは過去2度訪問したのに、なぜか切り紙絵の傑作‘王の悲しみ’に縁がない。これが日本に来ることはまずないから、どうしても現地へ行かざるを得ない。ところが、やっかいなことにこの絵は常時展示してないのである。3度目の挑戦ではアバウトな鑑賞をするわけにはいけないから展示の時期を確認しながらのスケジュール調整ということになるが、ほかの美術館めぐりとのバランスを考えると悩ましいところ。

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