美術に魅せられて! お気に入りキューピッド
ウェッジウッドがギリシャ神話の楽しさを思い起こさせてくれたので、本日は絵画に登場するキューピッドのことを取り上げてみたい。
西洋古典絵画を長くみているとキリスト教やギリシャ神話についての知識や理解が、絵画鑑賞を趣味にしていない人と較べると確実にますのではなかろうか。キリスト教徒ではないので聖書をきちんと読んでいるわけではないが、絵画をみたり、宗教画関連の美術本が手元にあるから、旧約・新約聖書に書かれていることが一通りわかるようになった。
また、ギリシャ神話も一時期集中的に岩波文庫の‘イリアス’、‘オデュッセイア’、‘神統記’、‘アエネーイス’、‘変身物語’などを読んだお陰で、絵画化された‘神々の世界’、‘英雄の世界’に今ではすっと入っていけるし、この人間味あふれる物語を存分に楽しんでいる。それもこれも、絵画を鑑賞してきたからである。
で、これまで遭遇した宗教画で感銘深い作品を気の向くまま紹介していこうと思う。最初は軽くキューピッドの絵から。ギリシャ神話ではお馴染みの可愛いキューピッドは英語名で、ギリシャ名はエロス、そしてラテン名はクピドまたはアモル。
ギリシャ神話の本を読んでいて、まず戸惑うのがこの神々や英雄たちの名前。整理されて頭のなかに入ってないから、三つの名前がごちゃごちゃになる。時折、表をみてその名前が英語なのかギリシャ語なのかラテン語なのか確認するのだが、しばらくたつとまた入り混じってくる。あまり気にしないでアバウトに覚えておけばいい。
キューピッドちゃんのお母さんはあのヴィーナス。ではお父さんは?ジュピター(ギリシャ名、ゼウス)といきたいところだが、そうではなく、オリュムポスの十二神のひとり、軍神ジュピター(アレス)。愛をつかさどる童神はいつもヴィーナスにつきそっていたり、神々や人間の恋の場面に愛の象徴として描かれることが多い。
その姿は翼をつけ、矢筒を肩に、小さな弓と二つの矢を手にしている。金のやじりの矢は恋心をおこさせ、鉛のやじりの矢は反対に人を嫌いにさせる。アポロンとダフネの悲恋物語はキューピッドが放った矢が原因。お気に入りのキューピッドは次の3点。
★パルミジャニーノの‘弓を削るキューピッド’ : ウィーン美術史美(上の画像)
★カラヴァッジョの‘勝ち誇るキューピッド’ : ベルリン絵画館(真ん中)
★ベラスケスの‘ヴィーナスの化粧’ : ロンドンナショナルギャラリー(下)
マニエリスム絵画では、パルミジャニーノ(1503~1540)のこの絵とブロンツィーノ
(1503~1572)の‘ヴィーナスとキューピッドのいるアレゴリー’(拙ブログ08/2/4)にぞっこん参っている。パルミジャニーノの描くキューピッドの美少年ぶりといったらない。また、キューピッドの足の間にみえる二人のプットーの表情が実にいい。
カラヴァッジョ(1571~1610)の絵は残念ながらまだお目にかかってない。天真爛漫なキューピッドといつか対面できることを夢見ている。
ベラスケス(1599~1660)の絵では目はもちろん、背中をこちらに向け鏡にうつる自分の顔を見ているヴィーナスにさそわれるのだが、鏡をささえヴィーナスの美しさを演出しているキューピッドの姿にも惹きつけられる。
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