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2009.02.03

奈良美智はレオナール・フジタの子供の絵に刺激を受けた?!

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今日は最近読み終えた林洋子著‘藤田嗣治 作品をひらく 旅・手仕事・日本’(名古屋大学出版会、08年5月、上の写真))のことをすこし。林洋子さんは現在、京都造形芸術大学の准教授で、その前は東京都現代美術館の学芸員をやっておられた。

この美術史家はこの本ではじめて知った。昨年、上野の森美で開催された‘レオナール・フジタ展’(拙ブログ08/12/7)を鑑賞したあと、この本を図録と一緒に購入したのは、本の情報を少し前に入手した際、よく書けていると高く評価されていたから。
511頁もある大著であるが、うわさ通りのとてもいい本だった。

美術史の研究では男性よりは女性の方がいい成果をあげているのではないかと思うことが多いのだが、林さんも一流の美術史家。西洋画で世界的に名の通った日本人画家、藤田嗣治について、日本の研究者がこんな立派な本をお書きになった。本当にすばらしい!読んだあと、収穫がどっさりあることは請け合い。いくつかあげてみると。

1.藤田の画業の変遷が多くの作品を使ってわかりやすく説明されている。

2.日本人、藤田がパリにいるとき、日本に帰って来たとき、またフランスに戻ったとき、日本の文化、絵画とどう向き合い、日本をどう表現したかがこと細かに書いてある。

3.藤田は欧州、アジア、中南米、アメリカと旅した。その多文化の経験が作品にどう表出しているかを鋭く切り込んでいる。

4.作品の分析を軸にしているので、藤田の画技のこと、‘乳白色の下地’の秘密、大作壁画‘構図’、‘争闘’の制作過程、藤田が影響を受けた西洋絵画などについてかなり詳しく知ることができる。

5.藤田が愛した女性、仲がよかった日本人画家や外国人画家、またパトロン、作品が展示されたパリと東京の画廊、開催された展覧会といった話がもれなく、実にていねいに書かれている。

過去経験した2回の回顧展(06/4/4)やほかの美術館で対面した作品で疑問に思っていたことや、これまで知らなかったことがこの本でわかった。その小さなサプライズをいくつか。

・以前、笠間日動美で大きな絵‘家族(室内、妻と私)’を見たとき、どうしてこんないい絵がここにあるのか?だったが、その理由がわかった。藤田が日本に一時帰国した際、個展を開いたところが日動画廊だったのである。

・日本にいるとき描かれた‘ブラジル珈琲店の壁画’は今、サイズが縮小された‘大地’となって、ウッドワン美におさまっている。実はこの絵をある展覧会で見たのだが、購入した図録に図版が載ってなかったのですっかり忘れていた。

・シカゴ美で藤田の作品に遭遇し、びっくりしたが、そのシカゴ出身でパリに住んでいた富裕なアメリカ人女性を描いた絵が紹介されていた。これはアメリカの美術館で公開されている唯一の藤田作品。

真ん中は藤田が最晩年に描いた子供の絵、‘朝の買物’。06年の回顧展に出品された。これや隣にあった‘小さな主婦’が大変気に入っている。女の子は額が広く目がすこし吊り上っている。そしてもっとも惹かれるのが子供らしくないところ。この絵を見たときすぐ、下の奈良美智が描く女の子を思い出した。

まったくの想像だが、奈良智は藤田の女の子を見た?! で、藤田のDNAが奈良智に受け継がれたと勝手に妄想し、二つの絵を響き合わせている。

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