東博浮世絵エンターテイメント! 師宣・春信・国芳
現在、東博本館の浮世絵コーナーにでている作品の展示期間は2/10~3/1。展示のサイクルは3週間と短いので、うっかりしていると見逃してしまう。
ここが所蔵する浮世絵コレクションは底なし沼と言ってほど沢山ある。ここ5年、鑑賞のど真ん中においている歌麿でも、必見リストには済みマークが増えてきたものの、見たい絵はまだだいぶ残っているし、画集に載ってないものも頻繁に登場する。だから、ぼやっとしていられない。
上は菱川師宣の‘よしはらの躰’。これは吉原の情景を描いた12枚一組の揃物版画の一枚。大半は墨摺りだが、着物には色がついている。師宣の代表作のひとつとして、わりと頻繁に展示されるが、12枚のうち対面したのは3、4点くらい。再会することが多くなったということは、ここにあるのはこれらだけかもしれない。動感描写が巧みなこの絵も目が慣れている。
春信は2点ある。真ん中は春信の代表的な艶本‘風流艶色真似ゑもん’の第21図。われわれが今大変な場面に出くわしたことはすぐわかる。左の遊女はたいそうな剣幕で男に掴みかかている。‘あんた、なんでこの部屋にいるのさ、この女に乗り換えるつもり。悔しいィー!’。
素知らぬ顔で夜見世の支度をしている右の女の隣に変な男がいる。どうしてこんなに小さく描かれているの?この小人は色道の奥義をさとろうと色道修行をしている浮世之介。この艶本は序文と12図の上巻と下巻12図からなっている。これまで見たのはほんの3枚。全点見るのは難しそう。
春信の絵にはサプライズというか不思議な場面がよくでてくる。‘浮世美人寄花 山城屋内はついと 萩’(拙ブログ08/10/2)では、掛け軸の中に描かれた猿が画面から飛び出してきて、美人遊女に恋文を渡すし、この絵では小人の浮世之介が透明人間になりすまして男女の様子を観察している。
シュルレアリストのダリやマグリットとかシャガールがこの絵をみたら、‘日本の浮世絵はこんなにシュールだったの!?’と目を白黒させるのではなかろうか。
今回、国芳のとてもおもしろい絵がでている。下の‘弁けい’(左)と‘たいこもち’(右)。これは見ての通りの影絵。弁慶が三井寺の鐘を曳いてる姿が影絵ではたいこもちの横顔に変わる。広重の影絵だと男の作るポーズが石燈篭になるといった具合にシンプルなものが多いが、国芳のは手が込んでいる。
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コメント
最終日の3月1日に見てきました。
ちょうど浮世絵ガイドをやっていたのでラッキーでした。
春信のまねえもんが小さくなった話は面白いですね!
他のも見てみたいですがやはりなかなか難しそう。。
投稿: 雅 | 2009.03.03 23:35
to 雅さん
Bunkamuraにあったシャガールの‘ラビ’を
みまして、春信の小人の浮世之介がすぐ頭に
浮かびました。
日本の絵師のシュールな感覚になにか誇らし
い気持ちになりました。このシリーズもっと
見たいですね。
投稿: いづつや | 2009.03.04 10:29