生活と芸術 アーツ&クラフツ展 その一
ここ数年、ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツに関連した展覧会は頻繁に開催される。だから、耳に入ってくる展覧会は一度みたことがあり、それが全国を巡回しているのか、また別のものがはじまったのか区別がつかなくなっている。
現在、東京都美で開催中の‘生活と芸術 アーツ&クラフツ展’(1/24~4/5)は04年10月、大丸東京でみたものとは明らかに違うので出かけてみた。
大丸で体験したモリス(1834~96)の布地や壁紙デザインがしっかり体の中に染み込んでいるので、落ち着いてみられる。出品作は家具、装飾品など280点。ロンドンのヴィクトリア&アルバート美が企画したものだけあって、質がよくて目を楽しませてくれるものがどっさりある。
上はモリスの内装用ファブリック‘いちご泥棒’(1883年)。布地や壁紙のデザインは自然を題材にとり、鳥や花のモティーフが繰り返されている。モリスはツグミがイチゴを盗むのを庭でみてこのデザインをイメージしたという。ほかでは再会した‘果実あるいは柘榴’や‘グラナダ’に足がとまった。
今回の収穫は真ん中のモリスがダールと一緒につくった‘タペストリー・果樹園’(部分)。これをみるとモリスがバーン=ジョーンズ(1833~98)とともにロセッテイ
(1828~82)に強く惹かれ、ラファエロ前派を継承したことがよくわかる。
天才に共通する特質はいろんなことを高いレベルでこなす才能をもっていること。モリスも万能の工芸家。機織り、染色、ステンドグラス、木版制作、印刷術、本の装丁の技術を習得し、詩もつくる。モリスが縁枠や表題紙のデザインをした本‘狐のレナード物語’とか‘ジェフリー・チョーサー作品集’の飾り文字にとても魅せられた。
この展覧会でひそかに期待していたのがロセッティ作品。絵画はなかったが、すばらしいステンドグラス・パネル‘聖ゲオルギウス伝’(6枚)に遭遇した。下はハイライトの聖ゲオルギウスがサプラ姫をドラゴンから救う場面。ドラゴンが大きくあけた口に聖ゲオルギウスは左手にもった盾を突っ込み、喉をかき斬っている。
これと同じような光景が日本画にでてくるのでびっくりした。それは吉山明兆の描いた‘五百羅漢図’(京都・東福寺、07年、東博であった京都五山禅の文化展に出品された)。白い龍の口の中で羅漢が前につっかえ棒をして座っている場面がロセッティの絵にそっくり。
ロセッティ同様、お気に入りのバーン=ジョーンズは家具に絵付けしたものとローマにある教会のためのモザイク画習作、‘生命の木’があった。‘生命の木’は1888年のアーツ・アンド・クラフツ展協会の第1回展に出品されている。バーン=ジョーンズ作品の数が増えたのでまずまずといったところ。
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