感動の加山又造展! その五
加山又造は絵画の制作だけでなく、版画とか陶器や着物の絵付けなども行っており、最後のコーナーにそれらがずらっと展示してある(43点)。その品がよく美しいデザインに200%魅了された。取り上げた3つはほんの一例。ほかは見てのお楽しみである。
★洋食器セット・撫子(1992) : 個人蔵(上の画像)
★銀摺箔墨絵牡丹訪問着(1985) : 美裳三松(真ん中)
★「新潮」表紙絵(1971) : 個人蔵(下)
陶芸作品は大鉢、重箱、茶盌、湯呑、皿、洋食器など16点。神戸であった回顧展でも見込に大きな牡丹を描いた大鉢を見たが、カップやテーブルセットははじめてみた。なかでもノリタケのテーブルセット‘撫子’、‘萩’の柔らかくて上品な模様にメロメロ。
6点ある着物に施された文様は絵画で使ったモティーフ、笹、波、蔦、千羽鶴、牡丹、桜。加山は染色の図案を描いていた父親の姿を思い出しながら、絵付けをしていたに違いない。
懐かしかったのが白梅、紅梅、雲龍の羽子板。羽子板をみるのは何十年ぶりのことだろう。また、夢中になってみたのが祇園祭りの山車の原画‘飛天奏楽’。リズミカルに天を舞う飛天の体は真白で赤い地に浮き上がってみえる。加山の描く女性はモデルタイプの裸婦が目に焼き付いているので、こんな清楚な天女と遭遇するとちょっと面食らう。と同時に、ほっとする。
‘新潮’の表紙も心を打つ。宗達や光琳の美意識と様式性がさらに洗練され、その軽快で煌びやかな絵柄は神坂雪佳の‘百々世草’の図案同様、見てて楽しい。
加山はCGを使って犬の絵を描いたり、メールも打っていたらしい。小学校のとき、加山は図画、工作に次いで算数が得意だったそうだ。で、父親は加山が絵かきになるのを嫌って、電気系統専門の工業学校へ進学させたがったという。もともと頭がよく、理数系の頭脳の持ち主だったから、現代数学のトポロジーを思い起こさせるようなしなやかでダイナミックなフォルムの波文を生み出すことができ、CGで絵が描けたりするのである。
若い頃の動物画はちょっと角々して直線ばかりが目立つのに、日本古来のやまと絵や琳派のやわらかい曲線の美に接すると、ふっきれたように曲線の形態にのめり込んでいく。そして、晩年に描いた‘仿北宋水墨山水雪景’では、‘冬’にみられるような精緻な木の描写を再び復活させ、この鋭利な直線性と切り立ってはいるが丸みも加えた岩とうまく融合させた画面をつくりだしている。
このように金銀を使った華麗な色彩からモノトーンに変えたり、対象の描き方を直線主体から曲線に切り替えたりするのは簡単なことではない。表現したいイメージを形をいろいろ変えて表出できるのは卓越した技をもっている限られた者だけ。それができる加山又造は真にすごい芸術家である。
これで加山又造展はお終い。
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