窯ぐれ三代 加藤唐九郎・重高・高宏展
ホテルオークラの隣にある智美術館では現在、‘加藤唐九郎・重高・高宏展’(3/8まで)が行われている。毎年、やきもの展には足繁く通っているが、今年前半の予定はこの展覧会と茨城県陶芸美の‘田中丸コレクション’(1/24~3/15)、江戸東博の
‘薩摩焼展’(2/14~3/22)。
智美のやきもの展は過去、楽吉左衛門展(拙ブログ05/10/2)でいい思いをしているので、展示スケジュールは定点観測している。銀座線の虎の門駅からここへ来るにはきつい坂道を覚悟しなければならないので、そう度々訪問する気にはならないが、今回は見逃せない。
加藤唐九郎は荒川豊蔵(08/5/31)とともに桃山陶に挑戦した大きな陶芸家。だから、一度は名品を沢山みてみたいという思いが強かった。それがやっと叶った。10年前、広島そごうで今回と同じような三代展が開かれたが、いかんせん美術画廊コーナーでの展示だから数が少なかった。
今回は3人あわせて110点。一点々趣のある名品がずらっと揃ったという感じ。お目当ては唐九郎だったのに、息子の重高、孫の高宏の茶陶もすばらしいのではじめから終りまでテンションは上がりっぱなし。
唐九郎の作域は黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部、唐津と多彩。数の多いのが志野。どの茶碗にもすごく惹きこまれる。上は白い釉薬の下から幅のある緋色の横線が生き生きと浮かび上がっている‘志野茶盌 銘 貫通’。やきものは心でつくるものだといわれる。形が限られている茶碗では、これは一番簡単なようで一番難しい。
白の釉薬が雪のような見える大振りな茶碗やピンホールと呼ばれる表面の小さなでこぼこが印象的な‘鼠志野茶盌 銘 鬼ヶ島’、‘志野茶盌 銘 氷桂’にも心が揺すぶられる。また、‘黒織部茶盌 銘 がらしや’の斬新な文様も目を楽しませてくれる。こういうのを見ると唐九郎はつくづく鬼才だなと思う。
重高にもいい志野がある。真ん中の‘鼠志野茶碗 銘 紫雲’の濃い紫色の色合いに言葉を失った。こんな鼠志野はこれまでみたことがない。これと同じくらい魅了されたのが白とうす青のコントラストがとても映える‘鼠志野茶碗’。これは昨年やかれた最新作。80歳をこえてもこんなすばらしい色の茶碗を生み出すのだから恐れ入る。才能のある陶芸家にかかると、やきものもさらに洗練されてゆく。
三代目の高宏は今年、37歳。10年前の作品と比べ、文様がすごくシャープになり、形が楽吉左衛門風になってきた。下はとくにグッと惹きこまれた‘黒織部茶盌’。箆削りタイプのものはほかにも4点あり、その鋭角的なフォルムが心をとらえて離さない。
今年のやきもの展はいいスタートをきった。次は定評のある田中丸コレクション。
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