« japan 蒔絵展 その二 | トップページ | 東博浮世絵エンターテイメント! 北斎・春信・歌麿 »

2009.01.28

長谷雄草紙はおもしろい!

322_3
324_3
323_3
永青文庫で開催中の‘源氏千年と物語絵’(1/10~3/15)を見た。お目当ては修復が終わり、5年ぶりに公開される‘長谷雄草紙’(重文、鎌倉時代、上の画像)。この説話絵巻には前から関心があったので‘一点買い’の腹づもりで出かけた。

展示室は広くないため、絵巻は一度に全部みれず、部分だけ。会期中に巻替えされ、全場面がみれることになっている。展示してあったのは上の場面。

これは怪奇物語を絵画化したもの。主人公は平安時代に実在した紀長谷川(きのはせお)という文人、漢学者。ある夕暮れ、内裏に参上する支度をしていたら、屋敷に男がやってきて‘あなたと双六(今の碁みたいなもの)をしたい’という。長谷雄は何かしっくりこなかったが、男の後をついていく。その場面が上。

右の束帯姿が長谷雄で、隣にいるのが双六がしたいという男(実は鬼)。男が手で指し示しているほうをみると、車に繋がれた猿と親子が戯れている。その後ろの家にはでっぷり肥った男が床に座り、これを見ている。生き生きと描かれた市井の様子は洛中洛外図と変わりない。

二人は朱雀門の上の部屋にあがり、双六をはじめる。男は‘負けたら美女をさしあげる’と言う。‘そちらが、美女なら、私は持っているお宝だ’と長谷雄。長谷雄がどんどん勝っていくと、男の顔が鬼に変身!(真ん中の右)。長谷雄は気をおちつかせ、必死に打ち、勝利をおさめる。

後日、男は約束通り、絶世の美女を連れてくる。‘あら、嬉しや、本当かい!’‘でも、旦那、あせっちゃーいけませんよ。100日たってから、懇意にしてくださいよ’と男は言い残して去る。が、長谷雄は80日は我慢したが、もういいだろうと女と契ってしまう。すると、女は水になって流れ去ってしまった。これが下の場面。

美女は実は鬼が死者の美しい肉体を集めてつくった人造人間。100日経てば魂が定まって本物の人間になるはずだったのである。

ギリシャ神話にも似たような話がある。楽人、オルフェウスが妻のエウリュディケを永遠に失ったのも冥界の王、ハデスと交わした約束を破ったから。

蛇に噛まれて命を落とした妻をあまりに嘆げ悲しむオルフェウスに心を揺すぶられたハデスは‘エウリュディケは生者の国に帰れるようにしてやろう。でも、条件がある。妻の手を引いていくとき、生者の国に着くまで後ろを振りかえってはならぬ’とつげる。

オルフェウスは魔がさしたのか誘惑に負けてしまう。あとすこしで地上だというのに不安に襲われ、妻がいるかどうか確かめようと振り返った。たちまち、エウリュディケは跡形もなく消えた。

ほかの作品で足が止まったのは再会した今村紫紅作、‘三蔵法師’(真ん中)とはじめて見る中村岳陵の‘魔女’(下)。以前、ここで見た岳陵の‘麻耶夫人’(拙ブログ05/9/28)に魅せられたが、悟りを求める釈迦を惑わす天女を描いた‘魔女’にもKOされた。二つも収穫があれば満足々。

|

« japan 蒔絵展 その二 | トップページ | 東博浮世絵エンターテイメント! 北斎・春信・歌麿 »

コメント

岳陵の魔女すごいですね。いづつや様の画像がいいのでとても楽しんでます。少し前の‘美女シリーズ’は、圧巻でした。

ところで、楊貴妃や、花魁で、表現される
‘傾城’‘傾国’の美女!
いったい、どんなに美しかったのでしょう。
城を傾ける程の美女!
国を傾ける程の美女!
いったい、どんなに美しかったのでしょうか。

投稿: Baroque | 2009.01.29 17:42

to Baroqueさん
魔女は館の図録に載ってませんので、びっくり
しました。岳陵はいい女性画を描きます。

美術では美女の表現が古代からずっと大きな
テーマですね。古代ギリシャではヴィーナスの
彫刻、アジアでも仏陀の優しい慈悲の心を表現
した彫刻や仏画がはじまりでした。

理想の美女の容貌は時代とともに変わってくる
のでしょうが、その一方で美しいヴィーナス像や
仏の姿にも癒され続けてます。

投稿: いづつや | 2009.01.30 00:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 長谷雄草紙はおもしろい!:

« japan 蒔絵展 その二 | トップページ | 東博浮世絵エンターテイメント! 北斎・春信・歌麿 »