福澤諭吉展のやきもの
東博の表慶館で現在、福澤諭吉展(1/10~3/8)が行われている。ものにはついでということがあるから、‘妙心寺展’を見たあと入館した。
この展覧会を知ったとき、ひそかに期待したのは慶応大学が所蔵している浮世絵コレクション。このなかに菱川師宣や鈴木春信のいい絵があり、ずっと追っかけているのだが、ひょっとして夢が叶うかなと思った。が、これはここでは実現せず、別の美術館で公開されることがわかった。
三井記念美がそのものズバリ、‘高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展’(9/19~
11/23)を開催する。浮世絵本に載っているのはおそらくこの高橋コレクションなのだろう。すごく楽しみ。
で、この福澤諭吉展はとくに見たいものがあるわけではない。だから、出品リストを見て最後の展示コーナー、‘福澤門下生による美術コレクション’へ急いだ。やきものの名品が予想以上にあった。
福澤諭吉が開いた慶応義塾は著名な政治家、財界人、実業家、芸術家、小説家、文人を数多く輩出している。そういう人たちが皆が皆、美術品のコレクターということはないだろうが、古美術品の蒐集にはそれ相応の資金力がいるから、目の前にあるすばらしい美術品が慶大出身の経済人らが心血を注いで集めたものであることは容易に理解できる。
美術館が所蔵するもの、個人蔵となっているもの、いろいろある。上は4度目の対面となる国宝の‘秋草文大壺’(渥美窯、12世紀、平安時代)。これは日吉にある大学の構内から出土したもの。存在感のある見事な壺で、陰刻された大きなすすきをみていると自然に秋の情景が思い起こされる。
真ん中は東博蔵の‘志野茶碗 銘 橋姫’。定期的に平常展に展示される定番の志野である。銘は源氏物語、宇治十帖の橋姫の巻に由来し、胴に描かれた太鼓橋を宇治橋に見立てている。
これは松永耳庵が所蔵していたものだが、松永コレクションはほかにも‘大井戸茶碗 銘 有楽’(東博、拙ブログ08/5/30)などが見られる。本阿弥光悦の‘黒茶碗 銘 七里’(五島美、05/6/1)があるのは五島昇氏が慶応の出身だから。
MOAから3点でており、下は野々村仁清の名品‘色絵金銀菱文茶碗’(重文)。右の銀菱の茶碗に左の金菱の茶碗が納まる、入子の重茶碗。はじめてこれと対面したとき、その現代アーティストの感性をも刺激する菱文に仰天した。これを献上された東福門院も目を輝かせてながめたにちがいない。
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