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2008.12.15

08年感動の美術鑑賞プレイバック! ナショナル・ギャラリーⅠ 

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2月~5月にかけて、拙ブログは海外の美術館めぐりの感想記を書き続けた。取り上げた作品は全部で217点にもなるので、ナショナルギャラリー、ルーヴル、メトロポロタンなどブランド美術館の誇る自慢の名画をかなり紹介できたのではないかと思っている。

でも、これらの美術館にある絵画の数は膨大だから、いい絵はまだまだ沢山ある。で、このプレイバック!では紹介したいのに他の画家との関係で割愛せざるをえなかった作品に光を当てることにした。予算づくりでいうと復活折衝みたいなもの。まずは、ロンドンのナショナルギャラリーから。

こういうビッグな美術館を訪問すると感動の名画にいくつも遭遇するが、そのサプライズの仕方にはいろいろある。ひとつは、館の図録や画集、美術本から画像をコピーし、絵の雰囲気を頭に入れた上で鑑賞したのだが、実際の絵は期待値以上に色が輝いていたとか、描写が精緻だったとか、また、ものすごく大きい絵だったような場合(仮にこれをAタイプとする)。もうひとつは、事前には絵の情報が全くなく、絵の前でそのすばらしさにびっくり仰天するケース(Bタイプ)。

この美術館のサプライズは次の3点。
★プッサンの‘黄金の子牛の礼拝’(上の画像)
★ジョルダーノの‘ピネウスとその一味を石に変えるペルセウス’(真ん中)
★シャヴァンヌの‘洗礼者聖ヨハネの斬首’(下)

Aタイプがプッサンとジョルダーノの絵で、シャヴァンヌはBタイプ。ニコラ・プッサン
(1594~1665)は今年の海外美術館巡りで収穫の多かった画家のひとり。ロンドンナショナルギャラリー、ルーヴル、ワシントンナショナルギャラリー、メトロポリタンと行く先々で画集に載っている名画が待ち受けてくれた。嬉しいことにMETではプッサン展という想定外のオマケまであった。

ナショナルギャラリーにはこの絵のほかに‘パンの勝利’や‘モーセの発見’もある。聖書の物語や神話を題材にした作品をプッサンは数多く描いた。この‘黄金の子牛の礼拝’は旧約聖書の‘出エジプト記’の物語を絵画化したもの。チャールトン・ヘストンがモーセを演じた映画「十戒」で人々が黄金の子牛を偶像化して狂乱的に踊っているシーンが目に焼きついているので、この絵にすぐ入り込めた。誇張された身振りやティツィアーノの絵を思い起こさせる鮮やかな色彩が目を釘付けにさせる。

ルカ・ジョルダーノ(1634~1705)の絵はほかの美術館でも見た経験はあり、また、この絵も事前にコピーして必見リストに張り付けていたが、特別期待値が高かったわけではない。が、絵の大きさと緊迫感のある画面に度肝を抜かれた。これはこの美術館で最大の神話画であり、縦2.75m、横3.65mある。

‘ジョルダーノにこんなすごい絵があったの!’という感じで、ジョルダーノをいっぺんに見直した。ちょうど、小学校の生徒たちが見学中で、先生が熱心に解説していた。以前2回もここを訪れているのにこの大作を見逃していたとは。自分が情けなくなった。

バロック絵画の特徴であるかちっとした構図、明暗の対比、リアルな動感描写が本当に見事!これは一生の思い出になる。真ん中に描かれているのがメデューサの首。英雄ペルセウスは顔をそむけながらこの首を持ち、敵方の左端にいるピネウスや部下たちのほうに向けている。どうして、ペルセウスは目をそむけているのか?これは見てはダメなの。この首に見られたら最後、すぐ石になってしまう。

水戸黄門漫遊記の助さん、格さんのように‘この印籠が目に入らぬか!’とカッコよくきめられないが、メデューサの首は抜群の魔力をもっているのである。ペルセウスと結婚披露宴の真っ最中だったアンドロメダは怒号と悲鳴が飛び交うなか、後ろのドアのほうへ逃げようとしている。

下のシャヴァンヌ(1824~1898)の絵はまったく知らなかったから、唖然として見ていた。聖ヨハネは首をはねられる寸前。顔を少し横に向け、両手を腰のあたりで左右に広げるポーズと剣を思いっきり後ろにまわし、気持ちを集中している男の姿にすごく惹きつけられる。この絵も忘れることはないだろう。

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コメント

ルカ・ジョルダーノ、ちょうど名古屋で見て来た所です。
この絵も、近くで見たら大迫力なんでしょうね。
ロンドン行ったら、しかと確かめて来ます。

投稿: meme | 2008.12.16 21:15

to memeさん
松坂屋でジョルダーノの絵をみられたのですね。
ナショナルギャラリーにおけるサプライズはなん
といってもジョルダーノのこの絵でした。立ち
尽くしてみてました。

memeさんともこの絵の緊迫感を共有したいですね。
是非ご覧になってください。

投稿: いづつや | 2008.12.17 12:16

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