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2008.12.17

08年感動の美術鑑賞プレイバック! テート・ブリテン

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つい最近、ふと立ち寄った古本屋でいい本が目にとまったので即購入し、一気に読んだ。それはラングラート著‘D.G.ロセッティ’(90年9月、みすず書房)。この本は以前どこかの本屋で手にとったことはあるが、価格が4944円と高く、また画家のモノグラフを読む基準としている‘本物の絵7割鑑賞’に届いてないので、買うのをやめていた。

ところが運よく、2000円の格安で立派なロセッティ本が手に入った。1月、テート・ブリテンでこの画家の作品を沢山みたから、本に書かれていることが真綿に水が染み込むように頭の中に入っていく。で、テート・ブリテンで見た感動の絵画プレイバック!はロセッティとこの本により理解が進んだミレイ、ホイッスラーの作品を取り上げることこにした。

★ロセッティの‘受胎告知(見よ、われは主のはした女なり)’(上の画像)
★ミレイの‘両親の家のキリスト(大工の仕事場)’(真ん中)
★ホイッスラーの‘ノクターン:青と金色ーオールド・バタシー・ブリッジ’(下)

ロセッティ(1828~1882)がミレイ(1829~1896)らと共にラファエロ前派を結成したのは1948年、ロセッテイが20歳のとき。ラファエロ前派の活動はわずか3年で終わるが、このとき描かれた代表作が‘聖母マリアの少女時代’(1849)と‘受胎告知’
(1850)。‘受胎告知’のマリアのモデルをつとめたのはロセッテイが女神として恋するエリザベス・シダルで、‘ベアタ・ベアトリクス’(拙ブログ9/15)もこのエリザベス。

ダンテにとってのベアトリーチェのような存在がエリザベスなのに対し、‘プロセルピナ’(2/9)をはじめロセッティが数多く描いた女性が魔性的な美貌のジェイン・バーデン。ジェインはウィリアム・モリスの妻なのだが、ロセッティはエリザベスが死んだのちはジェインの虜になる。

ロセッテイにはこの二人のほかにも最後の最後まで縁が切れなかった娼婦ファニー・コンフォースや最高傑作‘モンナ・ヴァンナ’(テート・ブリテン)のモデルになったアレクサ・ワイルディングなどの愛人がいるが、これらの女性画は歌麿の美人画のように一見すると皆同じ女性に見える。

ふさふさした金髪にはウエーブがかかり、透けるような白い肌が口紅の赤を印象づけ、衣装の緑や赤はステンドグラスのような輝きを放っている。驚愕するのはロセッテイは麻薬中毒で健康状態が終始不安定だったのに、作品は死ぬ間際までしっかり描いていること。やはり、この画家は天才。

真ん中のミレイの絵はテート・ブリテンには展示されてなく、Bunkamuraの回顧展(9/12)ではじめて対面した。‘マリアナ’や‘木こりの娘’同様、マリアやヨセフ、キリストの肉体の精緻な描写と木の質感の見事さにしばらく立ち止まってみていた。この絵で忘れられないのが右にいる幼い洗礼者ヨハネの目つき。日本画家の土田麦僊の絵に、女の子を泣かせた男の子が申し訳なさそうにその女の子を横目にみている絵があるが、これがヨハネがキリストを横目でみるところとそっくり。

ホイッスラー(1834~1903)の絵は日本であった展覧会でもみたから二度目の鑑賞。構図は広重の‘江戸名所百景・京橋竹がし’を参考にしているのは明らか。青一色の背景に光る黄金の点々が視線を引き付け、対象のぼやけた描写や船頭や上の橋を渡る人々のシルエットはノククターンの題名がぴったりの詩情を漂わせている。

ラスキンの侮辱的な批評を訴えた裁判で裁判官からは橋の上の影をさして‘これは人間なのか?’と尋ねられ、ホイッスラーは‘お好きなようにお考えください’と答えている。何であれ先駆者の心は普通の人にはなかなかわかってもらえない。

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