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2008.12.07

レオナール・フジタ展

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一人の画家の画業については回顧展を2回くらい体験すると、だいたいイメージできるようになる。だから、上野の森美で現在開催されている‘レオナール・フジタ展’
(11/15~09/1/18)は楽しみにしていた。06年、東近美であった‘藤田嗣治展’(拙ブログ06/4/4)からまだ2年半しか経ってないのに、またフジタの作品をまとまった形でみれるのだから、幸運な時の巡り合わせである。

だが、フジタの絵にそれほどのめり込んでない方は前回出品された絵が何点もでてくるので、パスしてもよかったかなという気分になるかもしれない。例えば、前回大変魅せられたパリ市近代美術館が所蔵する作品、愛らしい子供の絵‘アージュ・メカニック’、‘フランスの富(48図)’、宗教画‘礼拝’、‘キリスト降誕’、‘磔刑’、‘キリスト降架’、‘黙示録(七つのトランペット)’、‘黙示録(四騎士)’、‘黙示録(新しいエルサレム)’が再登場している。また、国内の美術館がもっている作品も図録をみると同じものがいくつも出品されている。

‘藤田嗣治展’は東近美、京近美、広島県美の3か所を巡回したが、この度は北海道近美、宇都宮美、上野の森美、福岡市美(09/2/22~4/19)、せんだいメデイアテーク(4/26~6/7)で展示される。出品作は今回も似たようなものだから、2年前にスタートしたフジタ展興行がちょっとお休みして、またはじまったと思ったほうがわかりやすい。

出し物の変更で一番大きいのが1928年に制作された幻の大作、‘構図’(ライオンと犬)と‘闘争’(Ⅰ・Ⅱ、エソンヌ県議会蔵)。この縦横3メートルの4点のうち、‘ライオンのいる構図’は2年前やってきた。‘犬の構図’は描かれた1年後の1929年、日本で展示されたらしいが、‘闘争’の2点は本邦初公開である。長いこと行方不明だったこれらの絵は92年に発見された。痛みがひどかったが、02~07年に本格的な修復が施され漸くもとの姿に戻った。その大作が目の前にある。

‘構図’のほうはさらっとみて、初見の‘闘争’の前に長くいた。上は‘闘争Ⅰ’。裸の男たちが2人または3、4人で取っ組み合いをしている。‘闘争’とタイトルがついているから、互いに激しく火花を散らして戦っている様子をイメージしていたが、顔の表情はそれほど怒りや憎しみに満ちているわけでもなく、オリンピック競技のレスリングの試合をみている感じ。バックをとったり、背負ったり、手を十字に固めたりしている。一番目立つのは真ん中で棒を持ち両足を大きく広げている男。股の下にいる犬も男と同じ方向をじっと見ている。その左では2匹の犬が人間同様、喧嘩の真っ最中。

ここでは女はただ男たちの戦いを不安げに眺めているだけだが、隣の‘闘争Ⅱ’では男に首を絞められたり、足を思いっきり引っ張られる女が数人いる。フジタはミケランジェロの‘最後の審判’に想を得てこの大作を描いたようだが、‘最後の審判’の地獄にいる人々の絶望的な姿や苦悩の形相にくらべると男女の顔や肉体にはそれほど張りつめたものは窺えない。

‘闘争’という題がぴったりなのが真ん中の猫の戦い。展示されていたのはよく東近美でお目にかかるものの別ヴァージョン。二つは構図がほとんど同じで、この色なし
(1932、松村謙三コレクション)のほうが東近美のもの(1940)より先に描かれている。猫の戦いが2点あったとはまったく知らなかった。

収穫はこの絵と下の‘イヴ’(1959、ウッドワン美)、そして‘聖母子’(1959、フランス個人蔵)。‘イヴ’では美しい裸婦の背景に動物たちが沢山描きこまれている。象、カバ、マントヒヒ、キリン、蛇、ダチョウ、ペリカンなどなど。じっとみているとイヴが女ターザンに思えてきた。

これで、フジタの作品には済みマークがつけられる。サントリー美大賞をとった林洋子氏の著書‘藤田嗣治 作品をひらく’(名古屋大学出版会)を読んでみたくなった。

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