国立新美&サントリー美の巨匠ピカソ展 その一
パリの国立ピカソ美術館は一度訪問したことがあるが、だいぶ前なので、美術館の記憶はかなり薄れている。現在,改装工事中のようで、そのお陰で所蔵作品約230点が日本にやってきた。国立新美とサントリー美の2会場で展示される(10/4~12/14)。お隣さんの美術館だから、どうせなら続けて見たほうがいい。
この美術館蔵によるピカソ展は過去2回(03年上野の森美、04年東京都現代美)開催されており、これらに今回の作品を加えれば(30数点は二度目の登場)、館蔵品の主だったものはほとんど展示されたことになる。パリに行かないでピカソ、ピカソで頭も心も満腹状態になれるのだから、日本は本当に美術大国。作品を館毎でなく一緒にして、いくつか取り上げて見たい。まずはお気に入りの女性画から。
上は最も気に入っている‘ドラ・マールの肖像’(1937)。これは館の図録でもこの展覧会でも表紙に使われている。キュビスム流の顔の描き方だから横顔がダブルで重なっているが、それほど違和感がなく美しい女性の肖像画をみている感じ。口びる、瞳、手の指のマニキュアの赤と手と顔の黄色の対比が目に焼きつく。モデルをつとめたドラ・マールはたとえキュビスム風に描かれても見る者をこれほど惹きつけるのだから、それはそれは華のある女性だったにちがいない。
が、彼女が感情を昂ぶらせて泣き出すともう手に負えない。‘泣く女’(テート・モダン)やマドリードの国立ソフィア王妃芸術センターにある別ヴァージョン‘ハンカチをもって泣く女’(拙ブログ07/3/25)では顔は先の尖ったガラスの破片を突き刺したように描かれている。どちらも同じドラ・マール。内面の動きを強烈に表現するにはキュビスムの描き方が一番合っている。
真ん中もお気に入りの‘読書’(1932)。ピカソの作品で最も好きなのは画面のなかに直線はわずかしかなく女性の体が丸みをおびたやわらかい線で描かれているもの。Myベスト3(順位なし)は‘黄色い髪の女’(1931、NYグッゲンハイム)、まだお目にかかってない‘夢’(1932、NYガンツコレクション)、そして‘読書’。
‘読書’は04年の東京都現美にも出品されたから、4年ぶりの対面。女性の体は紫で描かれている。乳房や曲がった手はきわめて平板に描かれているのに、顔だけは鼻のまわりが彫刻のように立体的。‘夢’との対面をもう何年も待っているが、なかなか実現しない。‘夢’のすれ違いに終わるのだろうか?
下は角棒や角箱を組み合わせたような‘膝をかかえるジャクリーヌ’(1954)。ジャクリーヌ・ロックはピカソが72歳以降、一緒に生活した女性。全体のイメージは角々していて硬い感じだが、鋭い目をした横顔に視線が集中する。すごく理知的な雰囲気をもった女性である。
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コメント
こんばんわ
私も、グログをひらきました。
上手くいかないし、自信もありません。
なんとかやってみますので、
どうぞ、よろしくお願いいたします。
ピカソは、初期の頃の作品が、好きです。
バラの時代頃までが、いいですね。
天才! と、いつも思ってます。
(それも、情熱的な・・・)
# 名前変えました #
投稿: Baroque | 2008.10.25 21:32
to Baroqueさん
ブログ開設おめでとうございます。私はすっと
書けないときは何を一番伝えたいのか、どの絵
を見てもらいたいのかを自分に問いかけてます。
ピカソは丸いフォルムの絵や泣く女とかゲルニカ
のような内面が爆発したような作品が大好きです。
感情表現の天才ですね。
投稿: いづつや | 2008.10.26 09:13
こんばんは。
「黄色い髪の女」は、ピカソ好きになった
きっかけとなった作品です。
最初にNYで見て感動したことが思い出されます。
投稿: meme | 2008.10.28 21:59
to memeさん
‘黄色い髪の女’がお好きでしたか。嬉しい
ですね。ピカソはこんなやさしい女性も描くし、
泣く女も描きます。
表現したい内面のイメージにより描き方をがら
っと変えるのですから、ピカソはやはり底知れ
ぬ才能の持ち主ですね。
投稿: いづつや | 2008.10.29 10:13