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2008.10.26

国立新美&サントリー美の巨匠ピカソ展 その三

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170点を展示する国立新美のテーマは‘愛と創造の軌跡’。これに対し、60点のサントリー美は‘魂のポートレート’。

ピカソが女性への愛や時代の空気、社会状況にたいする内面の揺れを表現するとき、その表現方法はいろいろ変化する。丸っこい顔をした清楚な女性が静謐な雰囲気につつまれ眠っていたり夢を見ている作品がある一方で、‘泣く女’や‘ゲルニカ’のように、大胆にデフォルメされた人物や動物なのに、内面の苦しみや悲しみが強烈に伝わってくる絵もある。

ロンドンのテート・モダンで‘3人に踊り子’(1925、拙ブログ2/11)を見たとき、ピカソのキュビスムというのは喜びにしろ悲しみにしろ感情を暴力的なほど激しく表現するにはもってこいの描き方だなと思った。上の絵は‘磔刑’(1930)。これをみるとカラリスト、ピカソを強く意識する。黄色や赤、緑、青の原色が目を楽しませてくれるので、ここに何が描いてあるのかはどうでもいいのだが、タイトルが‘磔刑’となっているので、古典画を思い起こしながらピカソ流の宗教画と向き合った。

十字架に磔にされたキリストやまわりにいる人物の体は‘3人の踊り子’のように極端に長細く、また手を上にあげている。左で口を大きく開けた人間は悲しみに暮れているのであろう。この口を開けて顔をそっくり返し声を発する姿は‘ゲルニカ’(07/3/25)に描かれた右の女にも見られるが、これをみるといつも昔楽しんだ谷岡ヤスシのギャグ漫画を思い出す。どうでもいいことだが、ニワトリの‘アサー!’はゲルニカにヒントを得たのだろうか?!

真ん中の‘コリーダ:闘牛士の死’(1933)は04年、東京都現代美にも出品された。これほど鮮烈なイメージが体に植えつけられる絵はそうない。視線は牡牛に一撃を食らって耐え難い苦しみを味合わされている白い馬に集中する。思いっきり曲がった首が痛々しい。

エネルギーの塊のような茶褐色の牡牛は古代社会における圧政の王のような感じで、背中にKOした闘牛士を乗せている。題名は‘闘牛士の死’となっているが、首が胴体から離れているように見える闘牛士より、白い馬と牡牛のほうが数倍インパクトがある。可哀そうな白い馬と強い牡牛は3年後に描かれたミノタウロスの絵、そして1937年の傑作‘ゲルニカ’にも登場する。

92歳まで生きたピカソが晩年に制作した絵は画面構成がゴチャゴチャしすぎで、退屈な絵が多いが、下の88歳のとき描いた‘接吻’(1969)は例外的に惹きこまれる。ピカソのお相手は2番目に妻、ジャクリーヌ・ロック。でも、‘抱擁’(1970)となると‘もういいよ!’という感じ。大回顧展をみたからピカソは当分お休み。

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