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2008.10.06

茅ヶ崎市美のS氏のコレクション展

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毎日の散歩のように日々の暮らしのルーチンになっている絵画鑑賞でも、ときどき何の予告もなく名画が目の前に現れることがある。その絵を見るため、現在茅ヶ崎市美で行われている‘S氏のコレクションー日本画の名品を中心にー’(9/14~11/9)に出かけた。

平塚にお住まいのS氏は70代後半の実業家らしい。今回そのコレクションの中から日本画57点、藤田喬平のガラス作品3点、青磁の人間国宝、中島宏のやきもの3点が展示されている。日本画は安田靫彦、前田青邨、川端龍子などビッグネームの作品があるが、お目当ての絵はこちらではなく上の山口蓬春の‘水田’。

この絵を一ヶ月くらい前、どこかの美術館にあったチラシでみたとき、すごく惹きこまれ、名品であることを直感した。実際、その通りのすばらしい花鳥画だった。白鷺に使われている胡粉や水草のうす緑にはまったく濁りがなく、とても瑞々しく明快な感じがする。日本画の美しさが200%でている絵かもしれない。

蓬春の描く鳥の絵では、羽ばたく鴨を描いた‘月明’(05/3/1)を最も愛していたが、‘水田’はこれ以上に魅せられる。2年前、神奈川県近美葉山館で開催された蓬春の回顧展にも出品されなかったから、よけいにサプライズの思いが強い。ちなみにこれは蓬春が亡くなる5年前、73歳のときの作品。本当にいい絵をみせてもらった。

真ん中は平塚市美の‘山本丘人展’(06年10月)にも出品されていた‘岩壁’。金色で彩色された角々の岩山の中央を流れおちる瀧の白が目に焼きつく。こういう男性的な風景は写実的に描くより、ザッザと筆を走らせ、色面で構成するほうがかえって自然のもつ荒々しさや力強さが伝わってくる。‘夕焼け山水’(06/11/14)同様、丘人作品を代表する一枚に数えられる名品ではなかろうか。

S氏は平塚に居を構える工藤甲人や茅ヶ崎生まれの鈴木至夫など、この地域ゆかりの画家の作品を多く蒐集している。工藤甲人の描く独特のシュルレアリスム日本画にはとても関心があるので、今回5点見れたのは幸運だった。とくに惹きつけられるのが代表作の‘夢と覚醒’(06/9/25)を思い起こさせる下の‘春を呼ぶ’。口を大きく開けた女性の顔を横から描き、そのまわりに蝶やわらびなどを装飾的に配置する構成はシュールで夢幻的な雰囲気に満ち溢れている。

どこかの美術館が工藤甲人の回顧展をやってくれると嬉しいのだが。期待して待ちたい。

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