大琳派展 その五 酒井抱一
江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一は宗達、光琳の画風やモティーフを継承した作品だけでなく、オリジナルの花鳥画、さらに仏画や浮世絵に近い風俗画も描いているから、100%琳派の視点で見るわけにはいかない。二人の絵には宗達、光琳とは違った魅力があり、目を見張らされる名画が沢山ある。
抱一は全部で40点、それに原羊遊斎とコラボした蒔絵の下絵が6点見られる。画集に載っている代表作はほとんど出ているから、この展覧会で抱一の通になれることは請け合い。東博からは抱一の代名詞‘夏秋草図屏風’(重文)と‘四季花鳥図巻’(真ん中の画像、拙ブログ05/9/15)。陽明文庫の‘四季花鳥図屏風’(06/8/15、08/1/10)、MOAの‘雪月花図’(05/7/2)、細見美の‘桜に小禽図’(06/10/29)。
出光美からは屏風が4点。銀地の‘紅白梅図’(10/7~19)と10/21~11/16に展示される‘風神雷神図’、‘燕子花図’、‘八橋図’(08/1/18)。また、山種が所蔵するとてもいい絵‘秋草鶉図屏風’、‘菊に小禽図’、‘葦に白鷺図’も10/19まで出ている。昨年末、三井記念美で見た‘水月観音図’(07/12/24)とも再会した。
心を揺すぶる絵はまだ続く。上の‘柿図屏風’(メトロポリタン美)を開幕前、出品リストで見つけたときは跳び上がるほど嬉しかった。光琳の‘波図屏風’とこれをMETから里帰りさせたのは大ヒットである。右に余白をたっぷりとり、左から斜め上にのびる柿の木を描いている。その単純化された幹の形や赤い柿の実からは寂寥感ただよう秋の情景がしみじみ伝わってくる。
もう一つある柿の絵、‘柿に目白図’(米国・ファインバーグ・コレクション)にも魅了される。隣に飾ってある山種の‘赤い菊’と赤の競演である。抱一は赤の見せ方がまったく上手い!ファインバーグ・コレクションは10/21から展示される‘十二ヶ月花鳥図’への期待がふくらむが、この柿と目白もすばらしい。
抱一作品で心を虜にするのは画面がすっきりしていてすごく洒落た感じのする花鳥画。これが抱一の一番の魅力!お気に入りのベスト3(順位なし)は‘四季花鳥図屏風’(陽明文庫)、真ん中の‘四季花鳥図巻’(東博)、‘十二ヶ月花鳥図’(三の丸尚蔵館、06/7/28、今回展示なし)。三の丸の‘花鳥画’があったら完璧だったが、これはファインバーグを楽しむことにした。
‘四季花鳥図巻’の楓の幹にとまる赤ゲラや白梅に積る雪を見ていい気持になっていたら、最後のコーナーでも大きなサプライズがあった。抱一が下絵を描いた原羊遊斎の‘四季草花蒔絵茶箱’(下の画像)。画集では何度も見ているが、こんなにすばらしい蒔絵だったのか!という感じ。また、隣にある同じく二人の合作‘蔓梅擬目白蒔絵軸盆’にも目を奪われた。抱一の洒脱なデザインセンスにはほとほと感心する。
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