« 平塚市美の速水御舟展 その一 静物画 | トップページ | 茅ヶ崎市美のS氏のコレクション展 »

2008.10.05

速水御舟展 その二 風景画

86
88
87
御舟が描いた南画風の風景画は黄土を基調にしているので、画面が明るく、温かい空気が流れている感じがする。お気に入りは東博蔵の‘近村 紙すき場’(拙ブログ05/12/15)と久し振りにみた広島県美蔵の‘隠岐の海’。幅の狭い縦長の画面一杯を使って家や海、田畑、人々を低空で飛ぶヘリコプターから眺めたような感覚で描いている。おもろしいもので画面が窮屈な割には奥行きが感じられ、広々とした空間をイメージできる。

御舟の創作活動に大きな影響を与えた今村紫紅が35歳で亡くなったあと、御舟は京都に滞在する。そこで生まれたのが上の‘洛北修学院村’。御舟が黄土の次にとりつかれたのが青。この群青は半端な群青ではない。とても深い青で神秘的な雰囲気が漂う村の風景は過去の出来事や思い出が突然フラッシュバックとなって出てくる映画の一シーンを見ている感じである。日本画の風景画というより表現主義の画家が描く風景画に近い。久しぶりの対面だったが、再度ズキンと心の襞に刻みこまれた。

日本海の深いところで山々の心象風景をイメージするような‘洛北修学院村’に比べて、真ん中の‘丘’はよくみる光景が実にリアルに描かれている。少し傾斜した地面に伐採された切株と三角形に積まれた薪がみえる。その後ろには幹が一部白くなった雑木林が細密に描かれ、右には赤松の若木が一本まっすぐにのびている。

今回、御舟の木の幹や細い枝の描き方が加山又造と似ていることに気づいた。細い枝の一本々をこれほど精緻に表現する画家は御舟と加山又造のほかにはいない。若い頃の加山は木々をデザイン的に描いているのに対し、御舟は‘丘の並木’に見られるように細い木でも強い生命力でしっかり立っているように表現している。

下の‘京の家・奈良の家’(これは奈良の家)では画風がまた変わる。家の壁が白や土色の色面で構成されたこの絵をみているとすぐ奥村土牛の‘大和寺’(9/19)を連想する。この絵とは4年前、東近美の平常展で対面し大変魅せられたが、その後なかなか登場しなかった。東近美蔵ならいい絵は2,3年のサイクルで展示するのに、なぜか遅いな思っていたが、その理由がわかった。これは東近美蔵ではなく、個人が寄託していた作品だった。

今回の収穫のひとつが御舟が欧州を旅行したときの印象を描いた‘アルノ河畔の月夜’。本当にすばらしい絵。見てのお楽しみ!

この回顧展には‘名樹散椿’(05/3/9)や‘炎舞’(07/6/20)など山種美が所蔵する作品が一点もでてない。これはどうしたことか?山種は来年秋、広尾にオープンする新館の開館記念展を速水御舟展にすることをなっている。で、元山種にいた草薙奈津子氏が館長をしている平塚市美は貸し出しの依頼を遠慮して、山種以外の美術館や個人がもっている作品に絞り、二館で展示作品の棲み分けを行ったのだろうか?それとも草薙館長と山種の若い女性館長は仲が悪い?

展覧会は大満足だったのに、帰るときどうでもいいことをあれこれ考えてしまった。

|

« 平塚市美の速水御舟展 その一 静物画 | トップページ | 茅ヶ崎市美のS氏のコレクション展 »

コメント

こんにちは。
私もつい先日、御舟展に行ってきまして、感動をしてきたのですが、山種美の作品が1点も出ていないことに不思議に思ったので、いづつやさんのブログを拝見してつい書き込みです^^
展覧会、ほんとに素晴らしかったですね。
来年の山種美の展覧会も楽しみです。
いづつやさんとは、絵の好みがすごく近いなと(勝手に)感じております^^

投稿: えとこ | 2008.11.11 22:52

to えとこさん
はじめまして。書き込み有難うございます。
絵の好みが合う方とお話ができるのをとても
喜んでいます。

近代日本画家のなかで御舟の画技の高さは
スーパーといっていいほどすごいと思います。
これまで、大きな回顧展に遭遇しなかったも
のですから、大きな満足が得られました。

来年、山種の新館で行われる御舟展では他館や
個人がもっているのを山種自慢のコレクション
に加えてもらいたいですね。山種蔵だけです
と、もう何回もみてますから、ちょっと新鮮味
に欠けます。期待に応えてくれるでしょうか?

投稿: いづつや | 2008.11.12 10:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 速水御舟展 その二 風景画:

« 平塚市美の速水御舟展 その一 静物画 | トップページ | 茅ヶ崎市美のS氏のコレクション展 »