浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展 その一
太田記念美術館で現在行われている‘浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展’(9/2~9/28)には期待値を大きく上回るすばらしい浮世絵が出品されている。
作品数は前期(9/2~15)が79点、後期(9/17~28)が80点。このうち通期に出ずっぱりのものが8点あるだけで、作品は総入れ替えになるから、あまりのんびりしてはいられない。前期を見られ、図録を購入された方はたぶん後期にもでかけなくてはと思われるかもしれない。
摺りの良さといい、国内でみたことのない画題といい極上の浮世絵コレクションである。数が多いのが春信(7点)、歌麿(17点)、写楽(9点)、後期にもこれと同じくらいの数が出てくるのだから驚き。もちろん、北斎、広重、清長、春章、国貞、国芳なども揃っているから、‘浮世絵は楽し!’モード全開といった感じ。
感激が全身に広がったのが春信作品。すばらしい色合いに息を呑んでみた。しかも、これまでみたことのないものがいくつも含まれているからスゴイ。上ははじめての‘めだかすくい’。小さい頃、川でよくみたメダカだが、春信は懐かしい遊びを思い出させてくれた。これが絵の力。本当に有難い。
淡い中間色に震えるくらい魅せられるのが‘漢詩を作る若衆’と‘三十六歌仙 素性法師’。春信には‘夜の梅’とか‘夜の萩’といった背景に使われた‘黒の美’に200%心打たれる絵がいくつかあるが、今回これらと同じくらい惹きつけられる‘寄菊’があった。後期にも赤丸つきがあるのでワクワクしている。
真ん中は国芳の戯画シリーズ‘金魚づくし’の一枚‘にわかあめんぼう’。ほかに‘さらいとんび’、‘酒のざしき’、‘まとい’がある。あめんぼうともよく遊んだ。あめんぼうというのは雨が降ると池の水面をよけいに元気にスイスイと動き回る。一方、金魚たちは突然の雨に大慌てで、蓮の葉や自分の尾びれを傘にしている。
10年くらい前、サントリー美であった国芳の大回顧展でもこの絵はみたが、今回の金魚の赤や画面上の藍色のほうが数段いい。この絵のように、海外から里帰りした摺りの状態のいいものをみるたびに、‘浮世絵の楽しみは色!’を再認識する。
下の広重作、‘東都名所高輪廿六夜待遊興之図’も収穫の一枚。興味深く見たのが道を行きかう人々の後ろに並ぶ屋台。画面の左から‘おしるこ’、‘団子’、‘そば’、‘天ぷら’がみえる。この画像にはでてこないが右のほうには‘寿し’がある。好物を食べながら花火を楽しむ。江戸の庶民にとって幸せな気分になれるひと時だったにちがいない。
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コメント
東博の菊慈童といい、こちらのめだかすくいといい、
サワサワ、ザワザワと流れる川の流れに見とれてしまい
ました。
春信にどんどんのめりこんでいきます。
投稿: 一村雨 | 2008.09.11 19:01
to 一村雨さん
太田記念館と東博で春信がコラボしてますね。
ロイヤルコレクションの春信は色合いが本当に
すばらしいですね。春信好きとしては大感激
です。
これらはほとんど初摺りではないでしょうか。
淡い中間色や赤がくっきりでてて、もうたまり
ません。
投稿: いづつや | 2008.09.11 22:55
こんにちは。
本当に春信の色って当時こんな色だったのかと
我が目を疑ってしまうほど鮮やかですよね。
江戸博のボストン展益々楽しみになって来ました!
投稿: Tak | 2008.09.16 16:17
to Takさん
春信作品のすばらしい色合いに感激しました。
ここ2、3年海外の里帰り浮世絵に痺れっぱ
なしです。
こうした摺りのいい浮世絵を年に2回もみれ
ればもういうことなしですね。ボストン美に
もワクワクしてます。
投稿: いづつや | 2008.09.16 22:13