百寿を超えて その二
明治以降に活躍した女流日本画家で好きな画家は?と問われると、すぐ上村松園、小倉遊亀、片岡球子と答える。その遊亀と球子の絵が土牛と一緒に飾ってある。遊亀が5点、球子が6点と数は少ないが、山種が所蔵するベストのものが全部でているからとても楽しい。
二人の絵を見る機会はそれほど多くない。東近美で定期的に展示される遊亀の‘浴女その一、二’は印象深く体の中にインプットされているが、そのほかの花の絵などは山種でたまにみるくらいであり、球子の‘面構’シリーズや富士山の絵ともなかなか会えない。だから、わずかな数でも貴重な鑑賞体験である。
今回取り上げたのは大変気に入っている遊亀の‘舞う’(上の画像)、‘涼’(真ん中)、そして球子の‘むすめ’(下)。流石、山種はいい絵を所蔵している。‘舞う’は2点が一緒に並べてあり、これは左の‘舞妓’で、右は‘芸者’の舞。遊亀の描く女性は丸顔でちょっとえらがはっているのが特徴。誰かに似ている?!そう、安達裕美を舞妓に変身させたらきっとこんな感じになる。
コローの‘草地に横たわるアルジェリアの娘’(拙ブログ6/19)が不機嫌なときの安達裕美なら、この舞妓はあの子役のとき(今でもそうだが)のニコニコ顔の裕美ちゃん。安達裕美がとくに好きというのではないが、このすばらしい美人画を最初にみたとき、当時子役の裕美ちゃんをすぐ思い浮かべたから、そのイメージが体に沁みこんでいる。
今は彼女も結婚して子供もいる大人の女性なので、右の黒地の着物を着ている芸者のほうに似てきた。この‘舞う’を見るのは3度目くらいだったが、いつも爽快な気分になる。
真ん中の‘涼’のモデルは京都先斗町の老舗料亭の女将。旅先の旅館で女将が正座して挨拶する姿に感じ入ることが多い。旅館とか料亭で働く女性の当り前の作法とはいえ、この絵の女将のようにおもてなしの心が直に伝わってくる女性に接し、くつろぎのひと時を過ごせたらいいなと思う。
球子の絵は面構シリーズの‘北斎と馬琴がゆく’、‘鳥文斎栄之’など4点と‘むすめ’が2点。目を楽しませてくれるのが青の背景に描かれた卵型の白い顔がとても可愛い下の‘むすめ’。My好きな女性画の上位は鏑木清方の絵で占められているが、この絵もそれらに伍して存在感を発揮している。記憶に長くとどまる遊亀・球子の作品だった。
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