帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会
東博の平常展同様、展示品を定点観測している三の丸尚蔵館では現在、‘帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会’(無料、7/19~12/14)を開催中。会期は4期あるが、お目当ての橋本雅邦の‘龍虎図’(上の画像)が展示される2期(8/30~9/28)になったので早速出かけた。
あまり広くない部屋に会期中35点でてくる。見どころはなんといっても1900年のパリ万博に出品された絵画、やきもの、彫刻、明治七宝などのお宝15点。これらを制作したのは超一級の技をもった帝室技芸員。
15点のうち半分くらいをこれまで‘皇室の名宝展’(東博、99年)などで見て、そのすばらしさを体験済みだから、初見の‘龍虎図’にも胸がふくらむ。右上にいる龍はあまり目立たないが、左の岩の上にいる虎に見入ってしまう。そして、龍と虎の間に描かれた波のうねりが虎に負けず劣らず迫力がある。波頭の先はなんだか燃えさかる炎みたいだし、小さな白い点々で表現された波しぶきにも目が点になる。
これほどダイナミックにかつ繊細に描かれた波は見たことがない。06年、新橋の東京美術倶楽部で開かれた‘大いなる遺産 美の伝統展’でみたこの絵の別ヴァージョンや今年1月の‘橋本雅邦展’(川越市美)で出品されていた下図に比べると数倍の満足が得られた。
長年の思いの丈が叶えられたので、あとは気楽に鑑賞した。真ん中は過去数回みて目が慣れている石川光明の牙彫作品、‘古代鷹狩置物’。こんな象牙の置物がリビングにあると毎日が楽しいだろうなあー!柔らかい象牙の質感と見事な彫りに思わず手にとって見たい衝動に駆られる。
下は‘明治の七宝展’(泉屋博古館分館、7/19~9/15、拙ブログ8/2)で紹介した並河靖之が制作した‘四季花鳥図花瓶’。これは背面のほうで、艶のある黒地に映える緑の紅葉がえもいわれぬ美しさを漂わせている。表面の山桜にくらべると、紅葉の背景がたっぷりとられており、枝にとまったり飛翔する鳥にも吸い寄せられる。
名品はほかにもある。音楽が流れているのではないかと錯覚する川之邊一朝の‘石山寺蒔絵文台硯箱’や佐々木清七の作で、大変コンディションのいい大きな‘大太鼓図織物壁掛’にも魅了された。
当初は2期だけで充分と思っていたが、図録をみるとパリ万博の出品作ではないが、今尾景年の‘花鳥之図’にすごく惹かれるので、これが展示される3期(10/4~
11/9)にまた訪問することにした。
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