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2008.08.02

泉屋博古館分館の明治の七宝展

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展覧会のチラシは時々、出動を決意させるのに大きな力を発揮することがある。今回出かけた泉屋博古館分館で行われている“明治の七宝展”(7/19~9/15)はまさにそう。三井記念美で手にした上の蝶が描かれた瓶の載っているチラシをみて即、訪問を決めた。

これをつくった明治の近代七宝を代表する並河靖之(なみかわやすゆき)の名前は知っているが、お目にかかった作品は代表作の“四季花鳥図花瓶”(三の丸尚蔵館)などほんの数点。普段、こういう明治の七宝にはまったく縁がないから、関心もいま一つ。

だが、今回展示してある七宝のコレクションとしては世界屈指という京都の清水三年坂美術館蔵の約130点と東博や京博などから集められた20点をみて、一気に七宝の魅力にとりつかれてしまった。息を呑むほど美しい七宝の瓶や壺がずらっと揃っている。京都にはよく出かけるのだから、もっと前に清水三年坂美を訪問しとけばよかった。

明治の七宝は尾張の梶常吉(1803~1883)がはじめたものだが、これを最高のレベルにまで高めたのが並河靖之(1845~1927)。万国博覧会や国内の展覧会に出した作品は高く評価され、海外の美術館やコレクターに高値で買い取られた。今回全部で37点ある。そのなかで夢中になってみたのが上の“蝶図瓶”と真ん中の“桜花に蝶図皿”。“蝶図瓶”では並河の代名詞となった艶のある黒地に大きな蝶が浮かび上がっている。精緻に表現された羽根の模様にうっとり。

うす緑の地に同じくらいの数匹の蝶が中心をまわるように描かれた皿にも惹きこまれる。速水御舟の美しい蛾の絵、“炎舞”(拙ブログ07/6/20)とか“粧蛾舞戯”(08/6/4)を見ているときのように高揚した気分になった。縦長の壺に描かれた花は桜、紫陽花、梅、藤などだが、上から垂れる様子が壺の形とよく合っている藤花にしばらく見とれていた。

並河作品に続いて並べられているのが東京で活躍した同じ名前の涛川惣助(なみかわそうすけ、1847~1910)の壺や皿。16点ある。この中に03年、東芸美で開催された“工芸の世紀展”で見た“七宝嵌入屏風”(東博)があった。こちらの涛川も並河同様、高い技量のもちぬし。二人は明治29年(1896)に帝室技芸員に任命されている。

涛川は釉薬を差したあと金属線を抜く無線七宝で作品を制作したため、鳥や花の輪郭がやわらかく、まるで絵筆で描いたような印象を受ける。お気に入りは下のいかにも蛍が飛んでいるような“菊紋蛍”。壺の質感がツルツルしたお菓子“チェルシー”を連想させる“藤図花瓶”にも足がとまった。

両“なみかわ”の名品のほかにも目が点になる絢爛豪華な七宝がいっぱいあり、もう大満足。期待値を大幅に上回るすばらしい展覧会だった。

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