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2008.07.17

西村画廊の町田久美新作展

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日本橋高島屋のすぐ近くにある西村画廊で町田久美の新作展 Snow Dayを見た。普段、画廊で絵をみる習慣がないから、展示の部屋に入るにもちょっと緊張する。今回展示してあるのは07年、今年制作された9点。

これまでに見た町田久美の絵はわずか2点しかない。昨年、東京美術倶楽部であった“21世紀展”にでていた“睡眠”と“東京コンテンポラリーアートフェア2007”でみた“レンズ”。町田久美の名前と作品を知ったのは06年東現美で開催された“日本画から日本画へ”のチラシに載っていた“ごっこ”という作品。ほかの作家の絵に関心がなかったのでこの展覧会は見なかったが、町田久美の絵にはすごい衝撃を受けた。

縄とび遊びをしている二人の子供が真上から描かれている。きれいな描線に惹きつけられるが、それ以上にびっくりするのは人物をとらえる視点。この絵から連想する西洋画が二つある。一つは短縮画法で描かれたマンテーニャの“死せるキリスト”(ブレラ美)。もう一つはダリの“十字架の聖ヨハネのキリスト”(グラスゴー・アート・ギャラリー)。“ごっこ”の直接的なイメージはダリの絵のほうに似ている。

町田久美の作品に関する情報が少ないので、この作家の画風全体のことはわからないが、美術雑誌“アート・トップ、歌麿特集”(07/5)には同じような上からの視点で見た“来客”(大原美)が載っていた。今回の新作展に対する期待も当然こういう見る者をハッとさせる視点から描かれたもの。

上の“雪の日 Snow Day”(08年)は上からではなく下から人物を見上げる絵だった。しかも再接近ローアングル。登場人物は例の丸坊主の男の子?この丸さがとても気に入っている。右の上ポケットからでているのは一体何?目ん玉は不気味な赤。

真ん中の“とまり木”(07年)と下の“ことほぎ”(08年)では二人の人物は後ろから描かれ、顔は見せてくれない。“睡眠”でも子供は白い布きれを頭から被り、顔を見せてないが、“とまり木”のほうが怖いムードがゆらゆら漂っている。電線に腰をかけている左の女の子?の白い服は鋭利な刃物で切られ、口があいている。右の女の子をみると服の頭部分が切り裂かれている。切り口を赤で彩色しているのは血をイメージさせるため?

町田久美でも束芋でも若手女性アーティストは肉体を切り裂くのがお好き。束芋はいとも簡単に指をチョン切るし、町田久美も“成分”(07年)のように手のひらにスプーンの先を突っこむ。ぞくぞくとした怖さがある。

“ことほぎ”は一見すると恋人同士が体を思いっきりくっつけあう楽しい場面に見えるが、頭の大きなこぶや合体した耳は長くみていると何かへん。そう、やっぱり不安な気持ちが掻き立てられる。

町田久美はこれからどんな作品を制作していくのだろうか?個人的な希望としては、大きな画面に沢山の人たちがでてくる群像画を描いてもらいと思っている。のびやかな太い墨線はすごくインパクトがあるから現状のままでも多くのファンを惹きつけるだろうし、国際的な評価も上がっていくことだろう。

でも、白黒で色数も少ない作品だから、いくらインパクトのある作品といっても小さな絵だけだと、10点くらいみたらもういいやということにならないだろうか?正直言うと、見終わったあと、この作家についてはそんな感じを持った。だから、高崎市タワー美術館で開催されている回顧展(8/24まで)はパスすることにした。

また、奈良美智が青森県美のために大きな立体作品“あおもり犬”をつくったように、絵だけでなくオブジェなどにも挑戦したらおもしろいと思うのだが。町田久美の描く人物のやわらかさ、丸さ、ハットする視点からの構成にぞっこん惚れているので、これからの作品に注目したい。

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コメント

町田さんといえば"大作の人"というイメージなのでいづつやさんの感想は新鮮でした。
小品しか見た事が無いのでしたら、高崎の展覧会はオススメですよ!
2メートルや3メートルを超える作品が揃ってます。

投稿: okuyama | 2008.07.18 01:49

to okuyamaさん
町田久美の絵はまだ両手くらいしか見てません
ので、よく作品を見られてる方にはへんな感想に
なっているかもしれません。

“雪の日”は2メートル近くの大きな絵ですが、
画面に余白がなく、腰から下がありませんので
大きい絵という印象が残らないのです。手元に
ある図版のままで、スケール感がありません。

これはこの作家の描く人物像がどれも姿態の
すべてがみえず、また極端に背景を少なくして
いるからだと思います。ですから、絵が窮屈
なんですね。これが魅力といえば魅力ですが。

でも、全体像を想像させすぎると、見ている者
はちょっとフラストレーションがたまります。
実は目ん玉を握っていたり、肉体を切ったりする
怖い絵はあまり好きではなく、“ごっこ”の視点の
いろんなヴァリエーションを期待していたのです
が、今回の作品では求めていた感動の半分
くらいしか得られませんでした。


で、2メートル以上の大画面に視点は今のままで、
背景が十分あり、画面からはみだすことのすくない
どちらかというと今ある絵とは逆の中心性のある
群像画をみてみたいと思っているのです。町田久美
がどんな方向をめざしているのかは知りませんが。

高崎には大作があるのですか?検討し直さないと
いけないですね。情報ありがとうございました。
助かります。

投稿: いづつや | 2008.07.18 11:02

こんにちは。
私もそれほど多くは町田さんの作品を
拝見していないので、高崎へは是非出かけようと
思っております。来月中ごろになってしまいそうですが。

投稿: Tak | 2008.07.19 17:16

to Takさん
こんばんは。町田久美が本当に好きになれるか、
今回の新作展をみて半々になってきました。

Takさんもお気に入りの山口晃さんが今“渡海
文殊”のような大作の見立て日本画を描いてら
れるように、“うわーすごい”と思えるような大作
を町田久美さんにも期待しているのですが。

高崎にはリスク半分で行ってみてもいいなとい
う感じです。そのあと、この作家に対する好み
を決めたいと思います。

久しぶりに暑気払いの席でこの美女がお描きに
なる絵についてお話しますか!

投稿: いづつや | 2008.07.19 22:58

こんばんは。

>久しぶりに暑気払いの席でこの美女がお描きに
>なる絵についてお話しますか!

良いですね!!
8月4日に出張から戻りますので
それ以降でしらたokです。
楽しみにしております。

投稿: Tak | 2008.07.19 23:10

to Takさん
今日も暑いですが、今年も猛暑が続きそうですね。
出張からお帰りのあと充分お休みになって、暑気
払いの宴席をセットしていただくと助かります。

やはり、ビッグイベントの“フェルメール展”の
あとでしょうか?展覧会はとくにこだわりはあり
ませんからどれでもいいです。また、いきなりの
宴席でも結構です。

いつものTakさん流でアレンジしていただければ
それに合わせます。よろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2008.07.19 23:48

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» 町田久美"Snow Day" [弐代目・青い日記帳 ]
西村画廊で開催中の 「町田久美 Snow Day」に行って来ました。 ギャラリーに入るとまずめに飛び込んできたのが、今回の新作の中の一点「ことほぎ」。いままでにないほど「赤色」が画面に占める割合が高い作品です。 「おーーこれが新作か〜」と思うのと時同じくして、視界の中に町田さんが、いつもの黒を基調とした服装で立っていらっしゃること確認。 「『ことほぎ』随分と赤が目立ちますね」と挨拶をした後、早速ご本人に伝えると。「そうですか。白も目立ちますよ」と切り返しが。 ... [続きを読む]

受信: 2008.07.19 17:14

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