北京故宮 書の名宝展
江戸東博で行われている“北京故宮 書の名宝展”(7/15~9/15)を見た。普段、筆をとって文字を書くことがなく、書についての知識が極めて乏しくとも、この展覧会は絶対見逃せない。
書をやられている方なら、心拍数がバクバクものの王義之(おうぎし)の“蘭亭序”(唐時代)が北京の故宮からやってくるのである。しかも、書道の教科書に載っている一番有名な“神龍半印本”が。来場者の多くはやはり書を知っている方。まわりで飛び交う話は“はね方がいいわね、このあたりが上手く書けないのよね”とかなり専門的。
作品リスト(65点)のなかで知っている書家は欧陽詢(おうようじゅん)、顔真卿(がんしんけい)、米芾(べいふつ)、薫其昌(とうきしょう)と少ないから、“蘭亭序”のところにたどりつくまで時間はあまりかからない。でも、王義之の“蘭亭序”の前ではピタッと流れがとまる。皆、最前列でしっかりみたいから、どうしても時間がかかってしまう。
で、“神龍半印本”、同じく故宮にある“張金界奴本”、“褚遂良臨本”の3つの画像が一緒に並べられたパネルとか“蘭亭序”の全訳をしっかりみて時間がたつのを待つ。“神龍半印本”はほかの二つと比べると明らかに字がくっきりしている。王義之が書いた詩集の序文の内容をだいたい頭の中にいれたところで、ようやくこの有名な墨跡と対面。
2年前、東博であった“書の至宝展”(拙ブログ06/1/14)で王義之の墨跡は“孔侍中帖”(国宝、前田育徳会)があったが、“蘭亭序”は当然ながら拓本(07/6/9)のみ。目の前にある墨跡も原本ではないが、原跡より敷き写しされたものだから、拓本よりはぐぐっと王義之の書に近づいた感じがする。書をやっている方は目つきが全然違う。これをテキストにして何度も〃臨書をされたことだろう。
素人の目にも何回かでてくる“之”の字が違っていることがわかる。後でみたガイドビデオによると、これを書いているときの王義之の心の状態がそのまま字に表れているからだという。“書は心を写す”ということか!これが今回の一番の収穫。
真ん中は黄庭堅(こうていけん)の“草書諸上座帖巻”(宋時代)。何が書いてあるのかさっぱりわからないが、字の形になぜか惹きつけられる。そして、下は文徴明(ぶんちょうめい)の“行草書西苑詩巻”(明時代)。東博平常展でみた米芾の筆法(07/10/18)ように一行に大きな三つの文字が並んでいるので、見やすい。当座はこういうタイプの書を一生懸命みることにしている。
王義之の拓本でない“蘭亭序”を見れたので大満足。この展覧会は一生の思い出になる。
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