東博浮世絵エンターテイメント! 歌麿・北斎
平成館で開催中の“対決ー巨匠たちの日本美術”に歌麿と写楽のいい絵がごそっと展示してあるから、平常展(7/1~7/27)の作品に配分する鑑賞エネルギーがいつもよりは少ない。で、ガス欠にならないよう、重点鑑賞絵師に絞ってみた。
春信は“ささやき”と“風流六哥仙・僧正遍照”の2点。“僧正遍照”はなかなかいい絵。画面を上下に分断する石造りの太鼓橋に角隠しをした二人の女性がおり、扇子をぱたぱたさせながら、池の蓮の花を眺めている。横線で表された水面の揺れがリズミカルで、蓮のうす緑が目に心地いい。
歌麿は上の“両国花火”と“桃の皮むき”。“歌麿 vs 写楽”の名画を見たあとで、感動の袋がはちきれそうだったから、あまりいい絵が目の前に現れるとどうなるかと思ったが、こういうときには手ごろな絵だった。“両国花火”は手元の画集に載っているから、前々から見たかった絵。
三枚続の絵でこれは真ん中部分。広重の賑やかな花火絵(拙ブログ07/8/9)と較べると、ずいぶんゆったりした花火の風景である。真ん中上部に花火がはじけたところを太い赤の線でみせ、それを両国橋の上にいる女たちと子供が左右から見上げている。歌麿は流石、巧みな画面構成をする。これは大収穫だった。
勝川春章が描いた“湯上り団扇持ち美人”の太股にすこしザワザワしたあと、北斎の“花鳥図”のところにしばらくいた。このシリーズは10点あるが、前回が“牡丹に蝶”、そして今、真ん中の“朝顔に蛙”と“芥子”が飾られている。
太田記念美であった“ギメ美展”のときは、“朝顔と蛙”の蛙がどこにいるかわからずイライラしたが、今回はすっと蛙に目を寄せることができた。隣りの方に、“蛙がどこにいるかぱっとみて見つけて!”と試してみたが、意外に早く見つけられてしまった。で、“あのときは自分だけが鈍かったのか!”と元気を失いかけた。
今回の見どころは北斎の“百物語”。コンディションのとてもいい“さらやしき”、下の“笑いはんにゃ”、“しうねん”、“小はだ小平二”、“お岩さん”の5点が全部でている。夜だと怖くてとても見れないのが“さらやしき”のお菊と“笑いはんにゃ”ではんにゃが手につかんでいる子供の生首。うす青で彩色されてた顔は昼間でも長くはみてられない。
これに対し、お岩さんは漫画チックなお化け!こんなユーモラスはお岩さんだったら、恨みのひとつやふたつは聞いてやれる。“私もちょっと恨み疲れちゃってさー、最近元気がないのよ。歯がだんだん欠けてきて、口が開きっぱなし。どお、怖く見える?間抜けな顔にみえる。そうよね、昔の凄みのある怖い顔を取り戻すにはどうしたらいい?” “それはねー”。愚痴のお付き合いはほどほどにして部屋を出た。
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