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2008.07.31

対決ー巨匠たちの日本美術  天才デザイナー 宗達・光琳!

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この展覧会で俵屋宗達、尾形光琳の絵は14点みられる。これに本阿弥光悦と俵屋宗達の合作、和歌巻(2点)、および尾形乾山のやきもの(5点)を加えると、琳派作品は全部で21点。琳派狂いだから、アドレナリンがどっと出てくる。

これが終了しても、楽しみは終わらない。10月にはここでまた“大琳派展”(10/7~
11/16)が開催されるのだから嬉しさ二段重ね。文人画とともに今年は琳派の当たり年である。

後期にでてきたのは光琳の“孔雀・立葵図屏風”(重文)のみ。宗達と光琳の“風神雷神図屏風”は最後の期間(8/11~8/17)に登場する。14点のうち、会期中でずっぱりなのは宗達の“松図襖”(重文、養源院)、“蔦の細道図屏風”(上の画像、重文、相国寺)、“秋草図屏風”(奈良屋記念 杉本家保存会)、“狗子図”(拙ブログ07/10/21)、光琳の“白楽天図屏風”、“菊図屏風”(真ん中)、“流水図乱箱”(下)の7点。

上の“蔦の細道図”(右隻)はこれまで大きな琳派展を数回経験したのに、なぜか縁がなかった。図版でみると、金地と緑がもっと鮮やかなイメージだったが、実際はそれほどでもなかった。これはちょっと抽象ぽくてデザイン性の高い絵。右と左から突き出す感じの先の尖った緑の色面は土坡(どは)で、これに挟まれたところと右上に描かれているのが蔦。江戸時代初期にこんな現代アート感覚の作品を生み出すのだから、宗達の造形感覚は時代を突き抜けている。

真ん中の光琳の“菊図”はお気に入りの絵。意匠的に描かれた白菊の明るくてほんわかした雰囲気がとてもいい。これで3度目の対面だが、毎度〃装飾性に満ち溢れている画面を何時間でも見ていたくなる。咲き誇る菊の花は花鳥画を見ているというよりは、着物の紋様をながめている感じ。装飾の目的は見る者を楽しくさせることだから、この絵の依頼者は毎日が浮き浮き気分だったにちがいない。

下の“流水図乱箱”をじっとみていると、金と青で形づくられたゆがみのある円が自在に変形していくようにみえる。これはどうみても光琳定番の流水ではなく、現代アーティストの表現意欲を刺激するようなフォルム。規格外のデザインセンスは宗達から光琳にしっかり受け継がれている。

大芸術家の作品にもうメロメロ状態だったので、隣にいた外国人に“日本の芸術家ってすごいでしょう!”と思わず言ってしまいそうになった。

これで、“対決ー巨匠たちの日本美術”は終わり。全部で10回、お楽しみいただけましたでしょうか。取り上げなかった“等伯”、“鉄斎 vs 大観”、“運慶 vs 快慶”、“円空 vs 木喰”のコーナーにもいい作品がありますので、お見逃しなく。

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2008.07.30

対決ー巨匠たち日本美術 永徳・蕪村の新発見絵画!

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前期の展示では感動した作品を7組の“対決”スタイルで紹介したが、後期はこれをはずして、別の切り口で並べてみたい。本日取り上げるのはここ2,3年に新たに発見された作品3点。狩野永徳の描いた“松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風”(上の画像、右隻)と“洛外名所遊楽図屏風”(真ん中、右隻)、そして与謝蕪村の“山水図屏風”(下、右隻、MIHO MUSEUM)。

“松に叭叭鳥”と“山水図”は美術史家の辻惟雄氏(MIHO MUSEUM館長)が、“洛外名所遊楽図”は狩野博幸氏(元京博学芸員、現在同志社大教授)が発見した。今年
5/24の朝日新聞の記事で知った“松に叭叭鳥”は目の鋭い黒の叭叭鳥(右)と白鷺(左)が沢山描かれているので、画面に活気がある。とくに惹きつけられるのが右の滝。滝壺に飛び散るしぶきとその下に続く渦巻きが縦に重なったような水流はなにか生き物がうごめているみたい。

また、形よく曲がった太い幹の松と柳を力強く描き、左右に絶妙に配置する構成にも感心する。この屏風はもとは原三渓が所蔵していたが、久しく消息不明だったらしい。どういう経緯でまた姿をあらわしたのかわからないが、タイミングよくこうしたエポック的な大展覧会でお目にかかれるのだから、ラッキーというほかない。

“洛外名所遊楽図”は昨年あった永徳展で対面し、じっくり見た(拙ブログ07/11/10)。真ん中は天龍寺や渡月橋、嵯峨・嵐山が描かれた右隻のほう(部分)。右端が嵯峨の釈迦堂(清涼寺)で中央にみえるのが天龍寺。釈迦堂門前では、男たちが馬から米俵をおろすところや竹馬で遊ぶ子供たち、琵琶法師を追っかける犬がみえる。単眼鏡を使うと渡月橋の近くに描かれたおもしろい一行がよく見える。鷹匠たちが一仕事終えて家路についている。後ろにいる男の仕留めた鳥をさした棒を肩にかついで歩く姿が誇らしげ。

下の“山水図”は5月の“与謝蕪村展”(MIHO MUSEUM、5/6)でみたばかりだから、まだ記憶に新しい。蕪村が描いた銀地の屏風を一度、京博であった“18世紀京都画壇の革新者たち”(06年3月)でみたことがある。今回出ているのと同じ名前で画面構成がよく似ているのでまごついたが、二つは別物だった。また、もう一点、“秋景山水図屏風”というのがあるらしいが、現在行方知れず。

辻氏を驚愕させたこの山水図は蕪村が亡くなる一年前に描かれた。コンディションがいいのに加え、光の当たった銀地は白く輝く感じ。そんな金地とは別の雰囲気が漂う画面に東屋、湖、舟、人物、丸っこい岩や山、家、木々が墨でしっかり描かれている。右から左へ一本の道が続いており、ところどころ人が立話をしたり、てくてく歩いているのが印象深い。俳句の世界をイメージする絵とは趣の異なる蕪村の強い精神性がうかがえる作品である。

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2008.07.29

対決ー巨匠たちの日本美術  雪村・宗達・若冲

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連日大人気の“対決ー巨匠たちの日本美術”(東博、7/8~8/17)は今日から後期に入り、新しい作品が8点登場した。そのなかの2点が入場してすぐのところに飾ってある。雪舟 の“秋冬山水図”(国宝、東博、拙ブログ07/8/23)と上の雪村の“風濤図”(ふうとうず、重文、京都・野村美)。どちらも図版とはイメージのちがう小さな絵。

“秋冬山水図”は何回かみているので、初見の“風濤図”を釘付けになってみた。ここでも雪村お得の風の表現が冴えわたっている。帆がうしろに大きく曲がった小舟を見ると海面は大きくうねり、強風が吹きまくっている様子。岸辺の大きな木も風に倒されないように必死で踏ん張っている感じ。期待通りのいい絵だった。

後期で屏風が左隻に替わったのが、永徳の“花鳥図襖・松鶴芦雁図”(国宝、聚光院)、宗達の“草花図扇面散貼付屏風”(出光美)、“扇面散屏風”(三の丸尚蔵館)。コンディションがとてもいい真ん中の“扇面散”(部分、一、二、三扇)を前期の右隻同様、じっくり見た。

これは八曲一双の各扇に三面ずつ、全部で47面の扇絵(おおぎえ)が金箔地に貼り付けられている。ただ、一面だけは金地に直に書かれている。それが真ん中の右から三番目の扇の中段。ここに描かれているのは大半が保元・平治物語絵(36面)。左隻のほうが武者絵が多いので、武者の顔の表情、身につけている赤や緑が鮮やかな鎧兜、ダイナミックな馬のフォルムを夢中になってみた。

この武者絵以上におもしろかったのが三扇の伊勢物語絵。上段の雷神は“やあー、相変わらずカッコいいね!”と声をかけたくなる感じだが、下段の鬼と女にギョッとする。でも、鬼がユーモラスに描かれているから、ひるむほどのことはない。緑で描かれた鬼の口から真っ赤な血がしたたり落ちている。髪をひん握っている女の腕を食っているのである。腕のあとは顔でも食うつもりだろうか。凄惨な地獄絵をこれまで沢山みてきたが、鬼が女を食べるのははじめて見た!

二度目の鑑賞だから、会場を回るのは早い。図録や絵葉書の売場を通りすぎ、若冲の下の“旭日鳳凰図”(三の丸尚蔵館)をめざした。ありました、ありました!これは大好きな絵。2年ぶりの対面に浮き浮きしてくる。名画ほど見るたびに発見があるというが、あらたに気づいたことをいくつか。前回は右の横向きの鳳凰にフォーカスし、羽根の描写などをのめりこんでみたので(06/7/8)、今回は姿態がはっきりとらえにくい左の鳳凰を丹念にみた。

しゃがんだ鳳凰が足をかけている岩のすぐ下をみてほしい。ここは穴があいており、この穴に尾っぽが入ってきている。さらにその下に目をやると、ここにも穴があり、波頭が通り抜けている。ぱっと見ると平板な描き方のようにみえるが、画面の構成はなかなか複雑!羽根の精緻な描写で目につくのは胡粉の白だが、左の鳳凰は首裏の緑の羽根を右と同様に白で一本〃ふちどっているが、ほかのところの白はあまり目立たない。

30分も続いた鑑賞の締めはやはり右の鳳凰。なんともゴージャスで気品のある鳳凰である。何度みてもこの絵はすごい!蕭白の“鷹図”もとてもいい絵なのに、この絵の前ではかすんでしまう。

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2008.07.28

美術に魅せられて! 回顧展に熱心な京博と千葉市美!

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美術館で開催される日本絵画の展覧会は大体次の4つのタイプに分けられる。
①一人の絵師やある流派の創作活動を振り返り、あらん限りの代表作を所蔵する美術館や個人から集めてくる“大回顧展型”
②絵巻とか水墨画といった絵画の一つの分野にスポットを当て、名の知られた作品を展示する“分野型”
③あるテーマとかキーワード、例えば“かざり”を軸にして、この要素がみられる美術品を横断的に展示する“テーマ型”
④美術館が所蔵する自慢の名品をごっそりもってくる“美術館名品型”。

好みのタイプは何といっても①の回顧展。昔からこれが“展覧会の華”だと思っている。昨年、再刊された“週刊アーティスト・ジャパン”に登場する室町時代から江戸後期までに活躍した絵師は雪舟を筆頭に全部で25人。すでに遭遇した回顧展でその名画を目に焼きつけた絵師もいれば、なかなか回顧展が行われない絵師もいる。全員の回顧展を見れるのが理想だが、時代の好みもあるから、そう思い通りにはいかない。

日本の美術館のなかで、この回顧展を一番熱心に行っているのはどこか?それは京博(上の写真)と95年11月に開館した千葉市美。京博はここ10年くらいの間に、画聖・雪舟や現在、人気沸騰の奇想の絵師の回顧展を意欲的に実施してきた。
★伊藤若冲 (00年10月)
★雪舟 (02年3月)
★曽我蕭白 (05年4月、真ん中)
★狩野永徳 (07年10月)
★河鍋暁斎 (08年4月)
また、2010年には“長谷川等伯展”の開催が決まっている。

一方、千葉市美も開館以来、浮世絵師などを中心にした質の高い回顧展を連発している。まったくすばらしい!
★喜多川歌麿 (95年11月)
★歌川国芳 (96年1月)
★曽我蕭白 (98年3月)
★長沢芦雪 (00年4月)
★雪村 (01年1月)
★鈴木春信 (02年9月)
★岩佐又兵衛 (04年10月)
★浦上玉堂 (06年11月)
★鳥居清長 (07年4月、下)

このほかの美術館が過去15年のスパンで開催したビッグネームの回顧展をレビューしてみると、
★葛飾北斎:東武美 (現在は無し、93年1月)
★琳派:名古屋市博 (94年4月)
★東洲斎写楽:東武美 (95年10月)
★与謝蕪村:江戸東博 (01年2月)
★狩野探幽:東京都美 (02年10月)
★円山応挙:大阪市立美 (03年9月)

★琳派:東近美 (04年8月)
★琳派:日本橋三越 (04年10月)
★尾形光琳:根津美 (05年10月)
★葛飾北斎:東博 (05年10月)
★応挙・芦雪:奈良県美 (06年10月)
★与謝蕪村:MIHO MUSEUM (08年3月)

琳派展では本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳、尾形乾山、酒井抱一、鈴木其一らの代表作が並ぶ。今秋、東博で“大琳派展”(10/7~11/30)が開催される。

これから期待したい回顧展は、狩野山楽・山雪、池大雅(この二つは京博で)、英一蝶、菱川師宣、歌麿、。東博には千葉市美の歌麿展を見逃してから13年経つので、大歌麿展を、そして千葉市美には一蝶か師宣をお願いしたい。何事も願い事があるときはまず、帆をあげることにしている。どこかからいい風が吹いて、夢が実現するかもしれないので。

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2008.07.27

美術に魅せられて! 東博のパスポート券とぐるっとパス券

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今日は美術館が売り出しているパスポート券の話。3年くらい前から、東博(上の写真)の“年間パスポート券”(4000円)と“ぐるっとパス券”(2ヵ月有効、2000円)を利用している。

東博のパスポート券(真ん中)はものすごくお得感がある。何よりの魅力は特別展が6回見れるのと平常展を何回でも無料でみられること。これは京博、奈良博、九州博でも同様に使えるので、京都の特別展もこれで入場できる。これまで、“宮廷のみやび展”、“薬師寺展”、“河鍋暁斎展”(京博)、“対決ー巨匠たちの日本美術”のスタンプを押してもらった。

残り2つは“スリランカ展”と“大琳派展”を予定している。東博の特別展だけでは6つ全部消化するのはきついが、年に一回は京都へ美術旅行するから満足度の高い特別展がきっちり埋まる。さらに、ここへは平常展示される浮世絵、仏画、絵巻、書画、やきもの、刀などをみるために定期的に通っているので、このパスポート券はとても便利。

もうひとつのぐるっとパス券(下)は有効期間が2ヵ月なので、これが使える美術館で行っている展示内容により、買ったり買わなかったりする。2ヵ月くらいあけて7/23に購入したパス券をみると、三井記念美の企画展で使えるようになっていた。最近加盟したのかなと思っていたが、入口のところで前回の失敗を思い出した。

いくつか美術館をまわって“この券が使えるのはこの美術館までだな”と思い、ポイとゴミ入れに捨てた。ところが、三井記念美で観覧料を払っているとき“ぐるっとパス券が使えます”のプレートが目にとまった。“ええー?!、さっき捨てちゃったよ”と苦笑い。ここの企画展の質はいつも高いが、これが割引でなく料金を払わなくて入場できるのは大変有難い。

泉屋博古館や大倉集古館でも企画展に入場できるが、興味の湧かない展示内容もあるからパス券の効用は中くらい。これに対し、企画展に入場できる出光美、三井美、山種美、東京都庭園美はいい企画展を開催することが多いので、有効期間内にこれらの美術館を訪問するとすごく得した気分になる。

昨年は東近美の年間平常展パスポート券(1000円)を使っていたが、今年はお目当ての作品をだいたい見終わったので、購入を見合わせた。で、平常展の鑑賞はしばらくお休み。

美術館へ年間を通して何度も訪問される美術愛好家でも、意外にこの種のパスポート券を利用されてない方が結構おられる。ぐるっとパス券は有効期間が2ヵ月だから、“元をとるほど美術館へは行けないよ”という方が多いかもしれないが、東博のパスポート券は確実に格安で特別展や平常展に出品される名品をみられので、一度お試しになられてはいかがでしょう。

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2008.07.26

北京故宮 書の名宝展

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江戸東博で行われている“北京故宮 書の名宝展”(7/15~9/15)を見た。普段、筆をとって文字を書くことがなく、書についての知識が極めて乏しくとも、この展覧会は絶対見逃せない。

書をやられている方なら、心拍数がバクバクものの王義之(おうぎし)の“蘭亭序”(唐時代)が北京の故宮からやってくるのである。しかも、書道の教科書に載っている一番有名な“神龍半印本”が。来場者の多くはやはり書を知っている方。まわりで飛び交う話は“はね方がいいわね、このあたりが上手く書けないのよね”とかなり専門的。

作品リスト(65点)のなかで知っている書家は欧陽詢(おうようじゅん)、顔真卿(がんしんけい)、米芾(べいふつ)、薫其昌(とうきしょう)と少ないから、“蘭亭序”のところにたどりつくまで時間はあまりかからない。でも、王義之の“蘭亭序”の前ではピタッと流れがとまる。皆、最前列でしっかりみたいから、どうしても時間がかかってしまう。

で、“神龍半印本”、同じく故宮にある“張金界奴本”、“褚遂良臨本”の3つの画像が一緒に並べられたパネルとか“蘭亭序”の全訳をしっかりみて時間がたつのを待つ。“神龍半印本”はほかの二つと比べると明らかに字がくっきりしている。王義之が書いた詩集の序文の内容をだいたい頭の中にいれたところで、ようやくこの有名な墨跡と対面。

2年前、東博であった“書の至宝展”(拙ブログ06/1/14)で王義之の墨跡は“孔侍中帖”(国宝、前田育徳会)があったが、“蘭亭序”は当然ながら拓本(07/6/9)のみ。目の前にある墨跡も原本ではないが、原跡より敷き写しされたものだから、拓本よりはぐぐっと王義之の書に近づいた感じがする。書をやっている方は目つきが全然違う。これをテキストにして何度も〃臨書をされたことだろう。

素人の目にも何回かでてくる“之”の字が違っていることがわかる。後でみたガイドビデオによると、これを書いているときの王義之の心の状態がそのまま字に表れているからだという。“書は心を写す”ということか!これが今回の一番の収穫。

真ん中は黄庭堅(こうていけん)の“草書諸上座帖巻”(宋時代)。何が書いてあるのかさっぱりわからないが、字の形になぜか惹きつけられる。そして、下は文徴明(ぶんちょうめい)の“行草書西苑詩巻”(明時代)。東博平常展でみた米芾の筆法(07/10/18)ように一行に大きな三つの文字が並んでいるので、見やすい。当座はこういうタイプの書を一生懸命みることにしている。

王義之の拓本でない“蘭亭序”を見れたので大満足。この展覧会は一生の思い出になる。

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2008.07.25

アメリカ映画協会が選ぶ“勇気と感動ベスト100!”

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昨日、BS2で夜9時から放送されたアメリカ映画協会(AFI)が選ぶ“勇気と感動ベスト
100!”を楽しく見た。この番組はAFIの設立100周年を記念するイベントとして06年に制作された。

100位から各映画のシーンを数分流し、その映画の魅力や何に感動するのかなどを俳優、監督、脚本家、スポーツ選手、TVキャスターらが思い〃に熱く語るといった形で人気の高い映画へと進んでいく。ベスト20に入った映画は次のようになっている。

1  素晴らしい哉、人生!(1945)
2  アラバマ物語 (1962)
3  シンドラーのリスト (1993、上の写真)
4  ロッキー (1976)
5  スミス都へ行く (1939)
6  E.T (1982、 真ん中)
7  怒りの葡萄 (1940)
8  ヤング・ゼネレーション (1979)
9  三十四丁目の奇跡 (1947)
10 プライベート・ライアン( 1998)

11 我等の生涯の最良の年 (1946)
12 アポロ13 (1995)
13 勝利への旅立ち (1986)
14 戦場にかける橋 (1957)
15 奇跡の人 (1962)
16 ノーマ・レイ(1979)
17 カッコーの巣の上で (1975)
18 アンネの日記 (1959)
19 ライトスタッフ (1983)
20 フィラデルフィア (1993) 

“私の好きな映画が20位に入ってない。一体どのあたりにランクされているのかしら?”という声が沢山聞こえてくるので、21~100までを日本人がよく知っている映画を中心にピックアップしてみた。

21 夜の大捜査線(1967)
23 ショーシャンクの空に (1994)
26 オズの魔法使 (1939、下)
28 フィールド・オブ・ドリームス (1989)
29 ガンジー (1982)
30 アラビアのロレンス (1962)
31 グローリー (1989)
32 カサブランカ (1942)
33 街の灯 (1931)
37 フォレスト・ガンプ/一期一会 (1994)

39 スター・ウォーズ (1977)
41 サウンド・オブ・ミュージック (1965)
42 十二人の怒れる男 (1957)
43 風と共に去りぬ (1939)
44 スパルタカス (1960)
47 2001年宇宙の旅 (1968)
51 カラー・パープル (1985)
53 シェーン (1953)
56 ベンハー (1959)
58 未知との遭遇 (1977)

59 ダンス・ウィズ・ウルブズ (1990)
60 キリング・フィールド (1984)
62 ブレイブハート (1995)
63 レインマン (1988)
68 愛と青春の旅だち (1982)
75 評決 (1982)
77 ドライビングMissデイジー (1989)
79 十戒 (1956)
82 屋根の上のバイオリン弾き (1971)
84 セルピコ (1973)
90 ホテル・ルワンダ (2004)
93 ビューティフル・マインド (2001)

今はあまり映画は見ないが、ある時期レンタルビデオで毎週かなりの本数を見ていた。これまで見た日本映画、海外映画は約600本。映画狂ではないが、好きな映画は数限りなくある。上の21~100位にあげたなかでは90位のホテル・ルワンダは見てないが、残りは全部みている。どれも心に残る名作。

ベスト20の作品はこういう映画がアメリカ人は最も好きなのか!という感じ。1、5、8、9、11、13、16はまったく知らない。今回選ばれた100作のなかで、今でも感動がよみがえってくるMyベスト20(順位なし)は

★シンドラーのリスト
★E.T
★夜の大捜査線
★ショーシャンクの空に
★オズの魔法使
★ガンジー
★アラビアのロレンス
★街の日
★サウンド・オブ・ミュージック
★十二人の怒れる男

★風と共に去りぬ
★シェーン
★カラー・パープル
★ベンハー
★キリング・フィールド
★レインマン
★愛と青春の旅だち
★十戒
★セルピコ
★ビューティフル・マインド

さて、皆さんの感動の映画はどうなっているでしょうか?

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2008.07.24

永青文庫の白隠とその弟子たち展

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昨年に続いて今年も白隠の禅画をみる機会に恵まれた。白隠の書画を300点あまり所蔵している永青文庫では、現在、“白隠とその弟子たち~みんな白隠が好きだった~”(6/28~9/15)が開催されている。

昨年、“日本美術が笑う展”に展示された“布袋すたすた坊主図”(拙ブログ07/2/2)、ここの“達磨図”(07/5/1)など30点、会津八一記念博物館の“蛤観音図”(7/5/10)など14点と対面し、白隠の戯画や書にだいぶ目が慣れていたから、出品作35点はすこし余裕をもってみることができた。

また、今回は弟子の東嶺と遂翁の作品17点がオマケでみられる。展示室はあまり広くないため、前後期で作品が入れ替わる。後期にも見逃せないのがあるので、二度訪問することになりそう。

前期で最も魅せられたのは昨年も見た上の“蓮池観音図”。ここには同名の絵がもう一点ある。どちらも観音様と蓮の花、つぼみ、葉が白で背景の池が黒という白黒対比が目に強く印象つけられる絵だが、観音様が体を右のほうに傾けているこちらのほうにぐっと引き寄せられる。蓮池観音でも蛤観音でも、観音様の顔は同じ描き方。色白で面長、そして、長いだんご鼻と二重顎。

ちょっと横道にそれるが、若い頃美貌で鳴らした大女優が年をとると新陳代謝が落ちてきて、だいたいこんな顔になってくる。この観音様をみてすぐ連想したのが高峰三枝子(知っている人にはわかるが、知らない人には誰れ?)。松阪慶子も十年くらいたつとこんな顔になる?この蓮池観音図と同じくらい心がゆったりするのが観音様が蓮のハンモックに揺られている“蓮弁観音図”。

子供の手をひいている布袋さんの笑顔が実にいい“布袋携童図”(真ん中)の前では、“布袋すたすた坊主図”同様、思わず口元がゆるむ。世の中、“メタボはダメ!”の健康指向がはばをきかせているから、こんなでっぷり腹のでた布袋さんは旗色が悪い。だが、笑いは元気のもと。だから、太っていても愛嬌のある布袋さんのようにいつも笑いをふりまいていると、病魔も居心地が悪くて寄り付かない。

下は“山水図”。右にみえる丸木を数本あわせた継橋を三人の男が腰をかがめ、這うように渡っているのがおもしろい。その姿は人気の絵、“座頭渡橋図”とよく似ている。白隠の書画を10年かけて数多く収集した細川護立(もりたつ、1883~1970)は毎晩の日課として、白隠と仙厓の軸を一本ずつ掛け替えていたという。

最後に注意事項をひとつ。ここは緑の多い、立派なお屋敷だが、蚊がいる。お出かけの際は刺されないように、くれぐれもご注意を!

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2008.07.23

三井記念美術館のNIPPONの夏

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三井記念美術館で開催中の“NIPPONの夏”(7/12~9/15)を見て、昨日記事にした鈴木其一作、“朝顔図屏風”がなぜこの時期なのかがわかったような気がする。朝顔が夏の風物詩で、NHKの番組スタッフも“NIPPONの夏”を意識したのかもしれない。

面白いことに番組で紹介された其一の“朝顔図”が展示室の一番最初に飾られていた。美術番組と展覧会がちゃっかりコラボしているのだったら、番組が終了したあと、“この絵が三井記念美の展覧会に展示されてます”くらいの案内をすれば、其一にたいする関心がまたひとつ高まったのに。惜しいなあー!

“NIPPONの夏”はシリーズ“美術の遊びとこころ”の第三弾。作品(93点)の一部は前期(7/12~8/10)、後期(8/13~9/16)だけに展示される。当初、歌麿の追っかけ作品、“夏姿美人図”(遠山記念館)が展示される後期のみ出動する予定だったが、上の“藍色薩摩切子小瓶”(大和文華館)と応挙のまだみてない“瀑布図”が出品されていることがわかったので、急遽前期も出かけることにした。

暑い夏をすこしでも快適に過ごす工夫を江戸時代の人たちはいろいろした。麻などの薄手の着物を着たり、水辺の情景が描かれた掛け軸や屏風を部屋のなかに飾ったり、目にも涼しげなガラスややきものをつくったりした。再会した応挙の“青楓瀑布図”(サントリー美、拙ブログ07/8/4)の前にしばらくいて、飛びちる水しぶきで心を少しぬらした後、お目当ての薩摩切子と対面した。

小さな瓶であるが、とても端正な形が目に心地いい。これまで薩摩切子はサントリー美のすばらしいコレクション(04/12/2007/6/27)や昨年あった“美の壺展”(日本橋高島屋)に登場した緑色の切子(07/12/5)をみることができたが、今回は奈良に出かけなくて大和文華館自慢の薩摩切子2点の一つが見れるのだから、これほど幸せなことはない。

夏の暑いときはいつも図録を本棚から引っ張り出し、薩摩切子とかガレ、ラリックの作品の図版を見ている。5分もたつと暑さがやわらぎ、涼しい空気が流れてくる。お試しあれ!

この美術館へ数年通ってわかったのはここが良質の浮世絵を見せてくれること。今回も夏の情景を描いたいい絵がいくつもでている。なかでも、広重の“名所江戸百景 大はしあたけの夕立”、歌麿の“寒泉浴図”、国貞“両国川開図”、真ん中の北斎の“江都両国橋夕涼花火之図”に足がとまった。

北斎の花火絵は広重(07/8/9)や現在、東博にでている歌麿(7/19)の絵同様、気分が次第に高揚してくる。こういう絵をみると、今も昔も、花火は夏の最高のエンターテイメントであることを実感する。

下ははじめてお目にかかった応挙の“鵜飼図”(部分)。応挙はこんな絵も描いていたのかという感じ。数隻の小舟を右にカーブさせて配置する構図が秀逸。期待はずれの瀑布図がこの絵で救われた。後期にはお目当ての歌麿の美人画が登場するから、ちょっとワクワクしている!

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2008.07.22

驚愕する鈴木其一の朝顔図屏風!

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琳派狂いとしては、どうしても見逃せなかったのが先週の新日曜美術館。江戸琳派の鈴木其一(すずききいつ)を特集してくれたのである。

過去、この番組は宗達や光琳など琳派の巨匠たちを何度となく取り上げてきたが、鈴木其一に単独でスポットを当てたのははじめて。いつも購入している“TV太郎”でこの番組を目にしたとき、一体どういう風のふきまわしかと思った。

現在、どこかの美術館で回顧展が行われているわけではないから、番組制作スタッフのなかに其一が好きな人がいて、“武蔵野美大の玉蟲敏子先生が其一が38歳のとき絵画修行のために行った旅の様子を克明に綴った日記(京都大学付属図書館蔵、TV初公開)について、いい論文をお書きになっているから、一度鈴木其一作品に焦点を当ててみない!”と提案したのかもしれない。

制作事情はどうあれ、番組は代表作の紹介とゲストの小林忠氏(学習院大教授)と日本画家、平松礼二さんの解説により、芸術家、鈴木其一の高い画才を浮き彫りにしていた。話の中心はいつか拙ブログでも紹介しようと思っていた“朝顔図屏風”(上の画像、六曲一双の左隻、メトロポリタン美蔵)。

この絵を14年前あった琳派展(名古屋市博物館)で見たとき、驚愕した!“朝顔の絵なのに、何を大袈裟な”と言われそうだが、、とにかくびっくりする絵なのである。この絵は04年、東近美であった琳派展にも出品されたから、ご覧になった方は一体、どこがびっくりするのかお分かりになると思う。

画面いっぱいに咲き誇る朝顔の花が澄み切った青で描かれ、しかも真ん中の白いところの底から光が幾筋も出ているのである。この透き通るような光の輝きがえもいわれず美しく、200%感動した。抱一の描く朝顔とか浮世絵、近代日本画で見る朝顔はさらっとみて終りだが、この其一の朝顔の前では何時間でもみていたい気持ちになる。これがメトロポリタンでなく日本の美術館にあれば鑑賞の機会が増えるのに。残念でならない。

真ん中は番組の前半に登場した其一の代表作“夏秋山水図”(根津美)の左隻で、右隻は拙ブログ06/6/14で取り上げた。これは東博でこの秋に開催される“大琳派展”(10/7~11/10)に出品されるので、再会がすごく楽しみ!

其一は多作の絵師。番組には出てこなかったが、風俗画もいくつか描いている。下はぞっこん惚れている“群舞図”。アメリカ人コレクター、プライスさんの自慢の絵で、東近美の琳派展と06年のプライスコレクション展(東博)に展示された。

プライスさんは日本ではまだ評価の低かった其一の作品にいち早く目をつけ、買いまくった。コレクション展には9点やってきたが、そのなかには“柳に白鷺図屏風”、“群鶴図屏風”、“漁樵図屏風”などの傑作が含まれている。小林教授が“朝顔図には視覚の楽しみ、造形の輝きがある”と言われていたが、其一作品に見られる近代絵画の香りがアメリカの日本美術愛好家を夢中にさせたのであろう。

どこかの美術館が鈴木其一の回顧展を開いてくれると嬉しいのだが。いつものようにミューズにお願いしておこう。

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2008.07.21

美術に魅せられて! お気に入り美術本(日本美術)

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西洋美術だと国内の美術館で行なわれる展覧会は絵画が中心。彫刻作品はたまにあるが、やきものはほとんどなく、工芸はアールヌーボーのような装飾品に限られている。これに較べると日本美術は幅が広く、日本画、仏像、やきもの、漆器、染色、浮世絵、近代日本画、洋画といろいろある。そして、最近では村上隆や山口晃ら人気の現代アーティストは日本美術を現代風にアレンジした作品を制作し、世界に発信している。

ここ十年くらいの間に、日本美術を見る目が随分変わってきた。とくに、江戸時代に活躍した若冲、蕭白、芦雪といった奇想の絵師たちに若い美術ファンたちが熱いまなざしを注いでいる。今、東博で開催中の“対決ー巨匠たちの日本美術”でも“若冲 vs 蕭白”、“応挙 vs 芦雪”のコーナーには大勢の20代~30代の男女が“仙人掌群鶏図襖”(若冲)、“群仙図屏風”(蕭白)、“虎図襖”(芦雪)などを熱心に見ている。

こうした日本美術を気軽に楽しもうという動きに対応して、出版業界はわかり易い美術本や巨匠たちのコンパクト画集を相次いで出版してきた。そこで、どんな美術本があるかまとめてみた。日本美術の名品を知る上で参考にしているのは以下の本。

★週間アーテイスト・ジャパン 日本絵画の巨匠たち 全60冊(上、同朋舎出版、92年)
★週間朝日百科 日本の国宝 全100冊(真ん中、朝日新聞社、97~99年)
★週間 日本の美をめぐる 全50冊(下、小学館、02~03年)
★橋本治著 ひらがな日本美術史 1~7 (新潮社、95~07年)
★名画日本史 1、2巻(朝日新聞社、00~01年)

“日本絵画の巨匠たち”は昨年、デアゴスティーニ・ジャパンが再出版したから、関心のある画家のときは購入された方がおられることだろう。このシリーズは日本美術を楽しむきっかけを与えれくれた思い出の本。だが、出版された時はまだ、関心の高かった絵師や近代日本画、洋画の画家たちは限られていたから、60冊の半分くらいしか手元になかった。

雪舟、永徳、等伯、宗達、光琳など有名な絵師は揃っているが、酒井抱一は欠けているし、奇想派では注目していた蕭白はあるが、若冲、岩佐又兵衛はない。また、明治以降の画家でも横山大観は購入したが、今では大ファンの菱田春草とか前田青邨とか福田平八郎などは知らなかったから、揃ってない。

日本美術の情報を一気に豊かにしてくれたのが97年から03年にかけて出版された“日本の国宝”、“名画日本史”、そして“日本の美をめぐる”。自分にとってはこの3つが日本美術のバイブル。だから、頻繁にみており、既に見たものは黄色のサインペンでマーキングし、次に追っかける作品を目に焼きつけている。現在、済みマークが8割くらいつくところまできた。

橋本治さんの“ひらがな日本美術史”はお気に入りの本。とにかくこの人の日本美術についての知識は半端じゃなく、名品をみる目は並みの美術史家をはるかに上回る。しかも、読みものとして大変面白い。ズバリ、この7冊をしっかり読んだら、日本美術がものすごく近く感じられるようになり、いっぺんに好きなる。

“名画日本史”は昨日紹介した“世界 名画の旅“の国内版。日本の美術ジャーナリズムのど真ん中にいるのが朝日の文芸記者。とにかく、文章が滅茶苦茶上手いし、多くの情報を駆使して、名画にまつわる面白い話をコンパクトにまとめている。今、この本は古本屋に行くと手に入るだろうか?

東京美術から出ている“もっと知りたい○○”(05~08年)も手軽で良質の情報が詰まったいい本。これまで出版されたのは雪村、若冲、蕭白、狩野派、北斎、広重、国芳、上村松園。今後、琳派の宗達、光琳、抱一が予定されている。

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2008.07.20

累計アクセス数100万を突破! シリーズ 美術に魅せられて! お気に入り美術本(西洋美術)

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拙ブログは本日、累計アクセス数が100万を突破しました。04/11/25に書きはじめてから、3年8ヶ月目に当たります。一日のアクセス数は開始したころと較べると随分増え、現在は1500を越えるアクセスがあり、書いている本人が驚いております。

今年の5月13日には21,339アクセスという何かデータが間違っているのではと疑いたくなる異常値が発生し、一体どのくらいの人がどの記事を見ているのか一日中アクセス分析ばかり見ていました。これは例外的な数字ですが、常日頃、拙ブログを見ていただいている方々に対しまして心から厚く御礼申し上げます。これからも宜しくお願いします。

いつも皆様と感動を共有していきたい美術関係を中心とした文化現象について、どんな取り上げ方をするとより楽しくなるか、あれこれ考えているのですが、本日は節目の日ですから、これから立ち上げる美術記事の概要を少しお話しようと思います。

拙“いづつやの文化記号”は大半が美術の記事ですが、これを今後は次の3本立てにします。
①展覧会鑑賞、美術館訪問、TVの美術番組などの感想記(通常ルーティン)
②シリーズ 美術に魅せられて!(不定期、随時)
③シリーズ もっとみたい巨匠の名画!(不定期、随時)

②の“美術に魅せられて!”は展覧会、美術館の紹介以外の美術についてのおしゃべりです。このなかには、例えば、“お気に入り美術館ベスト5”、“好きな風景画・女性画ベスト5”といった通常の展覧会感想記ではあまり膨らませられない記事を独立させて自由に書いてみようというものです。ネタは限りなくあります。ただ、とってつけたような美術の話にするつもりはなく、あくまでブログ(日記)の性格を踏まえ、日々の美術体験をベースにしてテーマを考えたいと思います。

ここでは、またMyミニ画家論、東西美術比較論を書くつもりです。これまで次のようなものを書きました。
★若冲のここが好き!その一、二、三、四、五(06/8/17
★文正の鳴鶴図 vs 雪舟の秋冬山水図(07/8/23
★伴大納言絵巻とマザッチョの楽園追放(06/10/16
★川端龍子名作展(07/2/7
★伊藤若冲とカラヴァッジョ(07/12/17
★広重とマンテーニャのシュール感覚に驚愕!(08/6/10

③の“もっとみたい巨匠の名画!”は過去に一度書いた“もっとみたい応挙・芦雪の名画!”(07/8/16)を本格的にスタートさせようというもので、手元の追っかけリストの作品を全部披露します。日本画の巨匠たちの代表作は沢山画像にしましたから、残っているのは少なくなってきましたが、西洋画の場合、画集にはまだまだ見たい名画が数多く載っています。皆様の心を揺すぶる作品が多くあるといいのですが。

で、本日は“美術に魅せられて!”を早速はじめます。一回目は“お気に入り美術本(西洋美術)”

展覧会での一番の楽しみが追っかけ名画との対面なので、その名画が載っている美術本の収集に余念がない。世界的に有名な絵を知る方法は二つある。一つは本屋とか図書館に行けば見られる画集のページをめくること。

もうひとつは美術評論家や画商、コレクターのサークルに入って、表にはなかかなでてこない知る人ぞ知る傑作にお目にかかる。後者は専門家や通の世界だから普通の美術愛好家には縁がない。だから、本屋の棚にある画集をじっくり眺めるか、お金を払って重たい本を家に持ち帰るかである。

これまで、こうした画集は軽いもの、重たいものいろいろ購入してきたから、ルネサンス、マニエリスム、バロック、ロココ、新古典派、ロマン派、写実派、印象派、ウィーン世紀末、象徴派、表現主義、ラファエロ前派、キュビスム、フォービスム、エコール・ド・パリ、シュルレアリスム、未来派、ダダ、抽象絵画、現代アートなど西洋絵画の各分野の情報が一通り揃っている。それらを挙げてみると。

★世界 名画の旅 1~5(上、朝日新聞社 85~87年)
★週間グレート・アーティスト  西洋絵画の巨匠たち 全100冊(真ん中、同朋舎出版、90~93年)
★ラ ミューズ 世界の美術館 全50冊(下、講談社、92~93年)
★絵画の発見 全18巻(学研、91~93年)
★NHK日曜美術館 名画への旅 全24巻(講談社、92~93年)
★西洋絵画の巨匠 全12巻(小学館 06~07年)
★岩波 世界の美術 全25巻(岩波書店、00~05年)
★ニュー・ベーシック・アート・シリーズ 全65冊(TASCHEN、00~08年)

このなかで頻繁にみているのが“週間グレート・アーティスト”と“ラ ミューズ”。この二つはページも少なく、画家の代表作中の代表作や美術館自慢の名作が載っているからとても重宝している。1、3月の海外美術館めぐりではこれと“世界 名画の旅”、“絵画の発見”の図版をコピーしまくって必見リストを作成した。

とくに“ラ ミューズ”ははじめての美術館を訪問ときはすごく役立つ。今度、講談社は新しい“世界の美術館シリーズ”(週間)を発行したが、これから世界の美術館をまわろうと計画されてる方にはもってこいの本であることは請け合い。“ラ ミューズ”でカバーされなかった美術館は当然購入の予定。

現在、“岩波 世界の美術”とTASCHENの“ニュー・ベーシック・アート”を一冊々精力的に読んでいる。どちらも情報量が多く、なおかつすごく面白い。日本の美術評論家は西洋画家の画業を解説するのは上手だが、画家本としては深みがなく、また読んでみようという気にならない。

それに較べると、欧米の一級の美術史家が書く画家物語は小説を読むような面白さがある。また、実証分析が丁寧で、先行作品などを丹念に調べているから、画風の変遷などがよく頭の中に入る。で、全部とはいかないが、折に触れこれらの本を紹介していきたい。

なお、“お気に入り本”を更新したので、ご参考までに。

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2008.07.19

東博浮世絵エンターテイメント! 歌麿・北斎

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平成館で開催中の“対決ー巨匠たちの日本美術”に歌麿と写楽のいい絵がごそっと展示してあるから、平常展(7/1~7/27)の作品に配分する鑑賞エネルギーがいつもよりは少ない。で、ガス欠にならないよう、重点鑑賞絵師に絞ってみた。

春信は“ささやき”と“風流六哥仙・僧正遍照”の2点。“僧正遍照”はなかなかいい絵。画面を上下に分断する石造りの太鼓橋に角隠しをした二人の女性がおり、扇子をぱたぱたさせながら、池の蓮の花を眺めている。横線で表された水面の揺れがリズミカルで、蓮のうす緑が目に心地いい。

歌麿は上の“両国花火”と“桃の皮むき”。“歌麿 vs 写楽”の名画を見たあとで、感動の袋がはちきれそうだったから、あまりいい絵が目の前に現れるとどうなるかと思ったが、こういうときには手ごろな絵だった。“両国花火”は手元の画集に載っているから、前々から見たかった絵。

三枚続の絵でこれは真ん中部分。広重の賑やかな花火絵(拙ブログ07/8/9)と較べると、ずいぶんゆったりした花火の風景である。真ん中上部に花火がはじけたところを太い赤の線でみせ、それを両国橋の上にいる女たちと子供が左右から見上げている。歌麿は流石、巧みな画面構成をする。これは大収穫だった。

勝川春章が描いた“湯上り団扇持ち美人”の太股にすこしザワザワしたあと、北斎の“花鳥図”のところにしばらくいた。このシリーズは10点あるが、前回が“牡丹に蝶”、そして今、真ん中の“朝顔に蛙”と“芥子”が飾られている。

太田記念美であった“ギメ美展”のときは、“朝顔と蛙”の蛙がどこにいるかわからずイライラしたが、今回はすっと蛙に目を寄せることができた。隣りの方に、“蛙がどこにいるかぱっとみて見つけて!”と試してみたが、意外に早く見つけられてしまった。で、“あのときは自分だけが鈍かったのか!”と元気を失いかけた。

今回の見どころは北斎の“百物語”。コンディションのとてもいい“さらやしき”、下の“笑いはんにゃ”、“しうねん”、“小はだ小平二”、“お岩さん”の5点が全部でている。夜だと怖くてとても見れないのが“さらやしき”のお菊と“笑いはんにゃ”ではんにゃが手につかんでいる子供の生首。うす青で彩色されてた顔は昼間でも長くはみてられない。

これに対し、お岩さんは漫画チックなお化け!こんなユーモラスはお岩さんだったら、恨みのひとつやふたつは聞いてやれる。“私もちょっと恨み疲れちゃってさー、最近元気がないのよ。歯がだんだん欠けてきて、口が開きっぱなし。どお、怖く見える?間抜けな顔にみえる。そうよね、昔の凄みのある怖い顔を取り戻すにはどうしたらいい?” “それはねー”。愚痴のお付き合いはほどほどにして部屋を出た。

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2008.07.18

野茂引退  トルネード投法がもう見られない!

415大リーガー、野茂英雄が昨日、現役引退を表明した。

今春久しぶりに大リーグのマウンドに戻ってきたから、またあのトルネード投法がみられると期待していたが、現実は厳しく、ロイヤルズの投手スタッフに踏みとどまれなかった。

記者の“4月に復帰してある程度納得した部分はあるのか?”に対して、“悔いは残る。まだまだやりたい”と答えたのを聞くと、野茂は心底から野球が好きなんだなと思った。

世の中の多くの大リーグファンは野茂の大リーグ挑戦によって生まれたのではなかろうか。95年、野茂がLAドジャースに入団したお陰でBS1が大リーグ中継を本格的にはじめ、野茂が登板する試合は全部放送してくれた。土日以外に試合があるときは隣りの方にビデオ収録を頼み、会社から帰って熱心にみた。

個性豊かな大リーガーのなかにあっても、ユニークさでは野茂のあのトルネード投法にかなうものはない。野茂の投げ方は日本でプレーしているときから大リーガーの雰囲気を漂わせていたから、大リーグのマウンドではまさに水を得た魚。しかも、落差の大きいフォークボールと重い速球をビシビシ投げ込んでくるのだから、さしもの強打者たちもきりきり舞いさせられた。

四球でランナーが塁にたまろうが、最後はフォークで三振をとり、ピンチを切り抜ける。とにかく三振を沢山とってくれる野茂のピッチングは胸がスカッとする。TVで応援していても感激するのだから、ドジャースタジアムにいた観客は楽しくてたまらなかっただろう。

大リーグの記録に残る偉業としては二度のノーヒット・ノーラン(ドジャースとレッドソックスに所属していたとき)がある。ナショナル、アメリカン両リーグでノーヒット・ノーランを達成したのはサイ・ヤング、ノーラン・ライアンらに次ぐ史上4人目の快挙。そして、大リーグ通算123勝はアジア人投手ではもちろん一番である。これだけの実績を残したのだから、将来の野球殿堂入りも夢ではない。

当時の対戦で一番おもしろかったのがSFジャイアンツにいたバリー・ボンズとの対戦。野茂はこのホームランバッターをよく三振にきってとった。また、95年のオールスター戦に先発し、アリーグの4番、フランク・トーマス(シカゴ・ホワイトソックス)と対戦したときのことも目に焼きついている。野茂はフォークをあえて投げず、ストレート勝負し、この最強バッターをキャッチャーのファールフライにしとめた。鳥肌がたつようなすごい対決に体が熱くなった。このときほど野茂が大きく見えたことはない。

野茂は本当に度胸がいいし、打たれてもびびらない。これがこのピッチャーの一番の魅力。オフシーズン、NHKの特番に出演してこんなことを言っていた。“ボンズにホームランを打たれたとき、顔ではまずいという表情をしてましたが、心のなかではきれいなホームランだなと感心して見てました”。この野球を楽しむ姿勢をみて、たいした選手だなとあらためて野茂が好きになった。

さて、引退後の野茂はどういうことをやるのだろうか?現在、野茂はNOMOベースボールクラブのオーナーだから、当面はこれに専念するのかもしれない。でも、これだけではもったいない。で、個人的には、日本のプロ野球のコーチに就任し後輩の指導にあたるとか、ロサンゼルスオリンピックのときバッテリーを組んだ古田とか、同級生の元大リーガー長谷川、仲のいい吉井(日本ハム投手コーチ)らと連携し、北京五輪に出場する全日本チームの監督やコーチを務める星野世代に替わる球界の新しいリーダーになってもらいたいと思っている。

大リーグの楽しさを数限りなく味合わせてくれた野茂英雄には感謝しても感謝しきれない。19年間のプレーに拍手々!どうか次の夢にむかって進んでもらいたい。

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2008.07.17

西村画廊の町田久美新作展

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日本橋高島屋のすぐ近くにある西村画廊で町田久美の新作展 Snow Dayを見た。普段、画廊で絵をみる習慣がないから、展示の部屋に入るにもちょっと緊張する。今回展示してあるのは07年、今年制作された9点。

これまでに見た町田久美の絵はわずか2点しかない。昨年、東京美術倶楽部であった“21世紀展”にでていた“睡眠”と“東京コンテンポラリーアートフェア2007”でみた“レンズ”。町田久美の名前と作品を知ったのは06年東現美で開催された“日本画から日本画へ”のチラシに載っていた“ごっこ”という作品。ほかの作家の絵に関心がなかったのでこの展覧会は見なかったが、町田久美の絵にはすごい衝撃を受けた。

縄とび遊びをしている二人の子供が真上から描かれている。きれいな描線に惹きつけられるが、それ以上にびっくりするのは人物をとらえる視点。この絵から連想する西洋画が二つある。一つは短縮画法で描かれたマンテーニャの“死せるキリスト”(ブレラ美)。もう一つはダリの“十字架の聖ヨハネのキリスト”(グラスゴー・アート・ギャラリー)。“ごっこ”の直接的なイメージはダリの絵のほうに似ている。

町田久美の作品に関する情報が少ないので、この作家の画風全体のことはわからないが、美術雑誌“アート・トップ、歌麿特集”(07/5)には同じような上からの視点で見た“来客”(大原美)が載っていた。今回の新作展に対する期待も当然こういう見る者をハッとさせる視点から描かれたもの。

上の“雪の日 Snow Day”(08年)は上からではなく下から人物を見上げる絵だった。しかも再接近ローアングル。登場人物は例の丸坊主の男の子?この丸さがとても気に入っている。右の上ポケットからでているのは一体何?目ん玉は不気味な赤。

真ん中の“とまり木”(07年)と下の“ことほぎ”(08年)では二人の人物は後ろから描かれ、顔は見せてくれない。“睡眠”でも子供は白い布きれを頭から被り、顔を見せてないが、“とまり木”のほうが怖いムードがゆらゆら漂っている。電線に腰をかけている左の女の子?の白い服は鋭利な刃物で切られ、口があいている。右の女の子をみると服の頭部分が切り裂かれている。切り口を赤で彩色しているのは血をイメージさせるため?

町田久美でも束芋でも若手女性アーティストは肉体を切り裂くのがお好き。束芋はいとも簡単に指をチョン切るし、町田久美も“成分”(07年)のように手のひらにスプーンの先を突っこむ。ぞくぞくとした怖さがある。

“ことほぎ”は一見すると恋人同士が体を思いっきりくっつけあう楽しい場面に見えるが、頭の大きなこぶや合体した耳は長くみていると何かへん。そう、やっぱり不安な気持ちが掻き立てられる。

町田久美はこれからどんな作品を制作していくのだろうか?個人的な希望としては、大きな画面に沢山の人たちがでてくる群像画を描いてもらいと思っている。のびやかな太い墨線はすごくインパクトがあるから現状のままでも多くのファンを惹きつけるだろうし、国際的な評価も上がっていくことだろう。

でも、白黒で色数も少ない作品だから、いくらインパクトのある作品といっても小さな絵だけだと、10点くらいみたらもういいやということにならないだろうか?正直言うと、見終わったあと、この作家についてはそんな感じを持った。だから、高崎市タワー美術館で開催されている回顧展(8/24まで)はパスすることにした。

また、奈良美智が青森県美のために大きな立体作品“あおもり犬”をつくったように、絵だけでなくオブジェなどにも挑戦したらおもしろいと思うのだが。町田久美の描く人物のやわらかさ、丸さ、ハットする視点からの構成にぞっこん惚れているので、これからの作品に注目したい。

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2008.07.16

コロー 静かなる森のささやき

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人気美術番組の“美の巨人たち”(TV東京)と“新日曜美術館”が2週連続でコローを取り上げてくれたので、コローの画家人生や画法の特徴、秘密がだいぶわかってきた。

どちらもよくできていたが、写真家の藤原新也さんと西洋美で開かれている“コロー展”(6/14~8/31、6/186/19)を企画した高橋明也氏(三菱一号美術館館長)がゲスト出演した先週日曜の“コロー 静かなる森のささやき”のほうが構成が上手で解説もわかり易かった。得心した話をいくつか。

山よりは海のほうが好きで、登山愛好家やハイキングを楽しんでおられる方のように山や草原、森の美しさを肌で感じる経験がきわめて乏しい。だから、この番組をみたからといって信州方面への旅行を増やそうという気持ちはない。でも、コローが描いた森の情景にたいする藤原新也さんの語りがすごく心に沁みたから、奥入瀬のようなところを再訪することがあったら、自然の感じ方が変わるかもしれない。

コローが絵にした森の何気ない風景は“ゆっくり歩いて、ゆっくり見ないととらえられない”と藤原さんは言う。そして、上の代表作“モルトフォンテーヌの思い出”についての写真家らしい感想に目からうろこが落ちる思いがした。

“コローは写真をみて、新しい絵画を生み出そうとしたのではないか。右の木では焦点の当たっているところの後ろはぼやけている。人間の目はこの二つは同時には見えない。だが、レンズは同時にとらえられる。逆光でしかも日が落ちたあとの光がまわる状態だと、木の内面とか気配がでてくる。この気配とか空気をコローは描きたかったのだろう”。初期の写真はレンズの性能がまだ高くなかったから、風景写真は確かにコローの霧にけむるような表現のようにぼやけたやわらかい仕上がりになっている。

高橋氏の話で興味深かったのが2歳年下のドラクロアがコローを高く評価していたこと。ドラクロアは一度、コローのアトリエを訪ね、日記に“コローはスゴイ画家だ!”と書いているそうだ。真ん中はドラクロアが晩年、サン=シュルピス教会のために描いた“ヤコブと天使の闘い”であるが、コローの絵を参考にして森の木を描いている。

ドラクロアの色彩表現に200%魅せられているから、いつかこの絵をみたいと以前から思っていたが、こういう話を聞くと余計に見たくなる。で、次回パリへ行ったら、この絵と1月のオルセーめぐりで見れなかった下のコローの“朝、ニンフの踊り”を必見作品リストの上位にいれておくことにした。

番組では節々にコローの言葉を声優が語る場面があり、コローの自然を愛するやさしい心根にとても感激した。静かなる森のささやきを聞きにまた、上野へ出かけようと思う。

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2008.07.15

日本人大リーガーの前半戦成績比較!

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大リーグは前半が終了し、明日、ヤンキーススタジアムでオールスター戦が行われる。そこで、日本人大リーガーの成績をまとめてみた。まず、今年入団した選手から。高い契約金でシーズン前から注目を集めたのがシカゴ・カブスの福留とLA・ドジャースの黒田。

福留は現在は打率0.279と下降気味だが、開幕してから二ヶ月くらいは勝負強いバッティングでチームの勝利(ナリーグ中地区首位)に大きく貢献した。この予想以上の活躍がシカゴファンの心をとらえ、オールスター戦のファン投票では外野手部門の3位に入り、アリーグのイチローとともに先発メンバーに選ばれた。ヤンキースの松井だって一年目は先発メンバーではなかったのだから、たいしたものである。さて、夢のゲームでヒットを打ってくれるだろうか?目が離せない。

ドジャースの黒田は初めての登板ですぐ勝ち投手になり、これは期待がもてるなと思っていたら、その後はいいピッチングをするのに打撃陣が思うように点をとってくれなかったり、同僚斉藤がリリーフに失敗したりして、勝ち星がなかなか増えなかった。そのうち右肩痛に見舞われ出場の機会がなかったが、ケガからの復帰後の2戦目となった7/8のブレーブス戦ではあわや完全試合というすばらしい投球をみせ、5勝目(6敗)をあげた。

広島にいたときから黒田の投手としても能力を高く評価していたが、大リーグでも予想通りの活躍をしている。黒田は背も高いし、チッピングフォームがカッコよく、サムライのイメージがする。シーズンが終了した時点では二桁の勝ち星は達成できるだろう。トーリ監督が率いるドジャースは今、ナリーグ西地区の2位につけているから、黒田の成績が地区優勝の鍵を握っているといっても過言でない。

投手ではロッテからインディアンスに入団した小林は最近、中継ぎからリリーフの昇格した。日本でも実績があるから、大リーグのバッターに慣れてくるとリリーフの役目をしっかりつとめるのではなかろうか。

2年目のレッドソックス、松坂はオールスター前の試合でいいピッチングをし、10勝目をあげた。今年の松坂は昨年に較べると格段にいい。防御率も2.65と安定している。だから、オールスターにも当然選ばれると思っていたが、残念ながら落選した。この背景には選手を選んだフランコーナ監督の考えが反映されている。

松坂はレッドソックスの投手陣の柱。監督としてはワールドシリーズ連覇のために松坂の力が絶対必要なので大事に々使いたい。まだ、DL明けから日がそう経ってないから、松坂には悪いが、ここは我慢してもらってチームの勝利に専念してくれということだろう。監督の気持ちはよくわかる。

ヤンキース松井の左膝は大丈夫だろうか?結婚した効果か打率3割をずっとキープし、松井にとって今年はいい年になりそうだなと思っていた矢先に古傷の左膝がまた痛み出した。ヤンキース自体も東地区では3位と振るわず、首位のレッドソックスから6ゲーム離されている。後半、相当頑張らないとワイルドカードによるプレーオフ進出も危うくなる。松井のケガが早く直ることを祈るだかりだ。

東地区の異変はヤンキースの上にいるレイズ。現在、7連敗中で首位の座をレッドソックスに明け渡したが、それまでは高い勝率でトップを走っていた。その新生レイズを一番バッターとして引っ張っているのが昨年入団した岩村。今年は二塁を守っている。打率0.272、ホームランは5本はまずまずといったところ。

万年、最下位だったチームがこれだけ強くなったのは若手の力だぐんと伸び、投打の主力として活躍しているから。ひょっとして地区優勝を果たすかもしれない。ただ、若い選手が多いので、シーズン終盤になってプレッシャーのかかるゲームが続くと一気にレッドソックス、ヤンキースに引き離される可能性もある。頑張れ、岩村!宇和島の人たちも熱い声援を送っていることだろう。

上の写真はボストンを訪れたとき寄ったレッドソックスの本拠地フェンウェイパーク内のグッズ売り場。真ん中はお店へ行く通りの街灯に設置された松坂を歓迎するプレート板、“DICEーK ボストンへようこそ”と書かれている。下はNYの空港へ着陸する少し間、旅客機の窓から撮影したもの。真ん中上、海を背にして赤茶色の外野席が見えるのがオールスター戦が開催されるヤンキーススタジアムで、その右の白いところが建設中の新球場。

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2008.07.14

対決ー巨匠たちの日本美術  歌麿 vs 写楽

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浮世絵師、歌麿と写楽の組み合わせだと、描いているのがともに大首絵、全身像の人物画だから“対決”の図式がすとんと腹に落ちる。

が、ー憂き世を浮き世に化粧してーはおもしろくない!随分考えたのだろうが、二人の画風のイメージがこれでは伝わらない。山口晃さんに似顔絵だけでなく、コピーも依頼したらよかったのに。

今回出品されている美人画、役者絵12点(6点ずつ)は全部東博が所蔵するもの。過去4年間、ここの浮世絵平常展は数回見逃しただけでほとんど鑑賞してきた。展示リストはすべて保管してあり、喜多川歌麿、東洲斎写楽のどの絵が登場したがわかる。とくに歌麿は重点鑑賞絵師にしているから、だいたい目に焼きつけている。

4年通ってもお目にかかれなかったのが今回6点のなかに4点ある!心のなかは嬉しい気持ちと“画集に載っているいい絵なのだから、4年も待たせないでもっと早く見せてよ!”がないまぜ状態。上の有名な“婦人相学十躰・浮気之相”(重文)が04/4、06/8、“娘日時計・辰ノ刻”が04/10、昨年9月にでてきた。

が、ほかの“婦女人相十品・ポッピンを吹く娘”(真ん中)、“歌撰恋之部・物思恋”(重美、拙ブログ07/10/11)、“衝立の上下”、“当時全盛美人揃・玉屋内小紫”(重美)はまだ見てなかったのである。“ポッピンを吹く娘”は以前ここで見たことがあるから、初見ではないが、“衝立の上下”と“玉屋小紫”はやっと会えたかという感じ。

カテゴリーの“浮世絵”に漸く歌麿の代表作の代表作“浮気之相”と“ポッピンを吹く娘”を加えることができ、ほっとしている。“浮気之相”は女は洗い髪を巻き、手拭をもっているから、湯からあがってきたところだろう。胸元がはだけ乳房がみえるといっても、心がザワザワし、顔がほてってくるという感じでもなく、ボッティチェリの“ヴィーナス”をポカンと口をあけてみているような感覚。

真ん中の“ポッピンを吹く娘”は体の向きは“浮気之相”と逆だが、顔立ちがふくよかでやわらかいところはよく似ている。歌麿の描く女は“似たり寄ったりの顔じゃない!”と思えるときと、“じっくりみると内面がよく伝わってくるな。この女は今憂鬱な気分なんだ”と女の心理状態をずばっととらえた高い描写力に驚かされるときがある。上と真ん中の2枚は前者のタイプの絵で、“物思恋”は後者の典型的な例。

写楽の6点は06年11月にあったミニ写楽展(20点展示)でもみた。もちろん、そのなかには人気の高い下の“市川鰕蔵の竹村定之進”(重文)と“三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛”(重文、06/11/17)が入っている。

この2点は写楽作品のなかでもっともインパクトがあり、竹村定之進のあの鷲鼻と奴江戸兵衛のヤモリの足を連想させる手がいつも真っ先に目に飛び込んでくる。国内では最上といわれる東博蔵の歌麿、写楽の絵が見られる機会はそうないから、心ゆくまで楽しんだ。

これで、ひとまず、巨匠たちの“対決”は終り。後半にまた出かけるので、そのとき追加の“対決”があるかもしれない。

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2008.07.13

対決ー巨匠たちの日本美術  若冲 vs 蕭白

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展覧会のチラシに一際大きく書かれているのが“若冲 vs 蕭白”。その後のー画人・画狂・画仙・画魔ーについては誰も言葉の意味など気に留めてないだろうが、最初の二つが若冲で、後の二つが蕭白のことを言っている?大魔人は知っているが“画魔”って何?

3年前、京博であった曽我蕭白展で使われた“円山応挙が、なんぼのもんじゃ!”に較べるといかにも硬いワーディング。まあ、展示されている8点はいいものばかりだから、どうでもいいことではあるが。

伊藤若冲は“仙人掌群鶏図襖”(重文、西福寺)、“石灯籠図屏風”(京博、拙ブログ05/3/27)、“旭日鳳凰図”(三の丸尚蔵館、展示は7/29~8/17、06/7/8)、そして上の“雪中遊禽図”(7/8~27)。これに対し、曽我蕭白の4点は“群仙図屏風”(重文、文化庁、真ん中の画像および05/5/16)、“寒山拾得図屏風”、“鷹図”(香雪美)、下の“唐獅子図”(重文、朝田寺)。

若冲作品の展示は今や注目のイベント。東京では三の丸尚蔵館での“動植綵絵の展示”(06年3月~9月)、“プライスコレクション展”(東博、06年7月)に次ぐビッグな鑑賞機会。数は4点と少ないが、どれもぐっとくるから、若冲だけを見るために来る人が多くいるかもしれない。

お目当ては上の“雪中遊禽図”。雪の情景と鴛鴦を描いたのは手元の画集によると、動植綵絵の“雪中鴛鴦図”(06/8/18)、“雪芦鴛鴦図”(プライスコレクション展に出品された)、松岡美にある“雪中鴛鴦図”の4点。今回、個人がもっているものが出品された。期待通りのいい絵で息を呑んで見た。

三の丸のは水に潜る雌の顔が見えないが、この“雪中遊禽図”ではプライスコレクション同様、水中に顔がみえる。雄が片足立ちしている岩の位置が実にいい。視線がすっと椿や水仙にかこまれた岩と可愛い雄のところにいき、そして上の練乳のような雪の積もった木の枝に止まっている小鳥に誘われる。何羽いる?急いで見ると全部発見できないことを“動植綵絵”で学習したから、じっくりみた。

鴛鴦図同様、200%参っている“旭日鳳凰図”は7/29から登場する。再会が楽しみ!

蕭白は追っかけ作品、“唐獅子図”を横目でチラッと確認して、まず“群仙図屏風”でテンションを上げることにした。ここに描かれた仙人たちの顔を見てすぐ思い浮かぶのは京劇の役者。右隻の右端で、目の覚める赤の衣装をきて青白磁のような色の羽をした鳳凰に笙を聞かせている仙人はまさにそう。

今回あることに気づいた。この仙人の隣りで正面を向いている虎の顔が“なんぼのもんじゃ!”の応挙が描いた“猛虎図”とよく似ている。蕭白も表では応挙を攻撃しているが、真似るところはしっかり真似ている。

真ん中は左隻。右のほうでニヤニヤしている仙人を取り囲んでいる子供たちの唇はやけに真っ赤なので、妖怪の子供みたいな感じがする。七五三のお参りにやってきた女の子の口紅のように、小さな線が口びるからはみ出しているのがおもしろい。

不気味なのは子供だけではない。左端にいる女仙の西王母の隣りで、桃を食べようとしているアルマジロ風の動物にもドキッとする。逆にユーモラスなのが岩の下で、待女に耳掃除をしてもらっている蝦蟇仙人の背中に乗っかっている白い蝦蟇。この絵にはとにかく見所がいっぱいある。

下の“唐獅子図”は回顧展では展示替えのため残念ながら見れなかった作品。縦横2メートルもある大きな絵。このスケール感は図版ではわからない。正面向きの口を閉じた吽形(左)より、横向きで前足を岩にかけて、吼えている阿形(右)のほうがシルエットがはっきりみえるので長くみていた。リカバリーが思いのほか早くできたので、顔が緩みっぱなし。

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2008.07.12

対決ー巨匠たちの日本美術  応挙 vs 芦雪

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今日から江戸絵画で人気の高い絵師の“対決”が続く。最初は“応挙 vs 芦雪”ー写生の静・奇想の動ー 作品は3点ずつ。12組のなかで一番少ない。主催者の人たちがどのようにしてこの6点を選んだのかちょっと推察してみた。

“長澤芦雪といえば虎図襖(真ん中の画像、重文、無量寺、拙ブログ05/2/13)だから、これははずせないな。よし、和歌山から持ってこよう!東京でこの虎が公開されるのははじめて?以前、千葉市美であった芦雪展には展示されたっけ?”

“さて、これに対する円山応挙の虎の絵はどうするか?芦雪の虎に対抗できるのは猛虎図(上)しかないが、これを所蔵している○○さんは貸し出しをOKしてくれるだろうか?03年大阪市立美で開催された大回顧展に70年ぶりに公開されてまだ5年しかたってないからなあー、お願いしてみよう”

“応挙は龍や孔雀、鶴を描いた傑作も飾りたいところだが、今回は虎だけでいこうか。となると、応挙の目玉は何にしたらいいのだろう?悩むな”

“最晩年の傑作、保津川図屏風(07/8/10)、国宝の雪松図、大瀑布図、どれがいいかな?今回は対決スタイルの展示だから、芦雪の作品との響き合いや対照性がわかる絵をもってこないと見る人に二人のスゴさが強調できないな”

“ところで、メトロポリタンにある芦雪の海浜奇勝図屏風(下)は里帰りできるのかな?出来る!じゃあ、川と海でくくれる保津川図にしよう。二つを一緒に並べると見ごたえあるから、皆さんにもきっと喜んでもらえる”

“人物画とか動物画はどうしよう?応挙も芦雪も子犬の絵は癒しにはもってこいだが。でも、隣りに曽我蕭白のアクの強い絵があるのなら、これに負けない芦雪の山姥図(06/11/24)をもってくるのもいいかもしれない”

“応挙は誰かいいのを考えてくれない。三美人?幽霊図のほうが良くない。盆のころまで会期はあるのだから。やはり、足があったほうがいいか、三美人に決定!”

応挙と芦雪はお気に入りの絵師なので勝手な想像を膨らませてしまう。応挙展で金地に5頭の虎が描かれた“猛虎図屏風”(六曲一双、上は左隻の一部)を息を呑んでみたときの感激が蘇ってきた。またまた1本々丁寧に描かれた毛並みの質感に釘付けになる。顔をみると虎ではなく猫、左の尾を高々とあげ正面を向いているのはどうみても猫の姿。

この虎の尾っぽを下げ、スケールアップした感じが芦雪の可愛い虎ちゃん。必死にこちらを睨んでいるが、ちっとも怖くない。“のどをなでてあげるから、ゴロンと横になったら”とつい声をかけたくなる。

下の“海浜奇勝図屏風”(六曲一双、左隻)は待望の絵。3月、メトロポリタンを訪問した際展示されておらず、“対面はだいぶ遠のいたな”と気落ちしていたが、嬉しいことに日本で会えることになった。だから、追っかけ作品のなかでは見たい度は最も高かった。

岩にはラグビーのボールを斜めにしたような穴があき、牛とか猪の足が突き出ているように見える。まさに奇岩!海鳥になってこの穴をすいすいと通り抜けたい思いに駆られた。金箔地に墨で描かれているから、この奇妙な岩のフォルムが強く目に焼きつけられる。奇才、長澤芦雪にしかこんな絵は描けない。体が熱くなった!

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2008.07.11

対決ー巨匠たちの日本美術  大雅 vs 蕪村

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“永徳 vs 等伯”と“宗達 vs 光琳”は昨年の狩野永徳展で今回出品されている“檜図屏風”、“花鳥図襖”(07/11/9)、“洛外名所遊楽図屏風”(07/11/10)を紹介し、長谷川等伯の“松林図”(1/15)もアップ済み、そして“風神雷神図”がまだ出てない
(8/11~17)のでパス。

でも、京都へ出かけられなかった方とか琳派をまだ充分見られてない方はこの絶好のチャンスをお見逃しなく。四人は日本美術のど真ん中に位置する超ビッグな芸術家だから、最高クラスの作品がずらっと並んでいる。で、2回目の絵画“VS”は“大雅 vs 蕪村”ー詩は画の心・画は句の姿ー

作品の数は池大雅が6点、与謝蕪村が7点。よくぞこれだけの代表作を集めてくれたという感じ。流石、美術雑誌“国華”の創刊120周年を記念する展覧会である。これはこの二人に限ったことではなく、出品作全体に言えることだが。嬉しいことに狙っていた絵が一点ずつ入っている。大雅の“浅間山真景図”(上の画像)と蕪村の“鳶鴉図”(真ん中と下)。

大雅の“楼閣山水図屏風”(国宝、拙ブログ07/1/8)は東博の平常展に一年半くらいのタクトで登場するから、お馴染みの作品だが、他の作品は普段なかなか見る機会がない。今回でている“十便・十宜帖”(国宝、川端康成記念会、十宜は蕪村作、05/6/19)もタイミングが会わないとずっと見られない可能性の高い作品。

大雅はお気に入りの一人だから、“バークコレクション展”(東博、05/7)や“18世紀京都画壇の革新者たち”(京博、06/3)では展示された作品(二つで7点)を熱心に見た。画集に載っているものは半分くらいは目におさめたが、満足できるほどの数ではない。

今回の“浅間山真景図”は長らく待った絵。この絵のことは14年前にあったNHK日曜美術館の“真景図の謎”で知り、いつか目の前に現れてくれることを望んでいたが、なかなか実現しなかった。大雅は無類の旅好き、山登り好き人間。これは信濃の浅間山の山頂から関東平野の眺望を描いたもの。右上に富士山が見える。

ちょっと洋風画の雰囲気をもった山岳風景画で、前景の岩から中景、遠景の山にいたる遠近感がきわめて自然に表現されている。印象に強く残るのが高い山からの眺めはこんな風に雄大だろうなと思わせる実在感と画面の大半を占める量感のある白い雲。

蕪村の作品は4月、MIHO MUSEUMの回顧展に展示された代表作がごっそり出ている(6点)のだからスゴイ。特筆ものは蕪村、晩年の傑作“夜色楼台図”(重文、5/6)と“鳶鴉図”(重文、北村美)が7/8~13と8/11~17(夜色楼台図はこの二つの期間だけ)では一緒に見れること。こういう機会はめったにない。

回顧展でみれなかった“鳶鴉図”を釘付けになってみた。右には激しい風雨のなか、じっと枝に止まっている鋭い目と嘴をした鳶、そして左の雪がしんしんと降る場面では二羽の鴉が寄り添うようにしている。胸にジーンとくる絵。ふと、東山魁夷の“白い朝”(4/9)に描かれた鳥が頭のなかに浮かんできた。

これで蕪村作品には済みマークがついたので、次のターゲットは大雅。京博が大回顧展を開催してくれることをひたすら祈っている。

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2008.07.10

対決ー巨匠たちの日本美術  雪舟 vs 雪村

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今回、絵画で“対決”しているのは16人。“雪舟 vs 雪村”、“永徳 vs 等伯”、“宗達 vs 光琳”、“大雅 vs 蕪村”、“若冲 vs 蕭白”、“応挙 vs 芦雪”、“歌麿 vs 写楽”、“鉄斎 vs 大観”。目の前にこの大きな々画家たちの絵が並んでいるのである。まさに夢の展示空間が実現した感じ。

出品作が超一級でもこれまで紹介したものはダブりになるので割愛し、是非見たかった作品とまだ取り上げていない名画が入っているペアリングに焦点をあてることにした。まずは“雪舟 vs 雪村”ー画趣に秘める禅境ーから。

昨日の追っかけリストでもお分かりのように、代表作はほとんど見ている雪舟より雪村(せっそん)のほうに心はぐっと向かっている。東京で雪舟の絵が5点もみられるのは05年7月、根津美術館であった“明代絵画と雪舟展”以来のこと。

花鳥画では大好きな“四季花鳥図屏風”(重文、京博、拙ブログ05/7/21)、上の“慧可断臂図”(えかだんぴ、国宝、斎年寺)、“秋冬山水図”(国宝、東博、07/8/23、展示は7/29~8/17)が揃うのだから雪舟はもう完璧。これに“天橋立図”(国宝、京博)があったら卒倒しそう。

“慧可断臂図”はじっくりみるととてもショッキングな絵。濃墨で描かれた岩に向かって座禅をしている達磨と後ろにいる慧可の顔つきは似ている感じだが、微妙に違う。厳しい修行の結果、高い精神性がにじみ出ている達磨に対して、慧可は目が窪み、まだ迷いが吹っ切れてない様子。でも、左腕を切り落として入門の決意を達磨に示すほどの純朴な精神の持ち主だから、悟りに近づくのは早かったに違いない。

02年、山口県美であった“雪村展”ではじめて雪村の絵を見た。見終わったあとの率直な感想は“雪舟のほかにこんなスゴイ絵師がいたのか!”。この大回顧展では前後期で作品がごっそり入れ替えられていたので、前期の作品を見逃したのが悔やまれた。

そのなかで一番みたかったのが、真ん中の“呂洞賓図”(りょどうひん、重文、大和文華館)。リカバリーに6年かかった。まったく度肝をぬかれるのが龍の頭に上にのっている仙人、呂洞賓の立姿。そっくりかえった顔のあごひげは右になびき、衣は左のほうへ勢いよく流れている。相当強い風が左右前後から吹いているのだろう。

呂洞賓の左手にもった壺をよくみると、中から龍が出てきており、これが右上空の龍に変わる。この龍は聖人。で、この絵は人が聖人を仰ぎ見る場面ということになるが、そういう絵の解釈はどこかへ行き、映画“インディ・ジョーンズ、失われた聖櫃”の最後のシーンのようなイメージが頭にこびりついている。

雪村は風の表現が神業的に上手い!鯉にまたがった“琴高・群仙”(京博、06/3/1)や“列子御風”(アルカンシェール美)でも、衣がちぎれそうになるくらい風がびゅーびゅー吹いている。どうしてこんな描き方になったのか興味深々。

ここ数年の東博平常展にでてきた雪村の絵は“松鷹図”(重文)、“蝦蟇・鉄拐図”(05/8/4)、“鷹山水”(07/7/13)の3点。今回は見るからにユーモラスな“蝦蟇・鉄拐図”が展示してある。下はその左隻の“蝦蟇”。三本足の蝦蟇蛙の安定感のない動きとその蛙を操る蝦蟇仙人のグロテスクな容貌が見る者を強力に惹きつける。

7/29からは待ちに待った“風涛図”(重文、野村美)が登場する。これはどういうわけか回顧展にも出品されてない。代表作といわれているので、期待が高まる。

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2008.07.09

対決ー巨匠たちの日本美術  長次郎 vs 光悦

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今回のような日本美術のお宝がドドッと展示してある超贅沢な展覧会であっても、お目当ての作品は人それぞれ。過去見たのは軽く見て、長らく追い求めていた作品の鑑賞に多くの時間を割いた。その作品とは、

★呂洞賓図(雪村):7/8~7/27
★風涛図(雪村):まだ展示なし、7/29~8/17
★赤楽茶碗 銘加賀光悦(本阿弥光悦):全期間
★鳶鴉図(与謝蕪村):全期間
★雪中遊禽図(伊藤若冲):7/8~7/27
★唐獅子図(曽我蕭白):全期間
★海浜奇勝図屏風(長沢芦雪):全期間

いつも年初に追っかけリストをあらたに作っているが、今回一気に7つもこのリストから外れるのだから、ニコニコ気分。2回目の“VS”はその念願のやきものが入っている“長次郎 vs 光悦”ー楽焼に競う わび数寄の美ー

長次郎は上の“黒楽茶碗 銘俊寛”(重文、三井記念美蔵)、“黒楽茶碗 銘大黒”(重文、拙ブログ06/10/31、展示は7/8~13)、“赤楽茶碗 銘無一物”(重文、頴川美)、“赤楽茶碗 銘道成寺”の4点。

これに対し、光悦の楽茶碗5点は直線的な角造りのものが真ん中の“赤楽茶碗 銘加賀光悦”(重文、相国寺)、“黒楽茶碗 銘七里”(五島美)、丸味をおびたものが“黒楽茶碗 銘時雨”(重文、名古屋市博)、“赤楽茶碗 銘毘沙門堂”(展示は7/8~
21)、“赤楽茶碗 銘大ふく”(展示は7/23~8/17)。

長次郎の茶碗は06年9月、三井記念美で開催された“楽茶碗展”に“道成寺”を除いて展示されたから、記憶に新しいところ。個人蔵の“大黒”は今回も展示期間は短く、わずか6日間。誰が持っているか知らないけれど、長く手元を離れるのがよほど嫌なのだろう。これほどの名品なのだから、ほかの作品と一緒に全期間展示して欲しいのだが。腰がくびれ、薄くなめらかな釉調の“俊寛”も絶品。

光悦の“銘加賀光悦”とやっと会えた。やきものの本でこれを見つけて以来、ずっと対面を願ってきた。うわさに違わず景色に富んだ茶碗で、鋭い縦のへら目や炎のような赤色を釘付けになってみた。これでこの4年の間に追っかけていた“白楽茶碗 銘不二山”(国宝、サンリツ服部美)、“赤楽茶碗 銘雪峰”(重文、畠山記念館、06/1/11)の3点を全部見ることが出来た。ミューズに感謝!

光悦はやきもののほかに東博と京博のお宝“舟橋蒔絵硯箱”(国宝)と下の“鶴下絵三十六歌仙和歌巻”(重文)がでている。陶芸家、荒川豊蔵が所蔵していた“鶴下絵”はいつ見ても心に響く。宗達の描く群鶴のしなやかでのびのびした飛翔フォルムと雅のかおりの漂う光悦の見事な書に痺れっぱなし。日本には本当にスゴイ芸術家がいた!

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2008.07.08

対決ー巨匠たちの日本美術  仁清 vs 乾山

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待望の“対決ー巨匠たちの日本美術”(東博 7/8~8/17)がはじまった。会期は一ヶ月ちょっとだから、昨年10月の“狩野永徳展”(京博)同様、のんびり構えているとすぐ終わる。会期は短いが、内容はもうたまらなく濃い。

絵画、やきもの、彫刻の分野における“THE 日本の芸術家”が生み出した傑作中の傑作が一度に見られる機会なんて大げさに言えば20年に一回くらいしかない。日本美術のエッセンスが濃蜜につまった名作の数々は、スイスアルプスに例えるならば、モンブラン、モンテ・ローザ、マッターホルン、アイガーなどの名峰を見るようなもの。

ここに登場する24人の作品(110点)はどれも一級品だから、こちらが良くて、あちらはちょっと劣るというものではない。展示の仕方は巨匠たちの“対決”というスタイルになっているが、これは展覧会をもり上げるための演出。“対決”をとりはずして、自分の視点で名作を堪能したいという方もいるはず。それも一つの楽しみ方。

でも、主催者は今人気のアーティスト、山口晃に巨匠の似顔絵を描かせて(原画が1階に展示してある)、興味を惹こうとしているのだから、この仕掛けに乗って、この際作品に対する自分の好みを旗色鮮明にするのも一興かもしれない。

すると“伊藤若冲にぞっこんだったが、曽我蕭白もぐっとくるねー!”とか、“雪舟は知っていたが、雪村というのもいたんだ?あの呂洞賓図のポーズ、面白いなんてものじゃあないな、参ったよ!”といった別の感じ方が心のなかで起きるかも? ビッグネームの名作がこれほど多くあるのに1回ですませるのはもったいないので、いくつかの“VS”を取り上げてみたい。最初は“仁清 vs 乾山”ー彩雅陶から書画陶へー

やきものはもう一つ“長次郎 vs 光悦”がある。上はいつか紹介しようと思っていた野々村仁清の“色絵吉野山図茶壺”(重文、福岡市美蔵)。いくつかある茶壺のなかで、この装飾美にあふれる茶壺がもっとも気に入っている。はじめてこれに対面したとき、心がとろけそうになった。吉野山は名古屋にいたとき訪問したことがあり、山一面に咲ほこる桜花に大感激した。この茶壺を見るたびに美しい吉野山の風景が思い起こされ、気分がハイになる。

仁清の桜に対して、尾形乾山の作品は秋の紅葉を描いた“色絵紅葉図透彫反鉢”(真ん中)。この反鉢は乾山の透鉢の定番。紅葉をモティーフにしたものが出光やMOAなどに数点あるが、この個人がもっているものがベスト。黄色、赤、緑の発色がすばらしく、反った口縁の内の外に隙間なく描かれた紅葉の意匠とシャープな形が見事に調和している。二つの名品が並んだこの空間にいると、なんだかサントリー美の“KAZARI 日本の美の情熱”の続きを見ているよう。

下は久しぶりにみた乾山の“色絵菊図向付”(五島美)。菊文の花芯の黄色と葉の緑がなんとも鮮やか!そして、心をとらえるのが菊の意匠に合わせて向付の形をきめているところ。乾山はこれまで誰もやらなかったことを豊かな感性で生み出す。アイデアが尽きないのが天才の証!

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2008.07.07

ナダル ウィンブルドン初制覇!

419フェデラーとナダルが戦ったウィンブルドン決勝を見た。

一年前も同じ二人の対戦で、このときは最後まで見たが(拙ブログ07/7/9)、今年は2セットをナダルがとり、3セット目もあと少しで決着がつくところで生憎、雨が降ってきた。

深夜だいぶ過ぎていたし、いつ試合が再開するかわからないから、リアルタイムの観戦はここまでにし、ビデオをセットしてベッドに入った。今朝、目を覚ますと同時にPCで結果をみたら、二人はスゴイ戦いをしていた。

勝ったのはナダル。試合の経過を見ると6-4、6-4の後の2セットはフェデラーがタイブレークで勝ち、2セットオールに持ち込み、試合はフルセットまで進んだが、最後はナダルが9-7でとり、初優勝した。TVの前から離れるときは“ナダルが3-0のストレートか3-1で勝つかな!?”と予想していたが、流石、“芝の王者”フェデラー、2セット連取で盛り返し、タイブレークのない最終セットは9-7までもつれていた。

試合時間は4時間48分(史上最長)とあまりに長くなったので、放送は4時半から3チャンネルに切り替わっていた。で、最後の感動のシーン(左の写真)は残念だがビデオに収録されてない。再生ビデオで一番おもしろかったのが、第4セットのタイブレーク。まさに死闘。

タイブレークになると、7ポイント以上で2ポイント差をつけないと勝てない。ナダルは
5-2ですごく優位に立った。あと2ポイントでウィンブルドンのチャンピオンになれる。しかも、サーブ権を2回もっている。会場はだんだんざわついてきて、フェデラーの122年ぶりの6連覇はならずか!という空気が流れ出した。

が、ナダルはプレッシャーからかサーブが入らず、ダブルフォールト。そのあともミスして、あっというまに5-5。そこから、ナダルには7-6、8-7と2回マッチポイントがめぐってきた。ところが、フェデラーはそれを必死にしのぎ、逆に10-8でこのセットをとった。こんなスゴイ試合は滅多に見れない。1976~80年ころのボルグとマッケンローの名勝負が思い出され、眠らないで見続ければよかったと後悔した。

ナダル(スペイン、22歳)はその強靭なフットワークに裏打ちされたストロークがすばらしく、試合運びも冷静で王者の風格がでてきた。こんな試合をみせつけられたら、テニス熱が一気にあがる。次の大きな大会は全米オープン?番組表をよくチェックしておこう。

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2008.07.06

マリナーズ城島はソフトバンクに帰りたい?

416監督の交代したマリナーズはここ10試合、7勝3敗と勝ちムードがでてきた。

イチローは今日のタイガースとの試合で2安打を放ち、打率は0.304まで上げている。

レギュラーシーズンの半分を過ぎてイチローのヒット数は100を超えたから、オールスター後にエンジンを再点火して、量産モードにもっていけば、年間200本安打の達成は問題なさそうだ。

イチローはもう安心してみていられるが、心配なのが城島。こちらは相当深刻な状況にある。今日のタイガース戦の勝ち方はちょっと複雑。というのも、チームの勝利に貢献したのは新監督になって先発捕手に起用されることが多くなった新人クレメントの2本のホームラン。

現在、城島の置かれている状況はとても厳しい!クレメントはよほど打撃や守備でスランプに陥らない限り、残り試合の大半は使われることになるだろう。今、3試合のうち2試合はクレメントが先発し、城島は1試合しか出れない。新しい監督はおそらく、捕手はクレメントに固定して、城島は指名打者あるいは一塁手として使うつもりだろう。これは城島にとっては大ピンチ。

城島はプライドが高いから、相当こたえていると思う。来年からの3年契約を結んでいるとはいっても、それは前GMのもとでのこと。新GMや監督はチームの再建を軌道に乗せないと自分たちの首が危ないから、思い切って自分流で仕事を進める。だから、その方針に合わなければ城島はトレードに出されることになる。

どうして、こんなことになったのか?今年の城島の成績が悪すぎるのである。現在、65試合に出場して、打率0.223、ホームラン3本と最悪!過去2年と比較してみればその悪さ加減がわかる。
06年 試合数144、打率0.291、ホームラン18本、打点76 
07年 試合数135、打率0.287、ホームラン14本、打点61

今年のマリナーズは2人の先発投手を移籍で獲得し、投手陣は整備されたはずだったのに、ふたをあけてみれば、5人とも打ち込まれることが多く、投手をリードする城島の評価もガタ落ち。で、城島自身もふがいない投手陣の責任を感じるあまり、持ち味の思いっきりのいいバッティングがまったく見られなくなった。

これだけ打撃が悪いとあらぬことを考えてしまう。大リーグで2年間プレーして、そこそこの成績を残せたので、慢心してしまい、昨年のオフはあまり練習しなかったのではないかと?天才イチローでも毎年々ぴりぴりしながら、新しいシーズンを迎えるというのに、城島は緊張感が緩んでいたのではないだろうか。そこに落とし穴があった!?大リーグをなめるのは十年早い!

今の状況を変えるには一塁手でも指名打者でも試合にでたときはもう首脳陣が“参りました!城島”というくらいガンガン打つしかない。もともと城島はあの長島監督が絶賛した打撃センスをもっているのだから、ホームランでもヒットでも打てないはずがない。“俺は大リーグ一の捕手になるんだ。守備力、リード、バッティングは誰にも負けられない!”という強い気持ちでプレーにのぞみ、日本一の捕手の実力を再度、見せつけて欲しい。

もし、それが出来ず、ぐだぐだ愚痴をたれているのなら、捕手の役割を高く評価してくれる日本球界に戻ってきて、古巣ソフトバンクで昔の仲間と一緒にプレーしたほうがいい。2年間、投手とのコミュニケーションの取り方に苦労した城島は大リーグ流の“ピッチャーが主役で、キャッチャーは球をしっかり受けるだけでいい。キャッチャーは打撃力で評価される”という現実に直面させられている。

大リーガーとして、今が正念場。ガンバレ、城島!

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2008.07.05

東海北陸道、全線開通! 七尾(長谷川等伯の生地)が近くなる!?

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中部地方を縦断する東海北陸道が本日、飛騨清見~白川郷インターチェンジ間の24.9キロ(上の地図の赤破線部分。拡大できます)がつながり、全線開通した。これで愛知県の一宮JCTから小矢部砺波JCTまでの185キロが約2時間半で結ばれる。

2年前、白川郷や金沢をバスツアー旅行したとき、飛騨清見ICから荘川ICまで下って、そこから白川街道で上のほうにある白川郷に入ったように記憶している。これが飛騨清見から白川郷ICまですっと行くのだから、東京方面から高山を経て白川郷に行く際の所要時間はだいぶ短縮されるのではなかろうか。

東海北陸道が全線利用できるようになったので、まだ行ってない能登半島とか富山市が近くなったような気がしてきた。富山県は高岡市にある大変立派な端龍寺を見に行ったことがあるが、富山市には立ち寄ったことがない。ここにあるシュルレアリスムや現代アートのいい作品を所蔵する富山県立近代美術館を前々から訪問したいと思っていたが、その計画が実現するかもしれない。

富山とともに是非行ってみたいのが能登半島の真ん中に位置する七尾。ここは長谷川等伯が生まれたところだし、人気の和倉温泉もある。いつか訪問することを想定して寿司屋までチェックしている。七尾美術館で等伯の絵をみたら、ついでに日本海側の羽咋(はくい)まで足を伸ばし、“松林図”に描かれているような松が立ち並ぶ風景を見てみたい。

7/8から東博で開幕する“対決ー巨匠たちの日本美術”(7/8~8/17)では 等伯の“松林図”は永徳の“檜図”と並んで展示されることになっているから、秋あたりに羽咋の松林を見るのが理想的な流れ。能登半島というとまず頭に浮かぶのが輪島。朝市に出かけたり、輪島塗りの工房見学となるだろう。

実際、和倉温泉まで横浜から何時間かかるだろうか?東名の豊田JCTで東海環状自動車道に入り、東海北陸道の美濃関JCTから小矢部砺波JCTまで一気に走る。ここまでが6時間くらい?そしてここから和倉温泉までもう1時間半?となると、休憩タイムを入れ8時間ちょっとだろうか。だんだん本気モードになってきた。

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2008.07.04

清方生誕130年記念 鏑木清方展

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鎌倉の鏑木清方記念美術館で行われている“鏑木清方展”(5/31~7/6)をすべり込みセーフで見てきた。

念願の“道成寺・鷺娘”(拙ブログ5/28)との対面を果たしたのですっかり安心し、記念美で清方の生誕130年を記念した特別展が行われていることを忘れていた。出品作のなかに長らく追っかけている上の“目黒の栢筵”(めぐろのはくえん)があったから、とんだミスをするところだった。

今回は記念展だから館所蔵の名画に加え、東近美、本郷の弥生美術館が所蔵する5点が展示されている。数はいつもの通り15点と少ないから10分もあれば見終わる。東近美のは画巻“目黒の栢莚”(部分)と平常展によく登場する真ん中の“鰯”(いわし)。

“目黒”は一種の歴史風俗画。栢筵は二代目市川団十郎の俳名で、目黒の別邸で団十郎が花ばたけの前に床を据えて、茶を楽しんでいるところが描かれている。江戸歌舞伎の基礎をつくったといわれる二代目市川団十郎(1688~1760)は稀代の名優であっただけでなく、俳諧狂歌文才に優れた風流人でもあった。

団十郎の隣にいるのは娘に白髪を抜かせている妻。紫陽花や白ユリがみえる花ばたけと後ろの木を斜めに描き、その間に3人のいる床を配して奥行きをつくる構成が秀逸。文人、栢筵は心穏やかに豊かな自然を楽しんでいる感じ。清方はこういう素顔の団十郎の心情に共感し、この絵を描いたのであろう。

明治時代の町の様子や風俗は知る由もない。だから、“鰯”に描かれた鰯売りの少年には遭遇することはないのに、絵というものは有難いもので、小さいころ見た竿竹や金魚売りのおじさんのことがおぼろげながら思い出される。清方のこの絵や“明治風俗十二ヶ月”(東近美)とか川合玉堂の風景画を楽しんでいるお陰で、ときどき昔の町の風物詩や日本人の琴線にふれる田舎の情景に感情移入することができる。

下はお気に入りの“朝涼”。以前にも一度取り上げたことがある。長い髪の毛を手でいじくっているところがいかにも少女らしい(清方の長女)。4年前、ここではじめてこの絵と対面したとき即、My好きな女性画に登録した。以来、会うたびにいい気持ちになる。

画集に載っている清方の作品は“目黒の栢筵”を目のなかにいれたので、見たい絵はほぼ済みになった。ここも暫くお休み。

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2008.07.03

生誕290年 木喰展 ー庶民の信仰・微笑仏ー

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現在、横浜そごうで開かれている“木喰展”(6/27~7/24)のチラシがなかなかいい。左斜め横から撮った上の“地蔵菩薩像”(日本民藝館所蔵)が“皆さん。最近、笑ってますか”と語りかけている。

このチラシに誘われたのか会場にはかなりの人がいる。今年は木喰(もくじき、1718~1810)の生誕290年にあたる。これにあわせて企画された大回顧展は昨年10月の明石市立文化博物館からはじまり、これまで全国5ヶ所を巡回し、最後にここへやってきた。

仏像130点、書画や資料30点は見ごたえ充分。06年10月の“仏像展”(東博)にも“十六羅漢像”(京都・清源寺)や今回も出品されている“十王坐像”(兵庫・東光寺)、“十二神将像”(新潟・西光寺)などすばらしいのが13点展示してあったから、この回顧展とあわせると木喰仏の代表作はほとんど見たことになるのではなかろうか。

全部を見終わってまた、会いたくなるのが上の“地蔵菩薩像”と真ん中の“自刻像”。どちらも民藝館にあるもので、馴染み深い作品(拙ブログ06/10/12)。細い目の下がぷくっとふくれる笑顔はほかの像にもみられ、その都度心が和むがこの二体の微笑みが群をぬいていい。

これは木喰84歳の作で、故郷、甲州丸畑に建立した四国堂に納められた八十八体像のひとつ。木喰仏を世に知らしめた柳宗悦(やなぎむねよし)は“どこにこれ程親しげな仏があろう。誰もくつろぎながら仏と語ることが出来る。如何なる者でも仏の伴侶である。無学な者も貧しい者も仏のよき友達である。何も教理を説きはしない。知識を求めはしない。木喰上人は仏教を民衆の手に贈ったのだ”と述べている。

現存する神仏像は617体。このうち15体ある自刻像は今回5点ある。目につくのが6点ある“子安観音菩薩”。そのなかでしばらく立ち止まってみたのが菩薩のふくよかな顔や可愛い子供がきっちり彫られている愛知県新城市徳蔵寺蔵のもの。

木造彫刻として見ごたえがあるのは長岡市の寺がもっている“如意輪観音菩薩”、“千手観音菩薩”、“三面馬頭観音菩薩”など5体。袈裟のカーブとか手、蓮の花に見入ってしまった。

下は再会した“十二神将”。2体は笑っているが、10体は忿怒相。ちっこい神将だが、太い眉毛をつりあげ、ぎょろっとした目でみつめる姿は迫力満点。また、力強く彫られた長い髯や甲冑にも目が釘付けになる。

これほど多くの木喰仏と対面できたことが嬉しくてたまらない。円空に続き、木喰も見せてくれた横浜そごうに感謝々!

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2008.07.02

Bunkamuraのロシア・アヴァンギャルド展

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現在、Bunkamuraで開催中の“ロシア・アヴァンギャルド展”(6/21~8/17)への期待はチラシに謳われている通りシャガールとマレーヴィチ。今回展示してある70点は
1999年に開館したモスクワ市近代美術館が所蔵するもの。

東京都美の“国立ロシア美展”(昨年4月)に刺激されたのか、Bunkamuraもこの展覧会のあと来年には“国立トレチャコフ美展”(09/4/4~6/7)を主催するなど、ロシアの画家の開拓に力が入っている。こういうまだ日本では知られていない名作をどんどん紹介しようという姿勢は好感がもてる。

モスクワ市立近美のコレクション全体の質はわからないが、作品を見る限り中くらいではなかろうか。例えば、マレーヴィチの絵では、アムステルダム市立美やNYのMoMAにある作品と同じくらい質が高いという感じではない。シャガールは“ヴァイオリン弾き”など3点あるが、その色彩や構成にすごく惹きこまれることはなく、普通のシャガールの絵。だから、過度の期待は禁物!

上は魅了された作品のひとつ、ゴンチャローヴァ(ラリオーノフの妻)が描いた“あんずの収穫”。横向きの農婦が着ている赤の衣装と異常に大きい腕と足が目に飛び込んでくる。そのプリミティブな人物描写と農婦の左右に鮮やかな黄色のひまわりを配する色彩構成力に息を呑んで眺めていた。

ネオ・プリミティブのコーナーにあった絵では、インパクトのある目が印象深いグリゴーリエフの“女(連作・親密より)”と強い色調で描かれた横長の大作、レントゥーロフの“女たちと果物(モデルたちと共にいる自画像)”に足がとまった。

真ん中はお目当てのマレーヴィチの作品“農婦、スーパーナチュラリズム”。これはシュプレマティズム絵画のあと、再び具象画へ回帰した作品で、第二の農民シリーズの一枚。農婦の背景にみえる斜めにのびた赤や黄色、緑の鮮やかな色面はシュプレマテイズムそのもので強い躍動感に溢れている。白と黒で交互に彩色された顔のない農婦はどこかレジェが描く人物のイメージ。

サイボーグ的なこの絵と較べると、目鼻のある“刈り入れ人”のほうが緊張することなく見れる。2点あったスプレマティズムの絵“白い/黒い十字架”はMoMAでみたものと較べるとあまり心に響かない。抽象美をすごく感じられる作品を期待したのだが。

下は斜めにゆがんだ構図のため、あまり長くは見てられないが大変惹かれたドミートリエフの大作、“サーカス”。奥行きのある画面構成とドイツ表現主義のような人物表現に思わず見とれてしまった。

新しい美術館のコレクションだから、サプライズの作品がそれほどないのは当たり前といえば当たり前。でも、普段ほとんど見る機会がないロシア・アヴァンギャルドの作品のうえ収穫が数点あったから、◎とはいかないが○はつけられる。

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2008.07.01

08年後半 展覧会プレビュー

360仕事でも遊びでも計画を立てるときは熱が入る。08年後半に開催される展覧会をまとめてみた。

美術館の訪問は半年タクトでまとめた展覧会情報をもとに動いている。途中で新しい情報が入ってくれば、逐次追加の予定。

今年は8月にオリンピックがあり、柔道、水泳、野球、マラソンなど人気種目の応援に忙しくなりそうだから、美術鑑賞とTV観戦の時間のやりくりに苦労しそう。

★西洋美術
7/19~9/23    舟越柱 夏の邸宅       東京都庭園美
8/2~12/14    フェルメール展         東京都美
8/2~10/5     ファイニンガー展        横須賀美
8/8~8/30     秘蔵の名品アートコレクション展  ホテルオークラ別館
8/9~11/3     アネット・メサジュ展      森美
8/30~10/26   ミレイ展             Bunkamura
9/6~11/3     パリーNY20世紀絵画 の流れ 府中市美
9/13~11/9    ジョットとその遺産展     損保ジャパン美
9/13~11/30   モーリス・ルイス展       川村記念美

10/4~12/14   ピカソ展             サントリー美&国立新美
10/7~11/24   池口史子展           松涛美
10/9~10/27   ピサロ展             大丸東京店
11/8~12/23   ワイエス展            Bunkamura
11/9~12/28   石田徹也展           練馬区美
11/15~1/25   セザンヌ主義           横浜美
11/16~1/18   レオナール・フジタ展      上野の森美
11/22~12/28  丸紅コレクション展       損保ジャパン美

★日本美術
6/27~7/24    木喰展              横浜そごう
6/28~9/5     白隠展              永青文庫
7/1~8/2      町田久美展           西村画廊
7/8~8/17     対決ー巨匠たちの日本美術  東博
7/12~9/15    NIPPONの夏          三井記念美   
7/15~9/15    北京故宮 書の名宝展    江戸東博
7/19~9/15    明治の七宝展         泉屋博古館別館
7/26~9/21    小袖 江戸のオートクチュール   サントリー美
8/30~11/3    源氏物語の1000年      横浜美
9/1~9/28     ベルギーロイヤルコレクション展     太田記念美

9/6~10/26    近代日本の巨匠たち      出光美
9/13~10/26   八犬伝の世界          千葉市美
9/13~11/3    土牛・遊亀展           山種美
9/13~10/26   高山辰雄展           練馬区美
9/23~10/12   正木美術館展         東京美術倶楽部
10/4~11/30   濱田庄司展          川崎市市民ミュージアム
10/4~12/7    古伊万里展          静嘉堂文庫
10/4~11/9    室町将軍家の至宝を探る   徳川美
10/7~11/16   大琳派展            東博
10/7~11/30   ボストン美浮世絵名品展    江戸東博

10/25~11/30  近世初期風俗画展      たばこと塩博
11/1~12/23   陶磁の東西交流        出光美
11/8~12/25   琳派から日本画へ       山種美
12/6~12/24   琳派展              MOA
12/23~1/26   japon 蒔絵           サントリー美   

(ご参考)
・西洋画の目玉はなんといっても東京都美の“フェルメール展”。7点のうち4点が日本初お目見え。相当混雑しそう。
・Bunkamuraも“ミレイ展”、“ワイエス展”といいのが続く。テート・ブリテンでは“オフィーリア”などミレイの絵が一点もみれなかったので日本で仕切り直し。ワイエスはいい絵がきて欲しいが期待は半分にしている。
・期待値の高いのは森美の“アネット・メサジュ展”と練馬区美の“石田徹也展”

・日本美術は前半に較べると後半はワクワクするようなすごい展覧会がどっとある。その筆頭が東博の“対決ー巨匠たちの日本美術”。出品作のなかにはメトロポリタン美で会えなかった芦雪の“海浜奇勝図”など長年追っかけていた名画がいくつも含まれている。もうすぐはじまる。
・琳派展も東博、山種、MOAと楽しみ3連発!とくに東博の“大琳派展”は期待大
・浮世絵は“NIPPONの夏”が前菜で、そのあと太田と江戸東博で極上のメインデイッシュをいただけそう。ボストン美の名品が待ち遠しい。

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