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2008.06.07

広重の六十余州名所図会

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ららぽーと豊洲(地下鉄有楽町線豊洲駅から徒歩5分)のなかにあるUKIYOーe TOKYOで開催される浮世絵展はなるべく見逃さないようにしているが、現在行われている“広重ぐるり日本一周ー六十余州名所図会”(5/17~6/29)は行くかどうかでかなり迷った。というのも、“六十余州”は昨年8月、神奈川県歴史博物館で見ているから(拙ブログ07/8/24)、今回はパスかなという気分が強いのである。

でも、HPの文言“摺り、保存状態とも優れていると評価の高い”が気になってしょうがない。また、一月、江戸東博であった“北斎漫画展”(1/11)のときお話をさせてもらったプロの摺師の方も“UKIYO-e TOKYO(平木浮世絵財団)の所蔵している浮世絵は摺りがいいのが多いから、よく見に行きます”と言っておられた。見逃して後で後悔するのも嫌なので、やはり出かけることにした。

果たして、これが大正解!ここのは初摺で、昨年見た丹波コレクションは大半が後摺だった。昨年買った図録で一点々見比べてみると、初摺のほうが断然すばらしい!だから、もう夢中になってみた。展示スペースは広くないが、浮世絵のサイズは小さいから
69点が全部みられる。

“六十余州”の3年あとに描かれた“江戸名所百景”でも言えることだが、初摺と後摺の顕著な違いは、後摺では初摺にあった海や川の藍のぼかしとか空にうっすらと流れる“あてなぼかし”が一部無くなっていたりすることや藍とか緑の微妙なグラデーションがなく均質な色になっていること。

また、色が初摺とまったく違っていたりするのもある。一番びっくりしたのが“美濃 養老ノ滝”。後摺では滝の両端をのぞき空摺の白で表現されているのに、目の前にある滝はまったく逆で大部分が濃い藍で、端にいくにつれてぼかされている。そして、滝のまわりの岩の色が緑と黄色ではなく、まさにこげ茶のグラデーション。“ありゃりゃ、こんなに違うの!”という感じ。

とにかく初摺のほうが海、川、空、そして家の屋根にまで色の諧調をきかせ、色の微妙な変化を詩情豊かに表現している。広重のやわらかい感性がこうした色調を生み出したのだが、後摺になると、絵師の表現しようとした風景のイメージから変容し、画面全体が平板な印象で強い色味になってくる。広重のはっとする大胆な構図とかはもちろん後摺でも変わることはないから、後摺でも広重の魅力を充分に味わえるが、こういう摺りのいいのを見ると、やはり浮世絵の楽しみは初摺を見ることだなとつくづく思う。

気に入っている絵はいくつもあるが、昨年取り上げなかったのを3点選んだ。上は風のシュールな描写にびっくりする“美作 山伏谷”。川を流れる舟のまわりを囲むように藍のぼかしがきっちりはいっている。真ん中はかつお漁を描いた“土佐 海上松魚釣”。大きな波のうねりを表す藍の濃淡が目に飛び込んでくる。下は“薩摩 坊ノ浦雙剣石”。この奇岩が実際にこんな面白い形をしているかわからないが、いつかこの目で見たくなるような光景である。

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