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2008.05.04

暁斎 Kyosaiー近代へ架ける橋

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京博で行われている河鍋暁斎の大回顧展(4/8~5/11)を見てきた。会期は昨年あった狩野永徳展同様、一ヶ月と大変短い。作品の数は135点。この中には下絵が13点あるから、本画は120点ちょっと。質、数ともに文句のつけようの無い10年とか20年に一度クラスのすばらしい回顧展である。

会期は短いがその分、会期中作品の展示替えがまったくない。“風俗鳥獣画帳”、“地獄極楽めぐり図”(静嘉堂文庫)など4点は前後期で作品が替わるが、これはシリーズもので数が多いため。京博はこの展示方法を狩野永徳展からはじめたが、二重丸で評価したい。大規模な日本美術の展覧会では嫌になるくらい展示期間を細かく分け、作品の展示替えをするので、全部見ようとすると割高な料金を何度も払わなければならない。

会期を2~3ヶ月とり、作品を沢山展示する展覧会がもちろんあってもいいが、永徳とか暁斎といった日本美術史のなかで重要な位置を占める作家の場合、展示替え無しで国内外の美術館から集めてきた名品が一発で見られるのは大変有難い。京博は画家の発掘もそうだが展示のやり方にもイノベーション精神にあふれている。他の美術館でも京博方式の展覧会が増えることを期待したい。

さて、河鍋暁斎の大回顧展はどれくらい面白いか。目の前にある作品は期待値を大きく上回っている。暁斎は04年12月、東京ステーションギャラリーであった“国芳・暁斎展”で一ラウンドこなしているから、手元にある画集に載っている作品をながめて狙いの絵を代表作中の代表作“大和美人図屏風”(下の画像)と“地獄極楽めぐり図”に定めていた。

この2点がみれればもう元はとれるという考えだから、それほど作品にのめりこむことはないと思っていたが、会場を進むにつれてだんだんテンションがあがってきた。つくづく残念なのが“これはいいな!”と惹きこまれた作品は大英博物館など海外からやってきたものが多いこと。大英博物館の“閻魔”、“幽霊図”、“鳥獣戯画”、イスラエル・ゴールドマンコレクションの“大仏と助六”、“猿図”など。

上は“鳥獣戯画”シリーズのなかで“蛙と猿の的射ち”とともに足をとめニコニコ顔でみていた“蛙のヘビ退治”。“国芳・暁斎展”のときにも“鼠の猫退治”(拙ブログ04/12/14)と一緒に同名の戯画(河鍋暁斎記念美蔵)が展示してあったが、こちらのほうが断然いい。二つの棒に頭と胴体をくくりつけられたヘビの上で蛙が逆立ちをしたり、曲芸やブランコ遊びに興じている。今までいじめられてた弱者は強者をこれくらいやっつけられれば痛快だろう。こういう絵を思いつく暁斎の想像力はとてつもなくすごい。

静嘉堂文庫の“地獄極楽めぐり図”(前期11図、4/27で終了)は狙いの作品だったが、それほど感激しなかった。また、惜しいことに見たかった“極楽行汽車”は後期(4/29~5/11)の展示だった。お目当ての美人画のほかで惹かれたのは碁打ちを楽しんでいる鬼たちを岩の陰から見ている鐘馗を描いた“鬼碁打図”、曽我蕭白の画風をイメージさせる“白鷲と猿”、“浮世絵大津之連中図屏風”、プライスコレクションにも同じような絵がでていた底抜けに楽しい“吉原遊宴図”。

真ん中は再会した大きな“新富座妖怪引幕”。これは仮名垣魯文が開場して2年目の新富座に贈った引幕で、人気役者達を妖怪に仕立てている。暁斎は酒を飲みながら4時間で描きあげたという。大目玉のろくろ首で“暫”の出で立ちが団十郎で、般若のような顔をした“化猫”が菊五郎。とにかく迫力のある絵である。

最後の部屋で一際輝いているのが下の“大和美人図屏風”。これは右隻のほう。誰がみても頭がデカイと思うはずだが、不思議なことにそれが全然気にならない。白い顔と赤い地に文様が精緻に描かれた衣装はうっとりするほど美しい。弟子のコンドルに贈ったこのすばらしい美人画を見れた喜びを今かみ締めている。

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コメント

しばらくブログをお休みされておられたのでまたパソコンが壊れたのかと思いましたよ。
さて「暁斎」行ってらしたのですね!
巡回しないと分かっているのですがなぜか中央線の車内広告に暁斎展のポスターが貼られていますね。
さて僕はなぜかMIHO MUSEUMの特別展「与謝蕪村」のチケットを持っているのですが、この美術館最寄駅からバスで50分というところにあり、どう時間調整するか悩んでいます。
日帰りで「暁斎」とのはしごは可能でしょうか?
いづつやさんがほかにどの美術館を訪ねられたのか、よろしければ時間の目安を教えてください。

投稿: oki | 2008.05.05 00:30

to okiさん
京博が主催する河鍋暁斎展ですから見逃せません。
MIHO MUSEUMの蕪村展にも行きましたが
、ともにクルマででかけましたから、ふたつをはし
ごできるかはよくわかりません。

MIHOはクルマでないとしんどいですね。でも、
バス(石山寺行or石山行?)がありましたから、
日帰りは可能ではないかと思います。石山寺へは
一度行ったことがありますが、京都駅からすぐつ
いたような記憶があります。

投稿: いづつや | 2008.05.05 12:24

最後の最後の部屋で暁斎の最高傑作といわれる
大和美人図屏風に出会えました。
最後の気力を振り絞って、鑑賞しましたが
幸せな気分に浸れました。
京都まで出かけてよかったです。

投稿: 一村雨 | 2008.05.06 19:03

to 一村雨さん
こんばんは。流石、京博です。これだけ質の高い
暁斎作品が並ぶと圧巻ですね。“大和美人図”は
右隻の女性には心を奪われるのに、左隻のほうは
ぱっとしませんね。

大英博物館の“鳥獣戯画”をにやにやしながら
ながめてました。外人がみると無性に欲しくなる
のがよくわかります。

投稿: いづつや | 2008.05.06 23:16

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