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2008.05.05

その三 ティツィアーノ  ルーベンス  ヴェロネーゼ

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ワシントン・ナショナル・ギャラリーにはティツイアーノ(1485~1576)の肖像画の名作が揃っていたが、メトロポリタンでは見慣れた題材と対面した。上の“ウェヌスとアドニス”と“ウェヌスとリュート奏者”。上の絵はプラドにある原画のレプリカで、西洋美の“ウルビーノのヴィーナス展”にもこれとはちがうアドニスが赤い狩猟帽を被った別ヴァージョン(バルベリーニ宮美蔵)が展示されている。

“ウェヌスとリュート奏者”も同じ構図で描かれた作品6点のうちの一つ。作品の質としては、2年前東京都美にやってきたプラド蔵の“ウェヌスとオルガン奏者”が最もいいが、これをベンチマークにするとメトロにあるのは80点くらいの出来栄えで、現在、西洋美に出品されているウフィツィ蔵のものとほぼ同じレベルの絵。

真ん中はルーベンス(1577~1640)がティツィアーノの作品の80年くらい後に描いた“ウェヌスとアドニス”。ティツイアーノとルーベンスの作品を見較べてみると、ティツィアーノのほうが強く印象に残る。それはウェヌスの姿が真に迫っているから。若き愛人アドニスが狩に出かけようとするのを後ろ姿のウェヌスは体をひねらせアドニスの体にしがみつき必死に引き留めている。

なぜ、“行かないで!”とウェヌスは止めるのか?美少年のアドニスは向こう見ずな性質で、獅子、熊、猪といった危険な獲物を追いたがるので、ウェヌスは心配でたまらないのである。案の定、アドニスは手負いの猪の牙にかかって死んでしまう。

この絵の中には二人のほかに2匹の犬とクピドが描かれている。左のほうにいるクピドはウェヌスとアドニスを恋におちいらせた張本人。ぴゅーと放った矢が偶然ウェヌスにあたってしまったから大変。傷を受けたウェヌスはたちまち美しい狩人アドニスにメロメロ。プラドにある原画ではクピドは眠っているが、この絵ではクピドは二人のやりとりをじっとながめている。

ルーベンスの絵で面白いのはこの可愛いクピドがアドニスの足を引っ張っているところ。“ウェヌスお姉さんの愛の力ではアドニスお兄ちゃんの血気を止められないのなら、ここは僕が体を張るしかないな!”クピドちゃんは健気だね!ティツィアーノの絵と較べるとアドニスに動感がないが、ルーベンスは体を斜めにして説得するウェヌスにクピドを加え二人の引き留めようとする気持ちがどんなに大きいかをこの三角形の構図で表現したかったのかもしれない。

クピドは下のヴェロネーゼ(1528~1588)の“ウェヌスとマルス”でも愛の手助けをしている。恋多き女神ウェヌスのここでの相手は軍神マルス。眩しいくらい白い肌をしたウェヌスは当世風の貴族的な衣装をしたマルスの肩に手をかけ、下でクピドが二人の足を紐で結び付けているのを見ている。

指と指を結ぶのはすぐ愛をイメージできるが、足を結ぶというのはちょっと違和感がある。でも、クピドの気持ちはよくわかる。こういう絵ははじめてみたが、ヴェロネーゼはなかなか茶目っ気がある。ロンドン、パリ、ワシントン、ボストン、NYをまわったなかで、“カナの婚礼”(2/26)、ロンドンのナショナルギャラリーでみた“愛の寓意”、フリックコレクションにある“美徳と悪徳”、“智と力”にも魅了されたが、この絵が一番グッときた。

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