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2008.05.12

その十 クールベ展

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1月、パリのグラン・パレでみた“クールベ展”(拙ブログ2/28)がメトロポリタンに巡回中だったので(2/27~5/18)、グラン・パレではお休みした隣の方のガイダンスを兼ねてもう一度みた。この特別展は“プッサン展”同様、追加の料金はとられない。世界中の美術館から代表作を集めてきた大回顧展が無料で見られるのだから、ここは本当に有難く愛着を覚える美術館である。

グラン・パレとの違いはオルセー所蔵の作品が半分くらい出品されてないこと。で、クールベ(1819~1877)の名前を一躍有名にした大作2点、“オルナンの埋葬”、“画家のアトリエ”はお目にかかれなかった。これはあまり長くオルセーを離れていると入場者からクレームがつくから、これを避けたのかもしれない。また、日本の村内美術館がもっている大きな樫の木の絵(図録の裏表紙に使われている)やものすごく大きな狩猟画“追い詰められた雄鹿”もなかった。

このほかはまだ記憶にしっかり残っている。出品作の中には今回訪問した美術館所蔵のいい作品が含まれている。ワシントンナショナルギャラりーの“ルー河の水源”、ボストンの狩猟画“分け前”、メトロポリタンの“女とオウム”、“波の中の女”、真ん中の“村の娘たち”。ここには出てなかったが、シカゴにある女性の肖像画“グレゴワール小母さん”もインパクトのある絵。これらはいずれも画集に載っている作品。これをみるとアメリカのコレクターもクールベの名画をきっちり収集している。豊富な資金力だけでなく眼力も一流。

初期に描かれたロマン主義の香りのする自画像にはぐっと惹きこまれるものが多いが、お気に入りベスト3は上の“パイプの男”、“自画像(絶望した男)”、“黒い犬を連れたクールベ”。クールベは背が高く、人目を引くほどハンサムだった。“パイプの男”の何かに陶酔したような貴族的な風貌がとても印象的。そして、髪を手でかきむしり目をかっと見開き正面を見つめている“絶望した男”も心を揺すぶる。

真ん中の写実的な人物風景画“村の娘たち”に描かれているのはクールベの妹3人。背景の緑の山と白い岩肌のなかに明るい陽光をあびた女性たちや牛が浮かびあがっているような感じが心をとらえて離さない。衣装を着ている女性の絵では“眠る糸紡ぎ女”や金髪が眩しい“窓辺の3人のイギリス娘”にも足がとまった。

グラン・パレのときには大好きな風景画“雷雨のあとのエトルタの断崖”を取り上げたが、再会した“シオン城”も忘れられない絵。スイスに亡命を余儀なくされたクールベはレマン湖岸のシオン城からほんの数キロのところに住んでいた。若い頃、スイスのジュネーブにいたとき、9世紀頃建てられたこのシオン城を訪れたことがある。

美しい古城で、遠くから見ると、まるで湖の上に浮かんでいるように映る。まことに絵になる風景である。ジャズピアニスト、ビル・エバンスはアルバムのジャケットにこの城を使っていた。ジャズフェスティバルが開催されるリゾート地として有名なモントレー(晩年チャップリンが住んでいた)はここからすぐのところ。

詩人バイロンはシオン城に監禁された宗教改革者の物語を題材とした“シオンの囚人”(1819年)をつくったが、クールベの心にはこの詩がいたく沁みたにちがいない。

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