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2008.05.13

その十一 アングル  モロー  ジェローム

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正面玄関を入ってまっすぐ進むとロバート・レーマンコレクションが展示してあるギャラリーが見えてくる。かすかに残っている記憶を思い起こしてみても、また直近にみた収録ビデオと較べても、目の前にある展示室は明らかに違う。どうやら、ここは現在工事中のようで完成するまで、作品はこの臨時の展示室に集められている感じだった。

ちょっと面食らいながら進んでいたら、目を見張らせる絵が現れた。上のアングル
(1780~1867)が73歳のとき描いた“ブロイ公妃”である。目の前に本人がいるようで、思わず息を呑み込んだ。やわらかい白い肌、豪華な青いドレスのなめらかな質感とひだの描写に目を奪われる。なで肩をしたモデルを穏やかな気持ちで見られるのは古典的なピラミッド型の構図で描かれているため。

女性の胸とウエストの間隔が短かすぎるのに、ドレスを膨らませ、ソファを体にくっつけて安定的な三角形構図をつくっているので、それが気にならない。少し離れたところで見たら、この絵はまわりの絵と較べて断トツに輝いていた。女性の肖像画でこれほど感激したのは久しぶり。エポック的な鑑賞体験になりそう。

2階にある素描、版画、写真のコーナーを左のほうに進むとT字のようになっている長い通路につきあたる。ここから向こうに館自慢の19世紀ヨーロッパ絵画が飾ってある。印象派の名画がこれでもかというくらいでてくる。これはもう圧巻!印象派を見る前に絶対見逃したくないのが2点あった。通路の壁に飾られている真ん中のモロー(1826~
1900)の“オイディプスとスフィンクス”と下のジェローム(1824~1904)の代表作“ピグマリオン”。

“オイディプスとスフィンクス”は18年前対面したとき、ものすごく感動し、すぐさまこの絵の虜になった。モローの絵ではこれが最も気に入っている。視線の集まるのが美しい翼をもつスフィンクスと美少年オイディプスがじっと見つめあう姿。こういう絵をみると、人物描写のなかでは目が一番大事だということがよくわかる。

この幻想的な神話世界にうっとりしたあと、目を画面の下にやるとギョッとする。急いで見たら見逃すものがちらっと描かれている。それはスフィンクスが出した謎に答えられず殺された旅人の足と手。モローの構想力はスーパーだなと思わせる構成である。スフィンクスがどんな謎を出したかはデルフィ考古学博物館の“ナクソスのスフィンクス”(拙ブログ06/2/6)を紹介したときに書いた。

ジェロームの“ピグマリオン”は対面を楽しみにしていた絵。ベルギー王立美術館でシュルレアリスト、デルヴォーが描いた登場人物の性が逆転した女性版ピグマリオン(05/4/26)をみたが、これは神話通りの絵。ジェロームはフランス、アカデミーの画家らしく、輝く白い肌の女性を描かせたら超一級の腕をもっている。

足の膝から下はまだ石像のままだが、お尻から上は血の通う生身の乙女になっているので、体を大きく曲げてピグマリオンと唇を重ねている。このポーズに長年魅せられていたから、感慨深い。

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