« その五 カラヴァッジョ  ラ・トゥール  レンブラント | トップページ | その七 プッサン展 »

2008.05.08

その六 NYでフェルメール三昧!

125_3
126_2
127_5
フェルメール(1632~1675)の絵が飾ってある部屋で面白い光景に出くわした。日本の若い女性モデルが絵の前でポーズをとり写真撮影をしているのである。いずれ何かの雑誌に載るのだろうが、あらためてフェルメール人気の高さを見せつけられた感じ。

ここにある5点は大きさでいうと、ワシントン・ナショナルギャラリーの4点(拙ブログ4/13)と同じような小さな絵が3点、上の“窓辺で水差しを持つ女”、“リュートを調弦する女”、“少女”。そして、真ん中の“眠る女”はこれらの倍くらいの大きさ。下の“信仰の寓意”はフェルメールの風俗画では例外的に大きく、“絵画芸術”(ウィーン美術史美術館)とあまりかわらない。

今回の絵は好きな順に並べてあるが、“水差しを持つ女”に対する熱い気持ちは“眠る女”の3倍くらいある。この絵は18年前はじめてここを訪れ帰りがけに購入した図録(英文)の表紙に使われているから、図版を見た回数はフェルメール作品のなかでは最愛の“青いターバンの少女”(07/10/6)とともに一番多い。

心に強く響くのが右手で窓枠を、左手で水差しの把っ手をつかんだ動きのあるポーズと女性の清楚なイメージを掻き立てる白いかぶりもの。女性の立つ位置、テーブル、後ろの壁に掛けられた地図の配置はよく考えられており、そのフェルメールならではの巧みな構成には心底魅せられる。窓から部屋の中に入ってくる朝の明るい日差しは、部屋全体をやわらかくつつみこみ、静謐な静物画をみているよう。こうしたオランダの家庭の素朴で静かな情景をみていると本当に心が落ち着く。

真ん中の“眠る女”は頬杖をついて居眠りをしている女性の姿がすごく目に焼きつく。これはフェルメールが描いた最初の風俗画。光がさしこむ窓はないが、静かな雰囲気はこれ以降の作品とまったく同じ。カラヴァッジョやラ・トゥールが描いた“女占い師”、“いかさま師”のような風俗画は見る者がすっと絵の中に入っていけ、描かれた人物を笑ったり、あるいはその行為に眉をひそめたりすることが多い。

だが、フェルメールの描く風俗画にはざわざわした喧騒とかユーモラスなところが消え、ほのかな光に照らし出された室内で女たちが眠っていたり、牛乳を注いでいたり、手紙を読んだり、楽器を演奏したりするところが描かれている。フェルメールの絵は前のめりになってみるものではなく、心を鎮めていつもよりは一歩さがってみるくらいがちょうどいいかもしれない。

下の“信仰の寓意”のなかにはいろいろな寓意的表現が散りばめられている。画面の手前、石の下敷きになって床に血を流している蛇を見て瞬間的に思い浮かべたのはカラヴァッジョが描いた“蛇の聖母”(ボルゲーゼ美術館)。胴体の曲がり具合がよく似ている。女性がとっている地球儀の上に足をのせ、胸に手を当てるポーズは“信仰”を表しているが、この女性の顔がどうも苦手。

苦手と言えば“少女”も何度みてもダメ。少女というよりはお婆さんの顔。この絵と“リュートを調弦する女”の前ではいつも、普通の人の何倍ものスピードで年をとるというあのアメリカの少年が襲われた難病を連想するので、あまりながく見ないことにしている。

フリックコレクションにあるフェルメールもすばらしいのでいずれ紹介するつもり。NYは本当にフェルメールが楽しめる街である。I LOVE NY!

|

« その五 カラヴァッジョ  ラ・トゥール  レンブラント | トップページ | その七 プッサン展 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: その六 NYでフェルメール三昧!:

« その五 カラヴァッジョ  ラ・トゥール  レンブラント | トップページ | その七 プッサン展 »