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2008.04.09

東近美の東山魁夷展

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東山魁夷の大きな回顧展は過去2回(93年名古屋松坂屋、04年兵庫県立美)見ているので、東近美で開催中の生誕100年記念展(3/29~5/18)では新規の作品と遭遇することはあまり期待していない。ひとえに馴染みの名作の前に立ち、心地よいひとときをすごすため。出品作93点のうち前半に登場する作品はいつものように東近美蔵のものが続く。

お気に入りは“残照”、“秋風行画巻”、そして上の“白夜光”。“白夜光”をみるたびに北欧へ出かけ、この絵に描かれた情景を目にしたいと思うのだが、しばらくたつと旅行のことは忘れてしまう。で、段々東山魁夷が描く北欧の森の青い絵を見ているだけでもう満足という気になる。とにかく東山魁夷の絵には神秘的な力が漂っている。この東山ワールドに一度でも嵌ってしまうともう抜け出せない。

でも、この大きな絵にはちょっとした副作用がある。絵は実景をまったく写したものではなく、描かれたものは想像とリアルな景色のまざった絵画だけの世界ということはわかっているが、時々この“白夜光”や大好きな青の世界“雪原譜”(今回は出品されない、国立劇場)のような北欧の雄大で静寂な森の世界を見るのと同じ感覚で日本の大きな風景画をみてしまうことがある。

例えば“夕静寂”(長野県信濃美)などはいつも知らず知らずにそんな見方になっている。見ているときはすごく惹きつけられるのだが、全部の作品をみたあとでは別の絵のほうが印象深かったりする。これは日本の風景は北欧とか中国大陸のような大きな自然とは違って、小さな自然なので、画面からはみ出すようには見たくない、それよりは窓枠の中から見るようにもっとトリミングして目の前の景色を切り取りたいという意識がどこかにあるのかもしれない。日本の風景画は昔からそんな風に描かれてきた。だから、東山魁夷の風景画は日本画のなかでは革新的な描き方なのである。

今回青の世界とともに東山魁夷の代名詞となっている白馬の絵が5点あった。中でもすばらしいのが“緑響く”と“白馬の森”(拙ブログ06/6/7)。“白馬の森”のたらしこみ風に描かれた樹木をみていて、ふとこれは東山魁夷が敬愛する菱田春草の“落葉”に霊感を得たのかもしれないと思った。

もう一点、同じように春草を意識したのかなと思わせるのが真ん中の“白い朝”。雪が深く積もる木の枝に一羽の鳥が背中をこちらにむけてとまっている。この淋しげな鳥の姿が春草の“武蔵野”にでてくるまわりをススキにかこまれ小さな細い木にとまっている雀とダブってみえるのである。ちょっとシンミリした。

雪の絵では2年前市川市の記念館でみた“雪野”(06/1/17)に魅了された。また、はじめてみた“山峡飛雪”(吉野石膏)にも心が揺すぶられる。新規の作品ではこれが一番の収穫。吉野石膏は印象派などのいいコレクションをもっているが、日本画の眼力もすごい。流石である!

2階にセットされている東招堤寺御影堂障壁画や下の水墨山水画“灕江暮色”などをみるのはこれで3度目だが、なんどみても感激する。と同時に東山魁夷という画家の偉大さを思い知らされる。東山魁夷は日本画家のなかでは別格の存在。満足度200%の回顧展であった。

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コメント

同じ展覧会観ても、心惹かれる絵は違うんだなと思いました
でも、彼が凄い画家だということには賛成です

投稿: えみ丸 | 2008.04.10 22:27

to えみ丸さん
同じ作品でも見るたびに色々発見がありますね。
今は東山魁夷の心境の変化がどう画面に現れて
いるのかに注目して作品を見ています。

投稿: いづつや | 2008.04.10 23:22

いづつやさんがおっしゃられるとおり、
東山魁夷の絵を見ると心地好い気持ちになりますね。
とりわけ、これだけの回顧展ともなると、
その気持ち百倍になります。本当の森林浴をしている
ような気にもなります。

投稿: 一村雨 | 2008.04.11 04:42

to 一村雨さん
東山魁夷の代表作はほとんど目の中に入れ
ましたが、Myベストは大作では北欧の森の
風景を描いたもの、白馬の絵、唐招堤寺の
障壁画、比較的小さい絵では山種にある
“年暮る”、“緑潤う”です。

東山魁夷の絵は一生の楽しみですから、
4/22から出品される作品を見にまた出か
けます。

投稿: いづつや | 2008.04.11 13:47

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