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2008.04.07

国立新美術館のモディリアーニ展

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アメリカの美術館めぐりで使った名画必見リストに入れていたモディリアーニの作品は3点。ルノワールやドガなどほかの画家に比べると少ない。が、お目にかかれたのは昨日紹介したシカゴ美蔵の“ジャック・リプシッツ夫妻”1点のみだった。一番みたかったワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵で画集に載っている“赤子を抱くジプシー女”とシカゴの“ポンパドゥール夫人”はなかったし、一度みたことのあるメトロポリタンの“ホアン・グリス”も展示されてなかった。

ひょっとすると、国立新美術館で行われる“モディリアーニ展”(3/26~6/9)に貸し出されるからお休みなの?この回顧展は国内では過去最大規模という情報がインプットされていたから、勝手に想像を膨らましてしまった。これがそもそもの大間違い。日本に帰って早速出かけたが、想像していた質の高い作品はあまりなくがっかりした!

最大規模というから、パリのポンピドー、あるいはNYのMoMA、グッゲンハイムの所蔵とか個人蔵で画集に載っている名作が2,3点でてくるかなと期待する。が、海外からの作品はあることはあるがいまひとつグッとこない。油彩61点、素描94点の大半が個人蔵。これも多くは日本にあるものだろう。素描はさらっとみるだけで油彩に期待してどんどん進んだら、極めつきの目玉作品に遭遇することなく出口付近まできた。

“ええー、これくらいのものしかないの?!しかも、1年前、Bunkamuraであったモディリアーニと妻ジャンヌの物語展に出品されたものがいっぱいあるじゃない!!”。ずばり、昨年Bunkamuraの展覧会をみられた方は行かないほうがいい。展示されている作品の質はアベレージをすこし上回っているから、展覧会自体にダメだしをするつもりはないが、よその美術館で1年前に展示した作品をまたごそっと飾るというのはどういう神経をしているのだろうか?国立と名のつく美術館がやることではない。

厳しいコメントはこれくらいにして、Bunkamuraへ出かけられなかった人のために、作品の情報をいくつか。初見でお気に入りの作品は上のモディリアーニ様式の原点のような彫刻っぽい“大きな赤い胸像”、下の大きな目が可愛い“若い娘の肖像”。再会したもので魅せられるのはアサヒビールの大山崎山荘美術館でみた“少女の肖像”、Bunkamuraに出ていた“赤毛の若い娘(ジャンヌ・エピュテルヌ)”、本人の雰囲気をよくとらえている“ジャイム・スーチン”、赤い頬と背景のこげ茶色が印象深い“女の肖像”、“肩をあらわにしたジャンヌ・エピュテルヌ”(拙ブログ07/4/17)。

チラシに使われている横向きの“ジャンヌ・エピュテルヌ”は意外と小さな絵で、それほど感激しなかった。今回国内にあるモディリアーニのいい作品はかなりここへ集まっていると思うが、残念なことに名古屋に住んでいたとき市立美術館でみた“おさげ髪の少女”は出品されなかった。ここにあるのと“少女”を較べてみると、国内では“少女”が一番いいように思えてきた。いつか再会したい。

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コメント

お久しぶりです。
しばらく、いづつやさんの海外レポート楽しませて
頂きました。
さて、本当にこの展覧会、過去最大規模と紹介されて
いる割には中身が薄くて残念でした。
名古屋市立美術館でもモディリアニ展が開催中との
ことで東京と名古屋にモディリアニの絵が分断されて
しまっていますね。

投稿: 一村雨 | 2008.04.08 06:00

to 一村雨さん
モディリアーニ続きでこの回顧展をとりあげた
のですが、まったく期待はずれでした。途中で
何度も“この絵どっかでみたな”と思ってい
たら、みんなBunkamuraにでていたものでした。

ここは優秀な学芸員をおいてなく、展覧会企画
会社に丸投げしているのだと思います。あまりに
プライドがなさすぎます。これではいまひとつ信用
できない上野の森美術館と一緒です。

名古屋市美術館のHPをみるかぎりでは断然、
名古屋のほうがいいですね。自慢の“おさげ髪の
少女”がありますから、開館20周年記念はモデ
ィリアーニの回顧展にしたのでしょう。その気持
ちは手にとるようにわかります。作品の数は多く
ありませんが、質の高そうな絵ですから出かけた
い気持ちになります。

投稿: いづつや | 2008.04.08 10:41

ああ大丈夫なようですね。
僕もこの展覧会素描が多くてがっかりしました。
モディリアーニだけで展覧会開くの難しいのかなー。
原始美術の影響を売りにしていますが、影響があると思えば思えるとその程度ではないでしょうか。
けど日経さんは東山魁夷とのセット券を作ったり御熱心ですね。

投稿: oki | 2008.04.09 23:08

to okiさん
素描はもっと少なくていいから、目玉の油彩を
どんと展示して欲しいですね。例えば、モディリ
アーニの絵が沢山あるオランジュリーのものとか、
MoMAやグッゲンハイムにある裸婦図とか。

察するに、横山大観展のあとだから手抜きした
のですね。これで1500円はどうしようもなく
高いです。東山魁夷展とくっつけた割安のペア券
が逆に高いものにつきました。1500円払って
入館した隣の方は機嫌が悪いです。

投稿: いづつや | 2008.04.10 16:34

名古屋のモディリアーに展へ行って来ました。
記事は明日アップしますが、展示数では国立に劣る
ものの展示作品の質は名古屋の方が良いようですね。
未見のものも結構ありましたし、いづつや様が書かれているMOMAの「横たわる裸婦」は眼福でしたよ。
おさげ髪の少女とぜひ再会してみては如何でしょう?

投稿: meme | 2008.04.15 22:20

to memeさん
やはり名古屋のほうがいいですか。展覧会の評価
は数ではないですね。日本画の特別展では当然
名品が沢山あることを期待しますが、西洋画の場合
、極めつきの目玉が2,3あればOKにしてます。

国立新美は誰もが納得する目玉が1点もないのです
から、ちょっとお粗末ですね。ボストン美や徳川美
でもいいのをやってますから、ひさしぶりに名古屋
市美へ出かけることにしてます。とても楽しみです。

投稿: いづつや | 2008.04.16 10:55

いづつやさんの記事や皆さんのコメントを拝見していると、美術館(アートセンター)での展示って難しいって感じます。いい作品が展示されていれば評価されやすいですが、展示の構成や文脈はなかな評価されにくいものなのですね。
>展覧会企画会社に丸投げ
こんなことがあるとは知りませんでした。学芸員資格を持つ身としては、ここに再就職してもいいかも、と思っています(苦笑)。

投稿: 自由なランナー | 2008.05.07 23:19

to 自由なランナーさん
お久しぶりです。学芸員資格をお持ちとはすごい
ですね。いつかお話をきかせてください。

国立新美のモディリアーニ展はすごく期待して
ましたから、がっかりしました。展覧会の楽しみ
方は人それぞれですから、展示品、構成の仕方
にたいして評価が異なるのは仕方がないですね。

私は展示の切り口やテーマとか美術史の勉強の
ような展示にはあまり関心がなくて、名作の追っ
かけがメインの鑑賞です。ですから、手元にある
画集、例えば、世界各国で出版されている
TASCHEN本に載っているような名画が2,3点
あればその展覧会はOKなのです。

まともな学芸員なら、少なくとも過去日本で実施
されたモディリアーニ展にどんな名画が出品さ
れたかはちゃんと把握した上で自分達の美術館の
企画を考えると思うのですが、この回顧展は
そういう風にはみえません。

来週でかける名古屋市美のほうが質はかなり高
そうです。回顧展というのは多くの人が評価してい
る代表作とか新発見の名画を見せる特別展のこと
であり、それを愛好家は期待しています。

アメリカの美術館を回りまだみてないモディリア
ーニの傑作がいくつもあることがわかりました。
また、手元にある画集にも個人蔵の名画がいくつ
も載っています。アフリカの仮面の影響うんぬん
より、もっと油彩の名画を世界中から集めてきて
もらいたかったのですが。

ここの館長、学芸員のレベルがわかりましたので、
これからは上野の森美同様半分しか信用しないこ
とにしました。

投稿: いづつや | 2008.05.08 22:19

いづつやさん、丁寧なコメントありがとうございます。
美術展を鑑賞する視点は、それぞれです。ただ、ちょっと気になることもあり、ちょっと長くなりますが、書かせていただきます。今年の3月に卒業した武蔵野美術大学では「博物館実習」「ミュゼオロジー」といった授業で、美術展の企画を立てる課題を散々やりました。それに基づいたことが、以下の雑文です。
・美術館に展示をするということは、家庭や企業内に絵画を飾ることとは違います。そこには展示に対する考えが必要とされます。どのようなコンセプトで展覧会を構成し、そしてどんな作品を集めるかが学芸員の重要な仕事であることは、ご存じかと思います。
・どのような作品を展示すれば、展覧会のインパクトが強くなるかは、当然学芸員は考えています。しかし、それ以上に重要なのは、展覧会を構成する思想です。過去に国内で展示されている作品でも、違ったコンセプトのもと、新たな文脈のもとに置かれれば、作品は違う見方をすることができる。このことがもっとも重要です。極言すれば、例えば100点の作品で構成されたある展覧会を、作品を入れ替えずに、違う企画の展覧会にすることも可能です。
・これもおわかりだと思いますが、現在日本の美術館をめぐる状況はよくありません。授業で教わったのですが、「レジャー白書」の統計によると、趣味(細かい内容は忘れたのですが、例えば、映画鑑賞とか、スポーツとか)の中で美術館にいく人の割合は、毎年減り続けています。このままでは、「愛好家」が望んでいる美術展の開催内容も、量と質の両面で落ちていくことは否定できません。
・以下は私見です。現在のアート状況を改善する方法のひとつとして、愛好家の方に期待しています。いづつやさんのように作品をみる能力が高く、その魅力を伝える表現力をお持ちの方が、周りにいる人(友人、奥様、ご主人、子どもなど)を巻き込んで、美術館に足を運ばせて欲しいのです。そのとき、名品があることも必要かもしれませんが、それ以上に重要なのは、画家がどのような理由でその作品を作ったかを鑑賞者に伝えてあげることだと思います。それはどうしてか? 名品に惹かれて美術展にいくより、作品を作ることの本質を知ることのほうが、美術そのものに興味を持つことのきっかけになりやすいと考えるからです。
いま大切なのは、愛好家でない人をどうミュージアムに行かせるか、それも継続性をもって行かせるか、だと思っています。

 長くなり申し訳ありません。これからも素敵な文章を期待しております。

投稿: 自由なランナー | 2008.05.11 23:35

to 自由なランナーさん
武蔵野美で学ばれていたのですか?そうすると
学芸員の卵ですね。いつかどこかの美術館で
特別展を企画することも十分ありえますね。
そのときは存分に力を発揮してください。

最近は美術館へ足を運ぶ人が傾向的に減っている
というのははじめて知りました。昨今は諸物価
が高騰し家計が厳しくなってますから、展覧会
の鑑賞にかかる費用も真っ先に削られますね。
美術館はこれから厳しく選別されると思います。

東京では来年いくつかの美術館がオープンします。
新装根津美術館。山種美もつい先日、恵比寿への
移転計画を発表し、秋開館にむけて動き出しま
した。また、丸の内には春、三菱一号館美術館が
プレオープンします(本格オープンは10年春)。

私は美術の専門家でもないし、美術学校の先生で
もありませんから、普通のひとに展覧会の楽しみ方
を教えてあげる立場にありません。美術館へ出かけ
るのはひとえに名画を楽しむためであって、画家の
物語や美術史を理解するためではありません。

だぶん、自由なランナーさんのほうが美術に関し
ては専門家的な見方をされ、美術と真摯に向かい
あっておられるように思います。私は極端な言い方
をすると追っかけ作品を全部見てしまえば、展覧会
へ行く回数を減らし、他の楽しみにエネルギーを
注ぐことにしてます。まだ見たい絵が残ってます
から、すぐにこういう鑑賞スタイルになるという
わけではありませんが。

“絵画は好きだけど、展覧会へしょっちゅう行く
ほどでもないわ、それほど詳しくないし”という
人が8割です。そういう人を満足させるには美術の
教科書や画集に載っているような代表作を展示する
のが一番ではないですか。これに上手な見せ方、
わかりやすい解説があれば申し分ありません。
京博やサントリーや出光はこれがとても上手です。

モディリアーニの画風が何によってもたらされたか、
画家の心はどうだったのかなどは美術史を研究して
いる専門家とか、なにがなんでもモディリアーニが
好きという人には興味深いテーマであっても、普通
の美術好きにはそれほど関心のあることとは思え
ません。

展覧会に対する期待は人さまざまですから、学芸員
がどう企画しようといいのですが、構成や見せ方を
工夫するといっても、作品の質が高くなければ一般
受けしません。今は数がそれほど多くなくても、いい
作品を集めてくれる美術館に高い点数をつけたいで
すね。

では、このあたりで。

投稿: いづつや | 2008.05.12 16:03

まあ、立ってる位置が違うと議論にはならないんですね。いいですよね、東京近辺に住んでいる方は。美術館もたくさんありますから。地方なんてひどいもんです。

投稿: 自由なランナー | 2008.05.14 23:00

to 自由なランナーさん
仙台におられる自由なランナーさんには
goodニュースがあります。昨日見に行った
名古屋市美のモディリアーニ展は姫路市立美
(6/8~8/3)のあと、盛岡の岩手県立美
(8/12~10/5)に巡回します。

油彩は36点と少ないですが、国内、世界中
の美術館からとてもいい絵が集まってます。
是非お楽しみください。

投稿: いづつや | 2008.05.15 11:23

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