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2008.04.07

その五 マグリット  クレー  シャガール

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シカゴ美術館で中心となるコレクションは印象派の作品だが、近代絵画や現代アートも質の高いのが揃っている。リストには当然これらが入っている。94年の“シカゴ美術館展”に出品されたものはリストからはずしていたが、当時赤丸をつけたピエロ・デラ・フランチェスカの絵を思い出させるピカビアの作品やフランツ・マルクの“魔法にかかった水車”、シャガールの“祈るユダヤ人”、ドローネーの“赤い塔”などが目の前に現れるとわけもなく嬉しくなる。

でも、一度見た絵の前に長くいるのは時間が惜しいから、さらっと見てお目当ての作品を一心に探す。いくら目に力をいれても現れてくれないのもある。デルヴォーの“人魚の村”やアンリ・ルソーの“滝”、ダリの“最後の晩餐”が見られないのがなんとも惜しい!また、お目当てのマティスの“金魚と女”は色がうすく、期待値の半分だった。思わぬ収穫はフジタの絵やロセッティの“ベアータ・ベアトリックス”があったこと。これには感激した。

思い描いた通りのいい絵でとても魅せられたのが上のマグリット(1898~1967)の“釘づけにされた時間”。時計が置かれている暖炉から機関車が中空を白い煙をあげて疾走している。でも、なぜ暖炉と機関車の取り合わせなの?この意表をつく組み合わせがイメージの魔術師、マグリットの真骨頂。ここには時計が描かれた絵がもう一枚ある。それはマグリットが影響を受けたデ・キリコの“哲学者の征服”。時計は1時27分ときりのよい時刻のすこし前を指しており、マグリットはこれを真似て自分の絵でも時刻は12時42分にしている。

デルヴォー、クレー、エルンスト、タンギー、ダリ、ミロなどの作品が揃うシュルレアリスムの部屋でマグリットの機関車とおなじくらい心に響いたのが真ん中のクレー(1879~1940)の“日没”。6点あったなかではこれが一番輝いていた。赤や青の小さな点をモザイク状に並べる描き方は代表作の“パルナッソス山へ”(ベルン美術館)を連想させ、左上の赤で縁取られた円のなかに描かれた目と鼻(?)が目に焼きつく。昨年あったフィラデルフィア美展でみた“魚の魔術”に次いで今年もまたクレーのいい絵がみれた。情報が一切なかったから喜びも格別。

下はTASCHENのシャガール本に載っている“白い磔刑”。アメリカの美術館には“私と村”(NYのMoMA)や“緑色のバイオリニスト”(グッゲンハイム)などシャガール(1887~1985)の名作がいくつもあるがこれはそのひとつ。十字架のキリストは殉教者としてのユダヤ教徒を象徴し、まわりにはユダヤ教徒に対する破壊と暴力行為が描かれている。

左のほうでは赤旗をかざした革命派の一群が村に突進し、家に火を放ち、右ではナチスの制服を着た男がユダヤ教会の神聖を汚している。白を基調にして描かれているから、混乱のイメージが生々しくはないが、ユダヤ人弾圧に対する悲しみや憤りが深くじわーっと伝わってくる絵である。息を飲んで見た。

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