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2008.04.12

その三 ルーベンス  ヴァン・ダイク  ティエポロ

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西洋絵画を鑑賞していて作品の数で圧倒されるのがバロックの絵画。なかでも、どこの美術館へ行ってもどうしてこんなにあるの?というくらい飾ってあるのがルーベンスの絵とヴァン・ダイクの肖像画。ナショナル・ギャラリーにも質の高い作品が並んでいる。ルーベンス(1577~1640)が7点、ヴァン・ダイク(1599~1641)はこの倍の14点。

ルーベンスに目をみはる絵があった。それは大作の“ライオンの中のダニエル”。預言者ダニエルは動物園の飼育係りではないかと錯覚するほど多くのライオンに囲まれている。数えてみたら、実物大のライオンが10頭いた。ライオンの登場する宗教画ですぐ想い浮かべるのは“聖ヒエロニムス”。このライオンは聖人に足に刺さった刺をぬいてもらったので、従順でおとなしい。

ダニエルとライオンの関係も悪くない。名声の高まった預言者ダニエルはねたまれて、ライオンの洞窟に投げ込まれるが元気一杯のライオンは何の危害をも加えようとしない。でも、ダニエルのまわりにいるライオンは本物そっくりで生き生きと描かれているので、よくニュースで流れてくる動物学者とかサーカスの調教師、動物園の飼育係りが油断してライオンに襲いかかられるショッキング映像を勝手にイメージしてしまう。

心がざわざわしないでうっとり眺めていたのが上の“侯爵夫人ブリジダ・スポノラ=ドーリアの肖像”。まばゆく輝く小さめの顔と金銀の模様が精緻に織り出されたサテンのドレスのなめらかな質感描写に目が点になる。ヴァン・ダイクの女性肖像画を彷彿とさせる衣襞の描き方にまったく心を奪われた。これまでルーベンスの女性画を何点もみてきたが、この夫人の衣装が一番輝やいている。これは一生の思い出。

そして、ヴァン・ダイクの真ん中の“王妃ヘンリエッタ・マリアと小人”もとびっきりの肖像画。これは手元にある画集でもう何年もながめていた憧れの絵。色白で大きな目をした王妃の目線に体がとろけそうになる。やわらかく折れ曲がる衣襞の描写も完璧。このイギリス国王チャールズ1世の王妃は実際はこんなに美人ではなく、ヴァン・ダイクは大いに美化して描いた。

国王の首席宮廷画家ともなると、モデルの願いを無視して描くなんてことは許されない。多少、いや大胆に美化して理想的な女性に仕上げるのが大事な勤め。で、ヴァン・ダイクが描く女性モデルたちはその個性があまり感じられず、だれもが王妃ヘンリエッタ・マリアとよく似たイメージになる。王妃の絵がどうしようもなく好きだから王妃の増殖は大歓迎。この絵をMy好きな女性画の最上位の席にお迎えした。

下の絵ははじめて取り上げるティエポロ(1696~1770)の“アポロンとダフネ”。この絵を是非紹介しようと思ったのはダフネを必死に追うアポロン君が泣いているから。“おいおい、あんたが泣くことはないだろう。泣きたくなるのは言い寄られたくないのにあんたがしつこくストーカー行為をするから、月桂樹に変身せざるをえないダフネのほうだろう!”と思わず注文をつけたくなる。でも、この絵はなかなか魅力的。

ダフネの手が月桂樹に変わっているところを見て目に涙をいっぱいためているアポロンにはびっくりしたが、バロックの絵の動きとロココの優美さが溶け合った画風に大変魅せられた。

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