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2008.03.31

その六 プッサン  ロラン

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ルーヴルで重点鑑賞画家にしていたのはティツィアーノ、昨日取り上げたラ・トゥールとニコラ・プッサン(1594~1665)、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナール。海外の美術館の所蔵品が日本で公開されるとき、プッサンの絵が含まれていることはほとんどないから、ここでプッサンの作品をみるのをラ・トゥール同様楽しみにしていた。展示してあるのはリシュリュー翼の14~17世紀のフランス絵画のところ。

手にしているチェックリストに必見名画の画像を沢山載せていたが、これを大きく上回る数の作品が二つの部屋に飾ってあった。描かれているのは歴史上の事件や聖書やギリシャ神話の話だから、知識として頭になかにはいっている歴史や神話の情報が目の前の絵によって具体的なイメージとして認識されることになる。古代ギリシャやローマ、ギリシャ神話をライフワークにしているから、個々の作品をじっくり味わった。

上は代表作の“アルカディアの羊飼いたち”で、前回不覚にも意識して見なかった作品。画面の真ん中に大きな墓石があり、二人の羊飼いがそこに刻まれた墓碑銘を読みとろうとしている。顔をこちらに向けている男はかたわらの女性をみやっている。視線が集まる指の先に書かれているのはラテン語の“われアルカディアにもあり”。“われ”とは死神のこと。で、その意味は“私は死神であり、牧歌的な夢の国アルカディアにも君臨している”となる。

プッサンの絵は書物のように“読む”ことができると言われるが、これは死をテーマにした絵。二人の男の指をさすポーズで厳粛なテーマを表現しているのであろうか。でも、背景の木々や山をふくめた絵全体の雰囲気は牧歌的であり、死の恐怖といったものはあまり感じないから、いつまでも見ていたい気持ちにもなる。期待通りの名画であった。

真ん中はいくつかある歴史画のなかでもとくに印象深い作品、“サビニの女たちの略奪”。ローマを建国したロムルスが祭りを利用してローマ人を結婚させるため、サビニの女たちを掠奪する指揮をとっている場面が描かれている。男たちに連れて行かれる女たちの恐怖におびえる表情が真に迫り、奥行きのある画面のあちこちから泣き声や悲鳴が聞こえてくるようである。

17世紀フランス絵画でプッサンとならび高い人気を誇ったのがクロード・ロラン(1602~1682)。この画家に対する期待値はニュートラルだったが、太陽に輝く港の風景を描いた作品の数々をみて200%KOされた。とくに心に響くのがどの絵にもみられる光に満ちた遠景の美しさ。

下はギリシャ神話を題材にした“クリュセイスを父親に返すオデュッセウスのいる港の風景”。ロランは古代の歴史や神話をつかって懐古の詩情と理想化した自然の崇高な美しさを描いた。絵の構成はこれの隣にある“クレオパトラのタルソス上陸”やロンドンのナショナルギャラリーでみた“デロス島のアエネアス”、“シバの女王の船出”でもだいたい同じ。

手前に古代の人物を描き、そしてまわりにはローマ風の建物と木立を配する。港には出航するあるいは入ってきた大きな船が一隻、光のあたる遠景の海面を背景にして浮かび上がるように描かれている。風景画をこよなく愛しているのに、どうしてこんなすばらしいロランの歴史風景画を見逃していたのか!これからはしっかりみていこうと思う。

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2008.03.30

その五 カラヴァッジョ  ラ・トゥール

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ルーヴルにあるカラヴァッジョ(1571~1610)の絵は、上の“聖母の死”(部分)、“女占い師”、“アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像”の3点。このなかで前回見たなという記憶があるのは“女占い師”だけ。これは女が世間知らずの若者の指輪を抜き取るというほかの絵では見たことのない場面が描かれているのでよく覚えている。

だが、“聖母の死”とマルタ島の聖ヨハネ騎士団長を描いた大きな肖像画のことを知ったのはカラヴァッジョに関心をもちだしてからのこと。今はカラヴァッジョに夢中だから、この2点と真剣に向き合った。

“聖母の死”は絵のジャンルとしてはちゃんとした教会の依頼で制作された宗教画。横たわる聖母の頭には光輪がみえる。でも、これは伝統的な聖母の絵とはまるで異なる。死んだ聖母の腹は膨らみ、赤い衣装から素足をみせている。一見して普通の妊娠した女性の死体と変わらない。

視線が釘付けになるのがまわりで嘆き悲しむ使途たちの頭や聖母の顔、そして顔を手でおおいうずくまっているマグダラのマリアの背中にあたる光。聖母の死という厳粛な場面をカラヴァッジョは光を効果的に使い劇的に表現している。

カラヴァッジョの光と闇による画面構成がリアルで見る者の心を激しくゆさぶる感じなのに対し、ラ・トゥール(1593~1652)のろうそくやたいまつの光はより内面的で神秘的な雰囲気を醸し出している。05年、国立西洋美術館で開催された“ラ・トゥール展”で一気にこの画家の虜になり、ルーヴルにある7点の作品を見ることが今回の美術館巡りにおける最大の楽しみだった。

で、入館するとシュリー翼3階にあるラ・トゥールの部屋へ真っ先に向かった。ありました!ありました!7点全部。過去2回のルーブル訪問ではこれらの絵に気持ちが向かわず、一つ々の絵をはっきり覚えてないのに、今は前のめりになって夢中でこれらをみている。お気に入りは真ん中の“灯火の前のマグダラのマリア”と下の“大工の聖ヨセフ”、回顧展にも出品された“ダイヤのエースを持ついかさま師”(拙ブログ05/3/14)。

マグダラのマリアの絵はルーヴル所蔵のほかにもう3点ある。“ふたつの炎のあるマグダラのマリア”(メトロポリタン)、“ゆれる炎のある々”(ロサンゼルス郡立美術館)、“鏡の前の々”(ワシントンナショナルギャラりー)。ルーブルとロサンゼルス郡立美の二つはマリアのポーズの取り方とかひざの上にある骸骨の向きや手の添え方がよく似ている。目の前にある絵はろうそくの光が物思いにふけるマグダラのマリアの顔を照らさず、上半身をやわらかくつつみこんでおり、その美しい横顔に心が洗われる。

下の“大工の聖ヨセフ”にも魅了される。幼子イエスの顔にあたるろうそくの明るい光と赤く透けて見える左手を息を呑んで眺めていた。また、じっとイエスをみつめる聖ヨセフの目がとても印象的。闇の中、一本のろうそくの光で浮かび上がる親子の素朴な光景が今も脳裏に焼きついている。待望のラ・トゥールを7点もみられたので気分は上々。クールダウンせずに次の部屋に進んだ。

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2008.03.29

ルーヴル美術館 その四 ルーベンス  ヴァン・ダイク

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パソコンがやっと元に戻りましたので、本日から拙ブログを再開いたします。また、よろしくお願いします。再開にあたって、ルーブル美術館の感想記はもうおしまいにし、あらたな記事からはじめようかなとおもったのですが、感銘深い名画をとりあげないのはやはりもったいないので、残り6回を急いで綴ることにしました。

そして、そのあと3月上旬に行なった美術館巡り第2弾、アメリカ編(シカゴ、ワシントンナショナルギャラリー、フリーア、ボストン、メトロポリタン、フリックコレクション)に進むつもりです。西洋画が続きますが、おつきあい下さい。

4時間いたルーヴル美術館で、鑑賞にあまり時間をかけなかったのがバロックの巨匠ルーベンス(1577~1640)やヴァン・ダイク(1599~1641)の作品。はじめてここへ来たとき、ダヴィンチの“モナリザ”やドラクロアの“民衆を導く自由の女神”とともに強い印象を受けた作品はルーベンスの連作“マリー・ド・メディシスの生涯”。

ルーベンスは多作だから、ヨーロッパの主要な美術館ではこの画家の作品とは頻繁に出会う。そのなかで、“これぞルーベンス!”という印象を与えるのが24点からなるこの連作。リシュリュー翼でまるまる一室を占領しているこの絵は時間の関係で割愛するつもりだったが、“マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸”の前にくるとどうしても立ち止まってしまう。滑らかなシルバーの絹の衣装をまとったマリーの姿に視線が集中する画面構成が見事。

今回、ルーベンスの絵で二重丸をつけていたのは農民の祭りを描いた真ん中の“フランドルのケルメス”。この絵を見るとルーベンスがいかにブリューゲルを敬愛していたかがわかる。ブリューゲルの“農民の踊り”などに登場する人々の動きやしぐさが一枚の絵の中に凝縮されたような感じである。

ご馳走を食べ、酒を飲み、キスしたり、踊ったりとフランドルの農民の粗野な祭りは当時よく知られていたらしく、そんな雰囲気がストレートに伝わってくる。人物の配置が左下から斜めの線にそって配置されており、右上方の空には鳥が二羽飛んでいる。

ロンドンのナショナルギャラリーには人気の女性画“シュザンヌ・フールマン”があるが、ここにあるフールマンと子供たちを描いた2点の絵にも目を奪われる。

ヴァン・ダイクの作品もルーベンス同様、どこの美術館へ行っても数多くある。お気に入りの肖像画は女性を描いたものなのだが、なぜかルーブルには男性の絵が多い。有名なのは“狩猟場のチャールズ1世”。これは本当に圧倒される大きな絵。

下は“選帝侯ファルツ伯カール=ルードヴィッヒ1世とその弟の肖像”。二人は双子ではないかと間違えるくらいよく似ている。これくらい写実的で凛々しい肖像画に仕上がると絵を依頼した選帝侯も大満足だろう。ヴァン・ダイクの高い技量をみせつけられる名作である。

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2008.03.01

お知らせ

ルーヴル美術館の名画紹介の途中ですが、2/28、パソコンのトラブルに見舞われ、4年前購入したY電気に持ち込んだところ、メーカー送りとなりました。リカバーに3週間くらいかかるとのこと。マウスの動きがスムーズでなく、変だなと思っていましたが、突然のダウンに面食らってます。修理が速く終了してくれればいいのですが。で、パソコンがリカバリーするまで拙ブログはお休みします。

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