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2008.02.10

その二 サージェント  ワッツ  ダッド

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テート・ブリテンで当てがはずれたのがターナー。期待を膨らましてターナー専門の展示室、クロアギャラリーヘ進んだが、握り締めているチェックリストに載せている絵が現れてくれない。荒れ狂う波間にほんろうされる蒸気船のマストに自分の体を縛り付け、4時間もかけて波や風、船の様子を観察し、これをもとに描いた“吹雪”は展示されてなかった。この絵を見ないとターナーを見たことにならないのに。トホホである。部屋の半分を使って行われていた素描の企画展のため、通常よりは展示作品を減らす必要があったのだろう。

また、事前シミュレーションで目に焼き付けた“吹雪、アルプスを越えるハンニバルとその軍隊”もみあたらない。消化不良の感は否めないが、はじめてのクロアギャラリーで全部見てしまおうというのは虫がよすぎるかもしれない。大作“ヴァチカンからみたローマ”、“金枝”、風景画の傑作“イングランド摂政皇太子の誕生日 リッチモンドヒル”と対面したのだから良しとした。

リストにある他の画家の絵はコンスタブルをはじめ凡そ見れた。その中にとても惹きつけられる大作が2点あった。“ノアの箱舟”のイメージが膨らむダンビーの“大洪水”とめまいがするような壮大な空間に黙示録の世界を描いたマーティンの“神の怒りの日”。こういう崇高な美が感じられる絵との遭遇も刺激があっていい。

この大作よりもっと心を揺すぶられたのがサージェントの“カーネーション、ユリ、ユリ、バラ”(上の画像)、ワッツの“希望”(真ん中)、ダッドの“妖精の樵の見事な一撃”(下)。サージェント(1856~1925)のこの絵には参った。芝の明るい緑の色に女の子が着ている白い服とユリの白が見事に映え、子供が手にしている提灯の光が夕闇に輝いている。昔、ボストン美術館でみた“エドワード・D・ボイトの娘たち”にヘナヘナになったが、これもすばらしい絵。

そして、もう一点、肖像画“マクベス夫人に扮するエレン・テリー”の前でも立ち尽くした。これはほぼ実物大の絵だから、目の前にマクベス夫人がいるような感じがする。即My好きな女性画にインプットした。この2点でサージェントは一気に好きな画家ワールドの一角を占めるようになった。次の狙いはメトロポリタンにある“マダムX”。

ラファエロ前派と同時代の画家、ワッツ(1817~1904)の作品に特別魅せられているということではないが、この“希望”は画集で知って以来、いつかこの目で見たいと思っていた。それがようやく実現した。絵の雰囲気は象徴派のデルヴィル(拙ブログ05/4/24)と似ており、球の上に乗った女は目隠しをし、弦が一本しか残ってない竪琴の音に耳を傾けている。“希望”をこういうイメージで表現することには戸惑いを覚えるが、絵に力があることは間違いない。

下のダッド(1817~1886)の絵(部分)には200%驚いた。図録でながめていたときは“なんだかおもしろそうな絵だな”くらいの軽い気持ちだったが、その細密な描写に目が点になった!縦長の大きな画面に妖精やら白い花やらナッツやらがビッチリ丁寧に描かれている。色調はすこし暗めだが、ここは不思議な妖精の世界。中央でこちらに背をむけナッツを割ろうとしているのが題名の樵。その前にいる白髭の老人は魔法使いの王。上のほうには妖精の王オベロンと女王タイタニアがみえる。

ダッドは異色の画家。26歳のとき精神を病んで発作的に父親を刺殺したため、以後の40年間を精神病院で暮らした。ここで9年かけて描いたこの絵は伝説や文学作品を絵画化したのではなく、ダッドの想像力によるものである。

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コメント

いやぁ、この提灯には私も参りました。
こんな面白い作品を今まで知りませんでした、勉強不足です。
~ENOKI~

投稿: eno | 2008.02.11 16:17

to enoさん
サージャントのこの絵を見れたのは大きな喜び
です。リストに図版を載せていたのですが、これ
ほどすばらしい絵だったとは!提灯の光に釘付
けになりました。サージャントの技量はすごい
ですね。完全に嵌りました。

投稿: いづつや | 2008.02.11 22:23

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