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2008.02.06

その五 カラヴァッジョ  レンブラント  ホントホルスト

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事前準備として作った“名画必見リスト!”のなかでもとくに目に力を入れてみる画家を美術館ごとに決めていた。ナショナル・ギャラリーはティツィアーノとカラヴァッジョとレンブラント。で、今日はそのカラヴァッジョとレンブラント、そしてオランダのカラヴァッジェスキのひとり、ホントホルスト。

今、西洋絵画でその作品を全部見たいと強く願っているのはカラヴァッジョとラ・トゥール。フェルメールについてもその思いはあるのだが、こちらは人気の作品はかなり目の中に入れたので、前の二人ほど追っかけモードではない。今回の旅行でカラヴァッジョ6点(ナショナル・ギャラリー3点、ルーヴル3点)、ラ・トゥール7点(全部ルーヴル)と対面した。もう浮き浮き気分。

ここにあるカラヴァッジョ(1571~1610)の絵は上の“エマオの晩餐”、“トカゲに噛まれた少年”、“サロメ”。この美術館を過去2回訪れたが、カラヴァッジョというとウィーン美術史美にあるあの強烈な“ゴリアテの首を手にするダヴィデ”を描いた画家のイメージが強く、この3点のことはまったく知らなかった。だから、一気にリカバリーしようと夢中になってみた。

まず釘付けになるのが短縮法で描かれた右の男の大きく広げた両腕。左腕がこちらに突き出してくるようである。この男と左端の男はキリストの弟子で、真ん中のまるぽちゃ顔がキリスト。二人ははじめ一緒にいた男が復活したキリストだと気づかなかったが、エルサレム近郊のエマオ村での食卓で、男がパンに祝福を与えて裂いた瞬間、キリストであることを知る。右の男の迫真の身振りと椅子を後ろに押しやりじっとキリストを見る左の男の姿はダヴィンチの“最後の晩餐”で使徒たちが見せる驚きにも匹敵するほどの緊迫度をもっている。

テーブルやそのまわりの立体感のつくり方が実に巧み。弟子たちの身振りだけでなく、顔に光が当たるキリストは手を前に出すポーズをとっており、さらに“果物籠”(拙ブログ06/5/3)と似た質感の葡萄やイチジクが入った籠はテーブルから落ちそうに描かれている。この絵の構成は一生忘れることはないであろう。“トカゲに噛まれた少年”で驚いたのはうす青いガラスの瓶の表面にうつる窓がヤン・ファン・エイク流に細密に描かれていたこと。色々な伝統の技を使いながら、独自の表現をうみだすカラヴァッジョの才能はやはり規格外。

レンブラント(1606~1669)のいい絵をこれまで数多く鑑賞してきたが、ここは画集に載っている有名な絵がぞくぞくと目の前に現れる。“自画像”(一番壮麗だといわれるものや最晩年)、真ん中の“ベルシャザルの饗宴”、“フローラに扮したサスキア”、“水浴の女”、“ヘンドリッキュ・ストッフェルス”、“マルガレータ・デ・ヘール”など全部で13点あった。流石、質の高いコレクションである。

“ベルシャザルの饗宴”は図版ではバビロニアの王、ベルシャザルが着ている金襴のマントの装飾模様が精緻に描かれているのをイメージしていたが、実際の質感は想定の半分だった。この絵で見入ってしまうのが人の手が書く王の不幸を暗示する文字をみつめるベルシャザルの動揺した様子と隣のびっくり眼で顔が引きつっている女の表情。レンブラントは人間の揺れ動く感情表現が本当に上手い。

下はラ・トゥールの“夜の情景”に影響をあたえたといわれるホントホルスト(1592~
1656)の“大司祭の前のキリスト”。待望の絵は予想をはるかに上回る大きな絵だった。1本の蝋燭の光があたった大司祭とキリストのどちらに目がいくかというと、どうしても顔にもひじをついた左腕にも光があたる大司祭のほう。ルーヴルにあるラ・トゥールの傑作を見る前にこの絵で目慣らしをしたのは絵を見る順番としては理想的。蝋燭の光をしっかり見た。

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コメント

3枚目に挙げていらっしゃる絵の日本語の題名を教えてくださいo(_ _)oこの絵、昔、画集で一度見たときからいいな~と思っておりましたが画家名も題名も忘れてしまい、いままでずっと探していたんです!ここで再会できて嬉しいです

投稿: cocco* | 2009.01.30 23:45

すみません,ホントホルストの『大司祭の前のキリスト』としっかり明記されていたのに、見落としてました。はずかしい…

解ってとってもよかったです。本当に取り上げてくださったことに感謝しています!!

投稿: cocco* | 2009.01.30 23:54

to cocco*さん
はじめまして。書き込み有難うございます。
名前を確認されてほっとしてます。ホントホル
ストの絵はいいですね。いつか、エルミター
ジュ美術館でみた絵も紹介しようと思います。
これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2009.01.31 00:01

時々お世話になってます。先日は英国のウオター・ハウスの作品を拝見しました。テニスンの文学からあのシャロットの船での死出への旅路は、他にギリシャ神話のサイレーンのシーンがオペラの一場面のように描かれてるのは驚きでした。絵画を劇画のように描く事は文学や歴史への造詣に深いモノがかんじられます。
有り難うございました。

投稿: カニーノ | 2010.09.10 18:39

to カニーノさん
はじめまして。書き込みありがとうございます。
ウオター・ハウスの絵はとても魅力的ですね。

西洋絵画にはギリシア神話や歴史上の出来事
を題材にした傑作が数限りなくありますから、
神話や文学に関する知識もすこしずつ増えてい
きます。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2010.09.10 23:55

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