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2008.02.03

その二 ティツィアーノ  ティントレット  クリヴェリ

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ナショナル・ギャラリーの2回目はヴェネツィア派。ここの自慢のひとつが色彩の魔術師、ティツィアーノ(1485~1576)のコレクション。質の高い名画が二つの部屋に8点展示してある。ここ3年くらい海外の美術館でティツィアーノのいい絵を見る機会に恵まれているが、昨年のプラド美術館(拙ブログ07/3/23)同様、ここの作品にも大いに魅了された。

上は代表作として画集に必ず載っている“バッカスとアリアドネ”。ティツィアーノとティントレットの区別がはっきりできなかった前回でもこの絵だけは目に焼きついている。強いインパクトをもって目にとびこんでくるのが赤いマントを風になびかせて動きのあるポーズをとっている若い男。酒神バッカスである。このバッカスと目を合わせているのが色鮮やかな青の衣装と赤い布のアリアドネ。こちらも右手を前につき出し、足を半歩前に出している。

これは“捨てる神あれば、拾う神あり”の場面。アリアドネを捨てたのが彼女の手助けで怪物ミノタウロスを退治した英雄テセウス。アリアドネの美貌がイマイチだったためか、テセウスは画面左に描かれた船に乗ってナクソス島を離れていく。でも、悲しむアリアドネの前に沢山のお供をつれたバッカスが現れ、すかさずプロポーズ。これって同情婚?

賑やかなお供たちはちょっとギョッとする。真ん中のサテュロスの子供は八つ裂きにした子牛の頭を引っ張っており、その隣のサテュロスは体に蛇を巻き付けている。もうひとつ気になるのがバッカスが乗る凱旋車を引く2頭のチータ。チータはこの絵を飾るフェラーラのアルフォンソの城にいたらしい。

動きのある人物表現といい、高価なウルトラマリンで描かれた目の醒めるような空の青といい、この絵は見る者の心を200%揺すぶる。再会できた幸せをかみしめている。前回記憶に薄かった作品で心を奪われたのがキルトの質感がよくでているすばらしい肖像画“青い袖の服を着た男”。これをみれたのも大収穫である。

真ん中はティントレット(1518~1596)の“天の川の起源”。この絵と“聖ゲオルギウスと竜”に対面するのを楽しみにしていた。前来たときはティントレットはティツィアーノ以上に知らなかったが、今ではこの画家の宇宙遊泳のような人物表現に非常に興味を覚えている。“天の川の起源”は画題と描き方がマッチしているなかなかおもしろい絵。天の川は英語で“ミルクの道”というが、この絵をみるとその意味がよくわかる。

裸婦はゼウスの妻ヘラで、乳を吸っているのは幼いヘラクレス。ヘラクレスがあまりに強く乳を吸うので乳があたりにとびちり、それが星になり天の川ができた。ヘラはヘラクレスがゼウスがよその女に産ませた子供とは知らずに乳をやっている。だから、嫉妬深いヘラが夫の浮気を承知していたら、天の川は生まれなかったかもしれない。

この絵はヘラとヘラクレスの二人を中心にして、放射上にゼウスや童子、鷹、孔雀、天の川の星が配されている。視線が集まるのがあの宇宙遊泳スタイルでヘラクレスを差し出しているゼウスと神々の伝令役のヘルメス。ヘルメスと左の童子は宙返り状態で、じっとみていると目が回りそうになる。

下はヴェネツィア出身の画家、クリヴェリ(1430~1494)が描いた“ツバメの聖母”。2年前訪問したミラノのブレラ美術館で、テンペラによる緻密な細部表現と金箔ずくめの額縁装飾が特徴のクリヴェリの祭壇画に開眼したが、ここでも同じような絵に目を見張らされた。この絵のほかにも“聖エミディウスを伴う受胎告知”や“大天使ミカエル”に足が止まった。これほど多くのクリヴェリの絵と遭遇するとは思ってもみなかった。

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コメント

カルロ・クリヴエリの傑作が、たしか20年位前に新宿伊勢丹にきましたね。小さい作品でしたが、あれは衝撃でした。どこの美術館からのお出ましだったのでしょうか?覚えてません。アムステルダムには大きいのがありました。クリヴエリを沢山観られたようでうらやましいです。イギリス人はヴエネチアが好きなんでしょうか?グランドツアーと云ってカナレット等の作品が沢山求められたそうですね。

投稿: 花 | 2008.02.04 18:26

to 花さん
ブレラ美術館でみたクリヴェリの細密描写が
まだ目に焼きついているので、今回ここでも
同じ感動がえられたのはなによりでした。

クリヴェラの絵はあまり残ってないそうですが、
日本にも傑作のひとつがきたのですか?

イギリス人の好きなカナレット、グァルディの
海の絵が沢山ありました。いいですね。

投稿: いづつや | 2008.02.05 08:45

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