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2008.02.24

上野の森美術館の王子江展

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開幕を心待ちにしていた王子江(おうすこう)さんの回顧展(2/23~3/6)が昨日から上野の森美術館ではじまった。会期が2週間ちょっとと短いので、もし興味のある方はお見逃しなく。中国人画家、王子江さんのことはこれまで5回書いた(拙ブログ05/1/1005/11/2705/12/706/10/1407/10/12)ので、詳しい経歴などを知りたい方はこちらをお読みになっていただきたい。

今年は王さんが日本にやってきて20年の節目の年。で、はじめての回顧展が企画された。作品は全部で28点。会場1階に水墨画の大作9点、2階に墨彩画19点が展示してある。その大半は昨年制作された。

王さんが得意とするのは水墨画の大作。これまで茂原市美術館にある“雄原大地”のほか、国内では奈良の薬師寺にある“聖煌”(2×100m)などを描いている。これらは会場に飾ることが出来ないので、今後制作する大作についてはこれを常設する美術館の建設を今いろいろ検討されているようだ。今回の作品のなかで、茂原でみた“雄原大地”と同じように立ち尽くしてみたのが上の“黄山雄姿図”(2×20mの右半分)。

先の尖った奇岩群のなかを白い雲が天空を疾走する龍のように流れていき、山上は雲海の大パノラマ。岩からでる松の葉をみると、しっかりした筆使いで細かいところまで整然と描かれており、松の力強い生命力が伝わってくるようだ。毎年秋に行われる個展では江南の風景を描いた作品にいつも足がとまるが、目の前にある大作“江南清風図”をいい気持ちで眺めていた。

水面に帆舟の影が映る様子がえもいわれず美しく、静謐で詩情あふれる江南の水郷風景に酔いしれた。隣にある“南国清韻図”もいますぐにでもここへ飛んでいくたくなるような絵。ぐっとくるのは中国の風景だけではない。2階にある“初雪の木曾福島”がすばらしい。冬の景色を描いた風景画でこんなに感動したのは東山魁夷の“年暮る”以来。これは見てのお楽しみ!

王さんは学生の頃、市井の人たちをものすごく沢山描いたという。だから、人物画がもう上手すぎるくらい上手い。笑ったときの豊かな顔の表情、苦悩しもがく男の顔、長い人生を生きてきた老人の顔のしわや皮膚のたるみ、いずれも王さんが描く人物像は生き生きとし、心の動きや精神性が表情によく現れている。なかでも印象深いのが赤の地に上半身の老人を描いた“イスタンブールの肖像”と下の“天地萬物逆旅、光陰百代過客”。

“光陰百代過客”は縦2.4m、横20mの横長の大きな作品で、下は真ん中の部分。左半分にいる人たちは右のほうへ進み、右の人は左へ歩いている。中央部分は二人の男女はうしろ向きになり、ほかはファッションショーのモデルのような歩き方でこちらにやってくる。何人いるの数えていないが、日本人、東洋人、西洋人など色々な人種が入り混じり、若者、老人、おっさん風の人、着物の姿の女性、子供らが自分のペースで歩く様子が隙間なくびっちり描き込まれている。

人々が歩いている地面に目をやると、黒地に白で日の丸や渦巻き模様などが描かれた幅広の帯のようなものが尾形光琳の“紅白梅図”の真ん中にある水流みたいに横に流れている。これは“今”を生きる人々を生の感覚でとらえた現代アート的な香りのする作品。王さんはクリムトのような絵も描いたりするから、そのセンスがこの作品に表れているのかもしれない。満足度200%の展覧会だった。王さんの絵をこれからも追っかけていきたい。

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コメント

王子江展を3月4日に行きたいのですが休館日でないでしょね?

投稿: 関口 秀國 | 2008.02.26 19:33

to 関口さん
はじめまして。3/4は開館してます。会期が
短いので休館日はありません。どうぞお楽しみ
ください。

投稿: いづつや | 2008.02.26 23:06

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