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2008.02.09

テート・ブリテン その一 ブレイク  ロセッティ  バーン=ジョーンズ

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2度目の訪問となるテート・ブリテンは当時はテート・ギャラリーと呼ばれ、イギリス絵画と近代絵画が展示してあったのだが、そのなかの外国の近代絵画や現代アートは
2000年に開館したテート・モダンに移管されたため、現在はイギリス美術一色の美術館になった。館の前に立つと17年前の記憶がかすかに戻ってきたが、中の展示室がどうなっていたかはまったく覚えてない。

前回見たなかでは、ダリの代表作の一つ“ナルシスの変貌”やエルンストの“セレベスの象”などシュルレアリストの傑作は目に焼きついているのに、ブレイクやロセッティ、ミレイ、バーン=ジョーンズらラファエロ前派の作品を鑑賞したという自覚がまったくない。これらの画家に目覚めたのはこれ以降のことなのである。だから、ここの必見名画リストはこの4人とターナーの絵で埋め尽くされている。でも、はじめての対面となる作品ばかりというわけではない。

というのも、ちょうど10年前、東京都美で開催された“テート・ギャラリー展”に、上のブレイクの“ダンテ「神曲」・戦車の上からダンテに語りかけるベアトリーチェ”、真ん中のロセッティ作、“プロセルピナ”、ミレイの代表作“オフェーリア”、ターナーの“ノラム城、日の出”など館自慢の名画がごそっとやってきたからである。だから、画集に載っているほかの作品に注目してみて回った。

ブレイク(1757~1827)の部屋は入って左側の真ん中あたりにある。リストに載っている“アダムを裁く神”、“ニュートン”、“ネブカドネザル”、“善の天使と悪の天使”、上の“ダンテの神曲”などが次々と現れる。だが、残念なことにアベルを殺したカインの絶望的な顔が胸を突き刺す“アベルの死体を見つけたアダムとエヴァ”と“ヨブに煮え湯を注いで苦しめるサタン”がなかった。二重丸をつけていた絵だが、そう理想どおりにはいかない。8割のヒット率なら御の字である。

“ダンテに語りかけるベアトリーチェ”はブレイクが体験した幻視的な霊感を表現した神秘的な世界。右端の赤い服を着ているのがダンテで、永遠の恋人、ベアトリーチェは視線を集める横向きのグリフィンが牽く戦車に乗かっている。ブレイクにとって霊や天使、妖精などがとびまわる神秘的な世界は反合理主義の精神、つまり現実に対する幻滅の裏返しでもある。“ニュートン”ではコンパスをもち図形に夢中になっているニュートンは合理主義の危険を象徴する人間として批判的に描かれている。ブレイクは合理主義さえ人間の堕落と考えた。これからもブレイクを追っかけたいので、図録とともにここが発行している“ブレイクブック”を購入した。

ロセッティ(1828~1882)の作品は初見の“聖母マリアの少女時代”、“受胎告知”、“プロセルピナ”など6点あった。“プロセルピナ”は日頃の日常生活のなかでみかける女性とちがい、質量が多くのしかかってくるような女性画だから緊張する。インパクトがあるのが欲望をそそるような真っ赤な唇と吸い込まれそうな瞳。そして、波打つ巻き毛や緑の衣装のひだにも官能的な香りがする。美しくて官能的な女性を描く名手はクリムト(拙ブログ06/11/5)、ロセッティ、クノップフ(05/4/23)。3人の絵はもちろんMy女性画の上位に登録している。

ボッティチェリのあの優雅な線を彷彿とさせるのがバーン=ジョーンズ(1833~
1898)が描いた下の“黄金の階段”。美しく青白い女性たちが左にカーブした階段を降りてくる。ボッティチェリ好きだから自ずとバーン=ジョーンズにも高い関心がある。で、はじめてみるこの絵と“コーフェチュア王と乞食娘”を夢中になってみた。これからきれいな線と克明な細部描写が魅力のバーン=ジョーンズに嵌るかもしれない。

今回再会を楽しみにしていたミレイの“オフェーリア”はどこかへ貸し出し中で見れなかった。この絵だけでなく目の中に入れるはずだった“両親の家のキリスト”と“ローリーの少年時代”もなかった。今秋、Bunkamuraで開催される回顧展がすでにはじまっているのだろうか?

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コメント

更新楽しみに拝見させて頂いております。

バーン=ジョーンズの「黄金の階段」を
森村さんが例によって自分自身で扮している
作品が現在森美術館で展示されています。

投稿: Tak | 2008.02.10 17:00

to Takさん
今回ラファエロ前派はバーン=ジョーンズ
が○印でした。オルセーでも一点みました
からご機嫌です。

先週出動した森美のUSBコレクション
に森村さんの作品がありましたね。この
アーティストが入り込む作品は多岐にわ
たってますね。感心します。

投稿: いづつや | 2008.02.10 23:50

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